一般に地下水の多少は、地表の含水状況にも影響することから、地表含水状況を示す指標植物によって地下水の状況を推定することができます。
<地表含水状況の区分のための指標植物と適応生育範囲>
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樹種 |
地表の含水状況区分と適応生育範囲 |
空中写真による
判読の難易性 |
T |
U |
V |
W |
X |
湿−−−−−−中−−−−−−乾 |
アカマツ |
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○ |
スギ |
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○ |
ヤマハンノキ |
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× |
ドロノキ |
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× |
タケ |
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○ |
その他の広葉樹 |
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− |
今村遼平「静的地形・地質情報からの土木地質に必要な研究」より |
指標植物にはタケや、針葉樹ではアカマツ、ヒノキ、スギ、広葉樹ではヤマハソノキ、ドロノキなど土壌水分の微妙な変化に対して適応範囲の狭い植物が適しています。
俗に「尾マツ、谷スギ、中ヒノキ」の諺のように、普通谷部にはスギ、尾根部にはアカマツが生育し、中間はヒノキに適しています。これは地形的要因だけでなく、地形に伴う地表含水状況の違い(谷部は最も湿潤で、尾根部は最も乾いている)や表層の厚さが関係しているのです。
アカマツが生えていれば、地下水位は低い。タケは比較的知られていますが、広葉樹やドロノキでも意外に地下水位は浅所にあるのです。
<関東地方山岳部の土被りと林相の対応(尾原他1975)>
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区分 |
土被り厚さ |
代表的な樹種 |
林相 |
T |
薄い |
アカマツ、チョウセンブヨウ、灌木、シャクナゲ、ツツジ |
針葉樹自然林 |
U |
中間 |
クヌギ、ナラ、クリ |
落葉広葉自然林 |
V |
厚い |
スギ、ヒノキ |
針葉樹人工林 |
次によく地質屋さんは山を見ただけで「う〜ん。崩積土厚は5mくらいですね」とかいいます。いい加減に言っているのだろうと思ったら実は植生を見て感覚的に判断しているのです。上表のように一般的に根の深さは、地上からの木の高さの1/5〜1/7に達するといわれており、これを目安に表層(軟化層)を推定しているのです。
■丸スギと剣スギ
スギをよく見ると、全体の形状が丸っぽいスギ(丸スギ−枝が主に横に広がる)と剣スギ(全体の形状が細くとがっている−枝が縦にのびる)があります。この形状によって崩積土が厚いか薄いかの目安をつけることができます。スギの根は崩積土の中にしか入り込めず、原則的には縦(真下)にのびようとします。根が縦にのびれたばあい、スギの高さはどんどん高くなり、剣スギとなります。一方浅所に岩盤があり、根が縦にのびられない場合、根は岩盤上を水平に広がります。この場合のスギの高さはあまり高くならず、丸スギとなります。
■秋、冬でも草が緑
草は一般に冬になると緑色から茶色に変わります。この理由は、たとえ常緑の草でも冬の間は活力が低下し、半枯れ状態となるためです。しかし中には冬の間でも緑色を呈するところもあります。このような箇所は常に新鮮な地下水が供給されていることが多く、イコール地下水が豊富であると考えて良いでしょう。
■降雨時のみに湧水がある箇所
よく擁壁の水抜き孔などに地下水がわき出ていた痕が観察されることがあると思います。このような箇所では降雨時のみ湧水が観察されるます。このような箇所は危険なのでしょうか?答えは危険です。理由は、災害が発生しやすいのは降雨時であり、その時地下水が多いのは危険と考えることができます。また地下水があったり無かったりで、風化がより進行するようになります。つまりよく条件が変化する箇所は危険となり安いと考えて良いでしょう。
■湿地を好む動物にも注意
沢ガニ、カエル、ミミズ、ナメクジなどは水分が多い湿地に生息します。またヘビはカエルなどを好んでたべます。したがってこれらの動物が多い箇所は地下水が豊富であると考えても良いでしょう。
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