三者会議をしていれば・・・会計検査で問題となることもなかったのではないかという現場話を紹介します。
その問題となった現場は、ある県が行った通常砂防事業で、洪水時に発生する土砂の下流域への流出防止を目的として2年にまたがり、床固工、護岸工等を工事費約100,000千円で実施したものでした。
このうち、護岸工は、割栗石(粒径が15cm〜20cm)を中に詰めて製作した鉄線籠(縦0.5m、横1.0m、長さ15m〜39m)を多段に積み重ねて、連結した一体構造とし、高さ3m〜5mの鉄線籠型多段積護岸工を延長計84mにわたり築造したものです。
そして、多段積護岸については、基礎部の前面河床が洗掘されると、護岸全体の安定が損なわれるおそれがあるので、「鉄線籠型多段積護岸工法設計・施工技術基準(試行案)」(社団法人全国防災協会編。建設省河川局防災・海岸課編集)に基づき、基礎部の保護工法については、鉄線籠を多段積護岸本体の前面に並べて接するように設置する並列式として、設計・施工していました。
そして技術基準によれば基礎部の保護工法を並列式とする場合は、多段積構造本体に影響を与えないために、前面の鉄線籠は護岸本体との連結を避け、分離して設けるものとされていました。
検査の結果、多段積護岸の基礎部の保護工の設計及び施工の不備が指摘されたのです。
上記のとおり、技術基準では、多段積護岸の基礎部の保護工法を並列式とする場合には、多段積護岸本体に影響を与えないために前面に並べて設置する鉄線籠と多段積護岸本体を分離して設けるものとするよう明記されているのに、これが設計図書には明確に記載されていなかったのです。
また、施工に当たって、請負業者が多段積護岸の基礎部の保護工についての理解が十分でなかったため、前面に設置された基礎部の保護工である鉄線籠と多段積護岸本体をコイル(らせん状に巻いた鉄線)で連結していたのです。
このため、鉄線籠と多段積護岸本体とが一体構造となっている状況であり、河床が洗掘を受け基礎部の保護工である鉄線籠に沈下等の変状が生ずると、多段積護岸本体に影響を及ぼし護岸全体の安定が損なわれるおそれがあるものとなっていました。
そして会計検査では、このような事態が生じていたのは、同県において、設計図書に多段積護岸の基礎部の保護工法を明確に記載していなかったこと、また、請負業者が多段積護岸の基礎部の保護工法についての理解が十分でないまま施工していたのに、これに対する同県の監督及び検査が十分でなかったことなどによると指摘されたのです。
このケースでは三者会議さえしていれば、その設計意図を事前に施工業者に伝えることも出来、またコンサルタントも施工者に意図を伝達する際には、設計図書への明確な記載を忘れるはずがないのです。さらには三者会議の管理体制があれば、施工途中でもコンサルタントがチェックできたのです。
ただ三者会議をするだけ・・・そんなちょっとした配慮からミスはなくせるものなのです。 |