SWOT分析とは、1960年代に考案された、組織のビジョンや戦略を企画立案する際に利用する現状を分析する手法の一つです。SWOTは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ったものです。
具体的にはどうするのか?先ずは自社の持つ内外のさまざまな環境要素をS(強み)・W(弱み)・O(機会)・T(脅威)の四つに分類し、マトリクス表にまとめることにより、問題点を整理します。
SWOT分析には、二つの段階があります。第一段階では、事業や組織におけるS・W・O・Tそれぞれの要素を抽出します。まずS(強み)とW(弱み)には、企業や組織の持つ人材、資金、技術、IT環境、情報、拠点などの内部要因を当てはめます。また、企業や組織を取り巻く経済状況、技術革新、規制、顧客や競合他社との関係、予測されるビジネスチャンスなどの外部環境は、O(機会)とT(脅威)に分類します。
厳密には仕分けが難しい場合もありますが、原則として内部要因は「その組織内で改善することができるもの」、外部要因は「その企業・組織だけで変えることが不可能なもの」、という目安を設けることが重要です。
その結果、解決策を見つけやすくなるという特徴があります。マトリクスに整理する過程で、関係者が意見を出し合いながら、問題意識を共有化できる点もメリットの一つです。ある建設会社を例にとって説明します。この建設会社は@公共土木事業部門、A民間建築事業部門、B建設資材部門 の3セクションを持っています。
内部要因 |
強み(strength) |
【公共土木】
・コンサルやメーカー出身の技術者がおり、高い土木技術力がある。
・コンサルやメーカーにチャネルがある。
【建設資材】
・高い土木技術力を利用して新資材を開発できる。 |
弱み(weakness) |
【公共土木】
・営業力が弱い。
【民間建築】
・施工は外注頼りで工程的、工費的な無理が利かない。
【建設資材】
・資材をストックしておく倉庫がない。
・開発資金が不足している。
・販売は本社のみで拠点がない。 |
外部要因 |
機会(opportunity) |
【公共土木】
・プロポーザル式の入札が増えている。
・入札制度が総合評価方式に移行する。
【民間建築】
・同業他社が倒産しライバルが減っている。
【建設資材】
・コスト縮減関連の資材のニーズが増えている。 |
驚異(threat) |
【公共土木】
・公共の建設予算が激減している。
【民間建築】
・建築申請が難しくなり、新規建築数が激減している。 |
この会社は典型的な技術主体の会社で、自社の土木技術力は高いと認識しているものの仕事がとれないで苦労しているようです。またそのとれない分を建設資材の開発でカバー使用としていますが、規模的には中途半端となっています。また別途建築にも携わっていますが、外注が主体のようです。
第二段階では、第一段階で抽出した要因を下のような表に当てはめます。例えば、外部要因の「機会」と内部要因の「強み」の二つの要因から"強みを活かす戦略"を導き出すというように、事業や組織の戦略策定や目標設定を行います。
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外部要因 |
内部要因 |
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機会(opportunity) |
驚異(threat) |
強み(strength) |
強みを生かす戦略
・高い土木技術力を利用できる強みとコスト縮減関連の資材のニーズの増加という機会があり、積極的強化が必要。倉庫、資金、営業が弱みである観点からそれらを持ち合わせたメーカーとのコラボレーションも考える。 |
縮小する戦略
・高い技術力という強みはあるが受注減という驚異もある(公共土木)は控えめにという考え方もある。 |
弱み(weakness) |
弱みを克服する戦略
・(公共土木)での入札制度の改革により、一気に弱みが強みに変わる可能性もある。 |
撤退する戦略
・弱みと驚異が重なる(民間建築)は撤退を視野に考える。 |
この図は建設系の民間企業の例を単純化したものですが、SWOT分析は自治体などでの活用も可能です。特に地方自治体は、財政悪化による予算の削減の一方で公共サービスを充実させなければならないなど、難しいかじ取りを迫られています。自治体でも事業に関して「選択と集中」が求められているのです。
このような場合にも、SWOT分析は有効な手段であります。地方自治体の場合、内部要因としては地域の地理的条件や自然条件、文化、風土、歴史など、一方外部環境としては国の政策動向や周辺地域の経済・産業・社会構造などが因子となります。
強みと弱みでは、他地域との関係において強みを発揮できる分野を「機会」、他地域が力を発揮し、自地域に対してマイナスの影響を与える分野を「脅威」ととらえます。また他地域にアピールできるものや、地域住民が自信を持てるものなど、他地域と比べて比較優位性のあるものを「強み」、逆に、比較劣位性のあるものを「弱み」としてとらえます。
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