(社)全国特定法面保護協会「のり枠工の設計 ・施工指針(改訂版) 」平成18年11月 が発行されています。
この本はのり枠工、特に吹付枠工を設計・施工する際の最も基本となる指針であり、斜面の技術者にとっては必需の本です。この本が今回大改訂されました。
最も大きな改訂内容は以下の2つです。
◆のり枠工の設計照査に「限界状態設計法」を採用している。 (過渡期であることを考慮し従来の許容応力度法も使用して良いとしている)
◆吹付モルタルの設計基準強度を15N/mm2から18N/mm2に引き上げた。 |
この2つの詳細については、全国特定法面保護協会のホームページで公開されており、『協会としては、18N/mm2へは速やかに、設計法は
2〜3年程度での移行を期待しています。ただし、改訂指針の適用は発注機関の決定事項ですので、設計・施工時には発注機関へ必ず確認をしてください。』となっております。
▽ 詳しくはこちら 「全国特定法面保護協会ホームページ(質問回答、訂正補足)」
http://www.norimen.or.jp/index_teisei_q-a.htm
なお、「許容応力度法」と「限界状態設計法」とでは、その計算手法は大きく異なります。こちらについても協会ホームページで公開されていますので、一度、確認してみてください。
▽ 詳しくはこちら 「全国特定法面保護協会ホームページ(吹付枠工の設計例)」
http://www.norimen.or.jp/teisei_q-a/2qa-2_0709.pdf
ところで、今回の改訂ではこの2つ以外でも多くの注意すべき点が書かれています。これまでに設計施工や会計検査などで問題となった点などが細かく配慮された改訂といえます。
【4.2 のり枠工の適用範囲】 |
のり枠工は、のり面の侵食や表層すべりの抑制が主目的であって、原則としてそれ自体では土圧に抵抗しない構造として取り扱う。(P.14)
吹付枠工や現場打ちコンクリート枠工のように、枠が連続的で曲げ剛性が期待できるものについては、のり面の表層すべりに対し、ある程度の抑制機能を有すると考えて良い。ただしこのような表層すべりに対してのり枠工を適用する場合には、のり枠工による安全性の照査を行うことが必要である。(P.15) |
【4.5 中詰工の種類】 |
透水性コンクリート工 が付加(P.19) |
【5.4 骨材】 |
吹付枠工には、一般には吹付モルタルが使用される。(P.25) |
【5.4.2.5 海砂】 |
海砂に含まれる含有塩化物の量は、モルタル中の塩化含有物の量が鋼材保護のための許容限度0.30kg/m3を超えないよう、水洗いその他により、含有塩化物の量を許容限度以下にして用いる。(P.27) |
【5.8 鉄筋】 |
吹付枠工に使用される鉄筋は、SD295A、SD295B、およびSD345が多く用いられている。(P.30) |
【5.10 金網および吹付枠用型枠】 |
鋼板、耐水性段ボール、発泡プラスチック等も用いられているが、埋め殺し型枠として用いてはならない。(P.32) |
【6.2.2 抑制工として用いる場合の荷重】 |
下記の場合は、抑制工として用いることは出来ない。
・のり肩からのり尻に及ぶような崩壊
・のり肩の崩壊に対して深さが1.5mを超えるような崩壊
・のり中間からの崩壊に対して深さが1.0mを超えるような崩壊(P.37) |
【6.2.3 抑止工として用いる場合の荷重】 |
縦横のスパンが大きく異なる場合や地山の凹凸が大きい場合は、のり枠工に作用する荷重を1方向のはりとして取り扱うのがよい。(P.40)
端部にグラウンドアンカー工を設置する場合は張り出し部を設けて設計することが望ましい。
鉄筋挿入工は、・・・使用限界状態の荷重は考慮しなくてよい。・・・引張力は比較的小さいのでのり枠工は特に張り出し部を考慮した設計としなくてよい。(P.41) |
【6.4 使用状態の照査】 |
のり枠工にグラウンドアンカー工を併用する場合は、使用状態の照査を行うことを原則とする。(P.46) |
【6.5.5 抑止工を併用した場合ののり枠工の端部構造】 |
グラウンドアンカー工を併用する場合は、端部に張り出し部を設けることを原則とする。
鉄筋挿入工を併用する場合は、原則として張り出し部を省略することができる。(P.52) |
【7.1.8 構造細目】 |
吹付枠工にグラウンドアンカー工を併用する場合は、スターラップを配置することを原則とする。(P.58) |