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 FEMを用いたアンカー工施工時期の検討
 

 

極限平衡法解析の矛盾  

 


 

 現在主流の極限平衡法解析では、 独立した施工ステップの解析となります。例えばある斜面の上部に構造物などの上載荷重が作用し、斜面の不安定化防止を目的としてアンカー工で対策する現場を想定します。これまでの常識では荷重載荷前、荷重載荷後の安定解析を行い、必要抑止力に対してアンカー工を計画します。この際、荷重載荷後の安全率が1.05程度を上回るようであれば、アンカー工の施工は荷重載荷後でもかまわないという判断を下します。

 この際アンカーの定着荷重等は一切議論されません。経験的に引き止めアンカーなら30〜70%など・・・ということはいわれますが、安全率的には一緒なのです。

 また荷重載荷後の安全率が1.20(計画安全率)を上回るようであれば、当然対策は必要としないという判断になります。ただ斜面自体は破壊しないものの、上部は載荷重がかかれば多かれ少なかれ沈下します。載荷重が変位を許容できる盛土などの場合は問題ないですが、構造物の場合は問題となります。

 このような従来の解析方法での矛盾点は、極限平衡法が変位を取り扱えないことによっているのです。この点でFEM解析は有効な解析法であると思われます。

 ここではFEM解析を用いて、アンカー工の施工時期を載荷重の前と後ではどの程度異なるのかの比較を行ってみました。 

1.解析モデル
モデルとしては以下の地質と付加荷重を考えます。これをアンカー工で対策しようとする解析モデルです。
 

 許容応力度法設計では、最終的な切土面にアンカーが設置された際の安全率を求めます。切土後、アンカー打設前の安定度を求めることはあっても、荷重付加の前にアンカー工を設置した場合と荷重付加の後に設置した場合と安全率の差はでません。実現場で考えれば、両者の場合ののり面の変形程度に差がでるのは当然です。また切土後どの程度放置した後にアンカー工を設置したかについても本来であれば差がでるはずです。
しかしこれまでに行ってきた許容応力度法設計では上記の問題を検討できません。変位に対する議論ができないからです。

 一方FEM解析を行った場合、上記の問題が議論できます。ここでは上記モデルで荷重付加の前後にアンカー工を設置した場合の差をFEM解析を用いて検証してみます。
 

2.アンカーなしの場合の検討

 未対策で荷重を付加した場合の長期的な斜面の安定度は以下のように解析できます。1m近い変位が予想され、のり面は破壊されると解析されます。
 


これは局所安全率で破壊の直前状態を探ったFEM解析結果です。法尻がまず破壊し上部に向けてすべり面が形成されるであろうことが推定できます。
 


 

3.荷重付加の後にアンカー工を設置した場合の検討

  施工ステップの設定を以下のように考えます。解析に用いた「土留丸」では施工ステップと同時に時間スケールも考慮することができます。

この場合、最終的なのり面の変位は以下のように解析できます。
のり面の中央部で50cm以上の変位が予想され、破壊寸前の状態です。したがってアンカー工は有効な対策ではないと判定されます。


のり面の安定度も以下のようになります。

 

4.荷重付加の前にアンカー工を設置した場合の検討

 施工ステップの設定を以下のように考えます。
 


この場合、最終的なのり面の変位は以下のように解析できます。
変位はのり面の中央で約10cmとなり、アンカー工を後に施工した場合と比べ変位がかなり抑制されていることがわかります。したがってアンカー工は有効な対策と判定されます。

のり面の安定度も以下のようになります。


 

  斜面内部はむろん、アンカー工の地表面の設置面にかなりの負荷がかかっていることがわかり、反力体はできるだけ設置面の大きなタイプが有効と判断できます。

 このようにFEMを使うことによってこれまでと違った視点でのアンカー工の設計が可能となります。アンカー工の施工時期によって有効な対策と成り得るのです。

 またこの他アンカー工の初期荷重をいろいろトライアルしたりもできます。用心的なアンカー工はまだしも、多大な負荷がかかるとよそうされるアンカー工にはこのような解析をお勧めします。
 
 
 本ページを作成するにあたり五大開発(株) 製「土留丸」を使用しました 。
 
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