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『いさぼう技術ニュース』 平成24年6月21日号

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      ★ 落石設計が変わる? 地盤工学会 落石対策技術講習会 ★
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 平成24年6月19日、東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で、地盤工学会
主催の「落石対策技術講習会」が行われました。

 落石による事故やニュースが報道されるたびに、その斜面には何らかの落石
対策工が施工されているにも関わらず、被災したことに気づきます。

 既往の対策方針が誤っていたのか?という疑問。さらには対策の予算縮小が
進む中、より効果的な対策工が求められている等、今まさに落石対策の変換点
に来ているとの皆の認識の中、講習会が行われました。

 会場に入るとかなり広い!230人余の技術者が集まりました。聞くところによ
ると、当初は70人定員だったところを、応募者多数で会場の変更を余儀なくさ
れたようです。地盤工学会主催の講習会の中でも記録的な人数だったようです。

講習会の内容と講師は以下の通りです。
(1)落石対策の現状と課題:松尾修 講師【(財)先端建設技術センター】
(2)落石調査と危険度判定:浅井健一 講師【(独)土木研究所】
(3)落石の速度と運動エネルギー:右城猛 講師【(株)第一コンサルタンツ】
(4)落石防護ネットの設計と施工:加賀山肇 講師【日本プロテクト(株)】
(5)落石防護柵工の設計と施工:吉田博 講師【金沢大学名誉教授】
(6)落石防護擁壁の設計と施工:今野久志 講師【(独)土木研究所寒地土木研究所】

 先ずは先端建設技術センターの松尾講師が「落石対策の現状と課題」につい
て講習されました。「私の話は前段ですから・・・」と前置きしながら、現在
の落石の考え方の課題点を提示され、合わせて改善の方向性を示されました。

 次に土木研究所の浅井講師が「落石調査と危険度判定」について講習されま
した。過去の災害と防災点検などの結果との関係を説明されたのち、調査精度
を上げる手段として、LPデータ(レーザプロファイラデータ)の有効利用し、
災害履歴の管理が極めて重要だとのお話でした。

 昼休憩を挟み、午後からは第一コンサルタンツの右城講師が「落石の速度と
運動エネルギー」についての講習をされました。実際に発生した落石事故など
の現場検証結果や現場実験結果から、実際の落石現象は、現状の落石対策便覧
内で全て規定されているとは言えない、というお話は衝撃的でした。それを解
決するためにはシミュレーションをうまく使えばよい。
その際、これまで課題であったシミュレーションの諸定数は現地にある既存の
落石(転石)を逆シミュレートし、現場に最も合った解析をするというお話は、
まさに合理的であり、これからの方向性であると受講者は皆、確信したと思い
ます。

 次は日本プロテクトの加賀山講師が、「落石防護ネットの設計と施工」に
ついて講義されました。特にポケット式防護ネットの可能吸収エネルギーでは、
EL値を過大評価している可能性があり、現場実験での検証を含め、落石エネル
ギーを含めた上で再評価した方がよいのでは、というお話は印象的でした。

 加賀山講師の講習の後、「落石対策便覧」と「土工指針」が、特にEL値の
取り扱いにおいて整合していないという話題で質問が多く出ました。

 次は金沢大学名誉教授の吉田講師が「落石防護柵工の設計と施工」について
講習されました。落石対策便覧の中で防護柵に関する記述は、昭和58年の発刊
以来改訂されていないことから、特に高エネルギー吸収柵については、多様な
製品がばらばらの設計思想で導入されているというお話でした。また、便覧の
防護柵の設計法を当てはめた場合に、多くの問題点があることをお話しされま
した。落石の衝突位置によって支柱、ロープなどの変形がそれぞれ違うことや、
網の設計と柵の設計で、ロープ張力の安全率などの考え方がばらばらである
お話もされました。

 最後は、土木研究所の今野講師が、「落石防護擁壁の設計と施工」について
講習されました。落石防護柵工の基礎工の倒壊事例がないことや、実験でも
ほとんど押し抜きせん断破壊されること、また新工法である杭付落石防護擁壁
の紹介もありました。また落石覆工についてもお話がありました。実際の被災
時の落石エネルギーは、設計時の25倍以上あったというお話は衝撃的なお話し
でした。

 今回の講習会を受講した技術者の多くは、「落石対策便覧」と「土工指針」
が、特にEL値の取り扱いが整合していないということに対する答えを得ようと
していたように見えます。
 その答えとしては、講師の方々は明言こそ避けたものの、今回の講習を聞く
限り、以下の答えがあると感じました。

 落石対策便覧の改訂は、まだ時間がかかるようです。したがって、
「落石対策便覧」と「土工指針」の不整合はすぐには改善されません。
 そのような中で、発注者や会計監査などに合理的な説明をするには、単に
この2つの基準の不整合というよりも、より大きな視点での解析や説明が必要
です。それはこうです。

 落石対策便覧が改訂されて以来、多くの研究や実験が行われ、その成果を
生かせるようになってきた。網の落石吸収エネルギーは、基本的に実験で可能
吸収エネルギーを確認することが望ましい。多くの研究や実験結果から、
現便覧式であるEL値は根拠に乏しく、見込まない方が安全であり、結果として
可能吸収エネルギーが低下することも考えられる。その場合、落石エネルギー
が便覧式そのままとすれば、対策工規模は一方的に大きくなる。
 しかし、多くの現場で、従来よりも対策工の規格を大きくする必然性はなく、
結果、過大設計となりやすい。
 しかしこれまでの研究で、落石エネルギーは等価摩擦係数が便覧値よりも
大きいケースも多々見られることもわかってきている。
 結果、シミュレーションを使った妥当な落石エネルギーを、可能吸収エネル
ギーを実験で確認した工法で対策するのが合理的と考えられる。

 今回の講習を聞いて、技術者の多くが、「落石対策便覧」と「土工指針」の
不整合、そしてその運用に対して、説明に困っている現状があることを認識
しました。
 また経年の研究成果で、便覧では説明できない現場も多くあることもわかっ
てきました。
 その一方で、落石対策便覧の改訂はまだ時間がかかるようで、技術者毎の
説明責任の負荷はどんどん大きくなると思われます。

 このような状況を踏まえ、いさぼうネットではこのテーマに対して、情報
収集を進め、技術者側からできる解析や説明技術を紹介していきたいと思い
ます。

▽いさぼう便利ツール
「落石設計が変わる? 地盤工学会 落石対策技術講習会」
http://isabou.net/Convenience/tool/index.asp


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■【講習会情報】

『補強土植生のり枠工「GTフレーム」技術講習会(東北地区)』のご案内
 [開催日]:平成24年7月18日(水)
 [開催地]:宮城
 [参加費]:無料
 [主 催]:補強土植生のり枠工協会
 ※本講習は、(一社)全国土木施工管理技士連合会CPDSの
  学習プログラムとして認定されています。

▽詳細・お申し込みはこちら「講習会情報」
http://isabou.net/event/index.asp

■【知取気亭主人の四方山話】−第467話「時を経て…」
http://isabou.net/refresh/yomoyama.asp
 6月の第三日曜日、17日は父の日だ。手紙を貰ったり、声の便りが届いたり、
プレゼントを貰ったりと、色々な形で心地良い時間を過ごしたお父さん達が多
かったのではないだろうか。幾つになっても、感謝されるという事は嬉しいも
のである...
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