今回の指針では、構造物の受ける外力の状態によって必要な設計状態を設定しています。それらをまとめると下表となります。グラウンドアンカー併用の場合ののり枠工のみが終局及び使用限界状態の照査を必要とし、他のケースは終局限界状態のみの照査でよいとされています。
これまでほぼ同様と考えられてきた鉄筋挿入工とアンカー工に対して明確な違いが示されています。何故?というところまで理解して覚えておくことが必要です。
工種 |
作用荷重の種類 |
限界状態設計 |
耐震性能設計 |
終局限界状態 |
使用限界状態 |
疲労限界状態 |
緑化棚 |
緑化基礎工 |
・のり枠と中詰材の自重 (植生基材吹付工は、中詰材を省略してよい) ・枠断面150×150でスパン1200以下は、計算を省くことができる (植生基材吹付工は、スパン1500以下) |
(一般に照査を省略してよい) |
(繰返し荷重や変動荷重の影響がほとんどないので、省略してもよい) |
(これまでの震災被害の経験から行っていない) |
抑制工 |
のり肩からの崩壊 |
・縦枠と横枠の自重、中詰材の自重、土塊の荷重 |
のり中間からの崩壊 |
・中詰材の自重、土塊の荷重 |
抑止工 |
鉄筋挿入工併用 |
・抑止工により生ずる地盤反力 (特に張り出し部を考慮した設計としなくてよい) |
グラウンドアンカー併用 |
・抑止工により生ずる地盤反力 (端部に設置する場合には、張り出し部を設けることが望ましい) ・スターラップ配置を原則とする |
※ 所定の要求性能を満足していることが、予め確かめられている場合はその照査を省略してもよい |
では次に終局限界状態では何を照査するかということですが、のり枠工にかかる外力を求め、曲げモーメントとせん断に対しての照査を行います。その意味では従来の設計と変わっていません。照査の式が異なるだけです。
ただのり枠工の特性を考慮し、土木学会などで制定されている一般のコンクリート構造物の終局限界状態照査(コンクリート標準示方書 構造性能照査編)に対しては以下の点が省略できるとしています。
一方「ねじりに対する安全性の検討」と「剛体安定に対する安全性の検討」については記載されていません。
設計項目 |
照査項目 |
省略事項 |
終局限界状態の設計
(すべての工種) |
曲げモーメントに対する照査 |
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せん断力に対する照査 |
・抑制工として用いる小断面ののり枠工、また、曲げ破壊が先行することが実験等で確認されたのり枠は、省略してよい ・軸方向力に関わる項は省略した ・腹部コンクリートのせん断に対する設計斜め圧縮破壊耐力は、省略してもよい |