第1 目的
非破壊試験を用いた品質管理手法(以下、「本手法」という。)は、非破壊試験を用いてコンクリート構造物の鉄筋の配筋状態及びかぶりが適正に確保されていることを確認するために行うものであり、コンクリート構造物の適正な品質確保並びに施行管理や監督・検査の充実を目指すものである。
第2 試行における対象工事の範囲 新設のコンクリート構造物のうち、平成18
年度に施工(新規・継続)される橋梁上部工事及び下部工事の全工事を対象とする。
第3 発注者及び請負者が実施すべき事項
非破壊試験を用いたコンクリート構造物の品質管理は、別添「鉄筋測定要領(案)」に従い実施するものとする。その際、発注者(監督職員、検査職員)及び請負者が実施すべき事項を、下記1から3に記す。
1.請負者による施工管理 請負者は、「鉄筋測定要領(案)」に基づき、日常の施工管理を実施する。
また、測定方法や測定箇所等については、施工計画書に記載し提出するとともに、測定結果については、試験結果報告書(「鉄筋測定要領(案)8報告」参照)を作成し、測定後及び完成検査時等に提出・報告を行う。
2.監督職員による立会
設計図書の規定に従い、監督職員は、請負者が行う非破壊試験に対し、1工事につき1回以上立会するとともに、試験結果報告書を確認する。
3.検査職員による完成検査
検査職員は、完成検査時に全ての試験結果報告書を確認する。また、試験結果報告書の確認に加え、任意の箇所を選定(1箇所以上)し、「鉄筋測定要領(案)」に基づく非破壊試験により鉄筋の配筋状態及びかぶりの適否を判断する。足場等が必要となる箇所の測定を実施する場合は、あらかじめ、足場等の確保を指示しておくものとする。
なお、中間技術検査においても、出来るだけ試験結果報告書の活用による検査の実施を行うものとする。
第4 特記仕様書への記載 特記仕様書に、以下の文章を記載するものとする。
第5 試験に要する費用 試験に要する費用は、別途技術管理費に積み上げ計上すること。
第6 その他
1.本手法の円滑な実施
発注者及び請負者は、本手法の趣旨及び非破壊試験の実施手法を十分に理解しつつ、本手法の円滑な実施に努めるものとする。
2.効果等の把握
本手法の試行にあたっては、今後の本手法の効果的かつ効率的な実施方策の検討に資するよう、次の項目を基本に、効果及び課題の把握等を行うものとする。
1)実施により期待される効果
@コンクリート構造物の品質確保
本手法は、コンクリート打設後においても、任意の箇所で配筋状態や鉄筋かぶりを確認出来ることから、発注者の完成検査等において導入することにより、コンクリート構造物の品質確保の向上が期待されるため、その効果について把握する。
A監督・検査の充実
本手法は、これまでコンクリート打設後確認することが出来なかった鉄筋の配筋状態やかぶりが確認可能となることにより、監督・検査の充実に寄与することが期待できることから、その効果や実効性の検証について把握する。
2)実施に伴う課題
本方式の実施に伴う実務上及び制度上の課題等を把握する。
非破壊試験によるコンクリート構造物中の配筋状態及びかぶり測定要領(案)
平成17年5月
(平成18年3月一部改定)
国土交通省大臣官房技 術調査課
1. 適用範囲この要領は請負者の施工管理(出来形管理)において、コンクリート構造物内部の鉄筋の配筋状態及びかぶりを対象として探査装置を用いた非破壊試験にて測定を行う場合に適用する。なお、対象構造物としては、当面、橋梁上・下部工(工場製作のプレキャスト製品は対象外)とする。 請負者は、監督職員が立会を行う場合には、足場の存置に努めるものとする。 また、完成検査、中間技術検査等において、発注者から足場設置等の検査に必要な指示があった場合は検査できるように準備するものとする。 2. 測定の対象等(1) 測定断面数及び測定箇所対象構造物において、原則として表 1 に示す数の測定断面を設定し、各断面において、測定箇所を設定する。測定箇所は、1m 以上×1m 以上の範囲とし、図 2 を参考として、応力が大きく作用する箇所や隅角部等施工に際してかぶり不足が懸念される箇所、コンクリートの剥落の可能性がある箇所などから選定するものとする。ただし、測定断面数や測定範囲等について、対象構造物の構造や配筋状態等により上記により難い場合は、発注者と協議の上変更してもよい。 表 1 対象構造物と測定断面数等
対象構造物 | 測定断面数 | 測定箇所 | 試験方法 | 橋梁上部工 | 一径間あたり2断面 | 図 2 参照 | 電磁誘導法 | 橋梁下部工 | 柱部 3断面(注1)張り出し部 2箇所 | 図 2 参照 | 電磁波レーダ法 |
- ・構造物の条件、測定装置の性能等を考慮して試験方法を選定することとするが、試験方法の特性及び想定される設計かぶりより、上部工は電磁誘導法、下部工は電磁波レーダ法を使用することを原則とする。
・電磁波レーダ法については、現場の工程に支障の及ばない範囲においてコンクリートの乾燥期間を可能な限り確保した上で測定を行うこと。
注1)打継部においてコンクリート打設前と打設後に主筋のかぶりを段階確認時に目視により確認した場合には、下部工柱部の1断面(中間部分)の測定を省略することができる。図 2 参照) (2) 測定対象配筋状態の測定は、鉄筋間隔、測定長さあたりの本数(図 4 参照)を対象とする。かぶりの測定は、設計上最外縁の鉄筋(上部工のスターラップ、下部工の帯鉄筋等)を対象に行うこととする。なお、鉄筋の腐食によるコンクリート表面の剥離、崩落を防止する観点から帯鉄筋等がある場合は、同様にそれらのかぶりも測定する。
注2)「かぶり」は、各示方書等において以下の様に記述されている。
・共通仕様書:コンクリート表面から鉄筋までの最短距離
・道路橋示方書:鋼材の最外面からコンクリート表面までの距離、すなわちかぶりの最小値
・コンクリート標準示方書:鋼材あるいはシースの表面からコンクリート表面までの最短距離で計測したコンクリートの厚さ
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3. 使用機材(1) 校正探査装置は、メーカー等により校正された機材を用い、使用に際して校正記録を確認するものとする。 (2) 使用機材探査装置は、表 2 の性能を満たすものを使用すること。 なお、記録装置は、得られたデジタル又はアナログ出力を記録できるものとする。 表 2 探査装置の性能(電磁誘導、電磁波レーダ法共)
項 目 | 性能(電磁誘導、レーダ共) |
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探査対象の鉄筋の種類 | 呼び名D10~D51 (注3) | 距離の分解能(最小の読み) | 5mm 以下 | 鉄筋位置(間隔)の測定精度 | ±10mm 以下 | 判別可能な近接する鉄筋の | 設計かぶり75mm 未満の場合 | 75mm 未満 | 中心間距離 | 設計かぶり75mm | 電磁誘導: 設計かぶり(mm)×1.5 以下 | | 以上の場合 | レーダ:設計かぶり(mm)以下 | かぶりの分解能(最小の読み) | 2~3mm 以下 | かぶりの測定精度 | 適用範囲内において、±5mm以下 | データの記録 | 測定結果をデジタルで記録できること、記録容量(注4)は、1日の結果を記録できること。 |
注3)当該工事で使用する鉄筋径が探査可能であれば可注4)装置内の記録だけでなく、データをパソコンに転送、メモリーカードなどに記録できる機能でも良い。 4. 測定者本測定に従事する者は、非破壊検査技術に関する基礎的な知識を有するものとし、使用する探査器を熟知し、測定結果の判定を適正に行える知識と経験を有する者とする。 【参考】電磁誘導法及び電磁波レーダ法による測定方法の講習会を(社)日本非破壊 検査工業会において実施している。 5. 事前調査探査試験を開始する前に、探査箇所の設計図及び完成図等の既存資料より、測定対象のコンクリート構造物の設計諸元(形状、鉄筋径、かぶり、間隔等)を事前に確認する。 6. 測定方法(1) 電磁波レーダ法の比誘電率分布及びかぶりの求め方電磁波レーダ法による測定結果は、測定対象物の比誘電率による補正が必要となるため、対象構造物を破壊せずに求めることを原則として比誘電率を求める。具体的方法については、別紙「電磁波レーダ法による比誘電率分布(鉄筋径を用いる方法) およびかぶりの求め方(案)」によることとするが双曲線法等実績のある方法を用いても良いものとする。 (2) 測定面の処理コンクリート構造物は測定が良好に実施出来るよう、コンクリート構造物の汚れ等測定を妨げるものが存在する場合には、これらを除去する等、測定面の適切な処理を行う。 (3) 探査試験コンクリート構造物中の配筋状態及びかぶりの探査は、走査線上に探査装置を走査することによって行う。以下に基準線、走査線の設定から測定までの手順を示す。なお、各段階において参照する図については、下部工柱部を想定して作成している。 1) 基準線、走査線の設定及び鉄筋位置のマーキング探査面(コンクリート表面)の探査範囲(1m×1m以上)内に予想される鉄筋の軸方向に合わせて、直交する2本の基準線(X、Y軸)を定めマーキングする。次に、基準線に平行にX軸、Y軸それぞれ測定範囲の両端及び中央に走査線3 ラインを格子状にマーキングする。マーキングされた走査線上を走査することにより配筋状態の探査を行い、鉄筋位置のマーキングを行う(図 3 参照)。
2) 鉄筋位置の作図及びかぶり走査線の設定鉄筋位置のマーキング3 点を結び、測定面に鉄筋位置を示す。作図された鉄筋位置により配筋状態を確認した後、かぶりの測定に際し、鉄筋間の中間を選定し、測定対象鉄筋に直交する3 ラインのかぶり測定走査線を設定する(図 4 参照)。
3) かぶりの測定かぶり測定走査線にて測定を行い、全ての測点の測定結果について表4 の判定基準により適否の判断を行う(図 5 参照)。また、帯鉄筋等がある場合は、それらのかぶりを測定、もしくは、既知の鉄筋径より推定し、その値が表4 の判定基準を満たすこととする。
7. 規格値配筋状態及びかぶりの規格値は、出来形管理基準において表 3 の様に示されている。本試験においては、これらの規格値と測定による誤差を考慮し、表 4 により適否の判定を行うものとする。なお、判定を行う際の測定値は、単位はmm、有効桁数は小数点第1 位とし、小数点第2 位を四捨五入するものとする。 適否の判断において不良となった測点については、当該測点から鉄筋間隔程度離して両側に走査線を設定し、再測定を行い適否の判断を行う。再測定において1 測点でも不良となった場合は、不合格とする(図 7 参照)。 表 3 出来形管理基準による規格値
項 目 |
規格値 (注5)
φ:鉄筋径
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配筋状態(鉄筋の測定中心間隔の平均値) | 設計間隔±φ | かぶり | 設計値±φかつ最小かぶり以上 |
表 4 非破壊試験結果の判定基準
項 目 |
判定基準 (注6)
φ:鉄筋径 | 配筋状態(鉄筋の測定中心間隔の平均値) |
規格値±10mm
上記判定基準を満たさなかった場合設計本数と同一本数以上 | かぶり | (設計値+φ)×1.2 以下かつ下記いずれかの大きい値以上(設計値-φ)×0.8 又は最小かぶり×0.8 |
注5)出来形管理基準による配筋状態及びかぶりの規格値(以下、規格値という)は、出来形管理基準において表 3 の様に示されている。コンクリート打設後の実際の配筋状態及びかぶりは、この「規格値」を満たしていれば適正であるといえる。なお、「規格値」において、±φの範囲(ただし、かぶりについては最小かぶり以上) を許容しているが、これは施工誤差を考慮したものである(図 6 A部分参照)。 注6)現状の非破壊試験の測定技術においては、実際の鉄筋位置に対して測定誤差が発生する。このため、非破壊試験においては、測定誤差を考慮して判定基準を定めている。 「判定基準」では、この測定誤差の精度を、鉄筋の測定中心間隔の平均値については±10 ㎜、かぶりについては±20%以内であるとして、「規格値」よりも緩和した値としている(図 6B部分参照)。
8. 報告この非破壊試験は、工事目的物の出来形及び品質規格の確保を図ることを目的として請負者が実施するものであり、測定方法や測定箇所等について施工計画書に記載し提出するとともに、測定結果は、別添様式1~3 に記入の上、測定後随時及び工事完成検査時に提出・報告を行うこと。 図 7 に鉄筋探査の流れを示す。
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