放射性物質が検出された下水汚泥に関する課題と取組状況 |
環境中、下水汚泥中の放射性物質の検出状況等を以下の通り把握 ■
放射性物質は、関東・東北地方を中心に広範囲の環境中で検出されている。
■ 下水汚泥からも広範囲の下水処理場で放射性物質が検出されているが、濃度は減少傾向にあり、今後も同様と見込まれる。
■ 下水汚泥の有効利用・処分の中断により保管量が増加しており、受け入れ先・保管先の確保、減容化などの対策が急務となっている。 |
放射性物質を含む下水汚泥の保管及び情報提供の状況 |
自治体へのアンケート調査を実施し、以下の事項を確認 ■
脱水汚泥等の保管を行っている全ての処理場において、容器への封入
等による飛散の防止、遮水シート等による雨水浸入防止等が図られ、安全性の観点で適切に保管されていることが確認できた。保管を継続する中で、汚泥の臭気等の新たな問題が顕在化してきている。
■
放射能のモニタリングについては、汚泥核種分析のほか、下水処理場敷地境界等において空間線量の測定が着実に行われており、周辺住民の安全性が確保されていた。
■ ホームページや住民説明会等を通じて測定結果を周知しているほか、地域特性に応じた取り組み(住民参加型の測定会等)が行われていた。 |
下水道に関連する放射性物質の挙動 |
下水道に関連する放射性物質の挙動調査により、次の事項を確認 ■
合流式下水道では降雨時に高濃度の放射性セシウムが流入していた。
■
放射性セシウムは、処理場で主にエアレーションタンクに蓄積し、汚泥濃縮、脱水等の処理過程で濃縮されていた。一部は返流水により系内を循環するが、流入量の減少と汚泥引抜により減少する傾向にあった。
■ 脱水汚泥の放射性セシウム濃度は、長期的に減少する傾向であった。
■ 放流水中の放射性セシウムはほぼ不検出であり、検出の場合も水中濃度限度※注を大幅に下回った。汚泥焼却施設の排気中も不検出であった。
■ 下水汚泥焼却灰・溶融スラグの放射性セシウムの溶出試験を行い、水と接触してもほとんど溶出しないことを確認した。
|
放射性物質を高濃度に含む下水汚泥の保管 |
6/16
付けの通知の留意事項を踏まえ、放射性物質を高濃度に含む下水汚泥の保管や保管期間の長期化にあたっての今後の具体的な対応策を検討
■
通常はフレキシブルコンテナ(フレコン)による保管で対応できるが、保管場所が狭小で高く積み上げる必要がある場合等は、フレコンを20
フィートコンテナ等に収納する方法やフレコンの代わりに200L ドラム缶に収納する方法などの代替手法が適用可能である。 |
■
放射線の遮断について、コンクリート構造材等による遮へいや隔離距離による低減による遮断効果を具体的に計算し、結果を分かりやすく図化した。
⇒左図及び右囲み参照 |
【放射線遮へいの評価結果の例】
フレコン集積(2m×50m×2m)、保管物放射能濃度100,000Bq/kg
の場合で、以下のいずれかの対応により、作業者の被ばくを1μSv/h 以下にすることが可能。
・10m 以上の隔離距離を保つ
・20cm 以上のコンクリートで遮へい
・5cm 以上の鉄板で遮へい |
|
■ 適切な放射線監視の具体的方法を以下のとおり整理した。
・定期的及び降雨後における脱水汚泥等の放射能濃度測定の実施
・作業エリアや敷地境界等での空間線量率の測定、受動型の個人線量計等による測定
・焼却施設等の排気については、空気中濃度限度※注(Cs134 で20Bq/m3、Cs137で30Bq/m3、濃度の割合の合計が1
以下)を下回ることを確認する
■
長期にわたる汚泥の保管を前提として、適切な管理体制を構築することが必要であり、このため放射性廃棄物の種類、表面線量当量率等をロット単位で合理的に記録・管理しておくべきである。 |
|
下水汚泥の減容化等の手法 |
長期間にわたる汚泥の保管場所を確保する上で汚泥減容化は有効であることから、その留意点をシナリオ毎に整理した。
■ 脱水汚泥の保管や減容化施設の導入にあたっては、当該処理場の特性を考慮し、各技術の留意点や評価視点を明確にして選定を行う。
■
乾燥については施設整備に要する時間が比較的短く、移動式乾燥車等の仮設技術もあることから、導入しやすいと考えられるが、乾燥後も有機物は残っている点に留意が必要である。
■
減容化を行った場合、下水汚泥中に含まれる放射性セシウムが濃縮されることに留意する必要があり、放射性セシウムの飛散防止、作業員の被曝対策等も確実に行う必要がある。 |
|
まとめ |
下水道は、都市に降下した放射性物質が集められることで、結果的に除染の一端を担う機能を発揮している。
降雨による放射性物質の流出は長期的に減少傾向であることから、下水道に流入する放射性物質も減少し、いずれは下水汚泥の放射能濃度も問題とならないレベルまで低下すると見込まれる。
現在、放射性物質が検出された汚泥は適切に保管され、飛散防止対策等が行われている。焼却等による排気中の放射性物質は検出されておらず、焼却灰等からの溶出の影響は少ないことも確認された。放射性物質を含む下水汚泥等の適切な閉じ込め・遮へい等の対策が重要であり、作業者及び周辺地域住民の安全確保のため、適切なモニタリングを行い、分かりやすい形で情報提供することが住民の理解と安心にもつながるものである。
下水汚泥の減容化については、各技術の特徴や処理場の特性を踏まえて適切なシナリオや技術を選定すべきであり、その際には、保管や処分の安全性確保のためのセメント固化技術等も含めた総合的判断が重要である。 |
|
今後の課題 |
■
雨天時や除染活動の影響を踏まえ、市街地から下水道へ放射性セシウムが流入する状況を把握し、今後発生する汚泥の推移を検討し、既に保管している汚泥も含めて、今後の対応を具体的にスケジュール感をもって示し、保管を減少させる取り組みを進めること
■
焼却等の減容化施設や下水汚泥の埋立処分における放射性セシウムの挙動、下水汚泥からの放射性セシウムの分離除去等、対策に役立つ知見を得るために、今後も調査研究を実施すること6/16
付けの通知の留意事項を踏まえ、放射性物質を高濃度に含む下水汚泥の保管や保管期間の長期化にあたっての今後の具体的な対応策を検討した。
■
通常はフレキシブルコンテナ(フレコン)による保管で対応できるが、保管場所が狭小で高く積み上げる必要がある場合等は、フレコンを20
フィートコンテナ等に収納する方法やフレコンの代わりに200L ドラム缶に収納する方法などの代替手法が適用可能である。 |
■
放射線の遮断について、コンクリート構造材等による遮へいや隔離距離による低減による遮断効果を具体的に計算し、結果を分かりやすく図化した。
⇒左図及び右囲み参照 |
|
■ 適切な放射線監視の具体的方法を以下のとおり整理した。
・定期的及び降雨後における脱水汚泥等の放射能濃度測定の実施
・作業エリアや敷地境界等での空間線量率の測定、受動型の個人線量計等による測定
・焼却施設等の排気については、空気中濃度限度※注(Cs134 で20Bq/m3、Cs137で30Bq/m3、濃度の割合の合計が1
以下)を下回ることを確認する
■
長期にわたる汚泥の保管を前提として、適切な管理体制を構築することが必要であり、このため放射性廃棄物の種類、表面線量当量率等をロット単位で合理的に記録・管理しておくべきである。
【放射線遮へいの評価結果の例】
フレコン集積(2m×50m×2m)、保管物放射能濃度100,000Bq/kg
の場合で、以下のいずれかの対応により、作業者の被ばくを1μSv/h 以下にすることが可能。
・10m 以上の隔離距離を保つ
・20cm 以上のコンクリートで遮へい
・5cm 以上の鉄板で遮へい
本とりまとめでは、情報提供の実施例を踏まえ、適切な情報提供のあり方について具体的に整理して提示した。
以上から、放射性セシウムは主に汚泥に移行しており、汚泥の適切な処理が最も重要であることが明らかとなった。 |
|