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吹付枠工断面決定のための意外な情報

 

 

 


吹付枠工は現在切土のり面において、最も重宝されているのり面工といってもいいと思います。この枠断面にはいくつかのサイズがありますが、設計の際にはどのように断面を決めているでしょうか。

アンカー工や補強鉄筋工と併用する場合は、目的は地山の安定化の要素が強く、安定計算⇒アンカー工、補強鉄筋工計算⇒反力版(吹付枠工)計算の流れで決めると思います。

一方アンカー工や補強鉄筋工を打設しない場合はどうでしょうか。「のり枠工の設計施工指針(全国特定法面保護協会)」では、のり中間からの円弧形崩壊やのり肩からのクサビ形崩壊で構造計算を行い必要断面を決定しています。設計図と計算書、後に残す書類としてはこれで良いのですが、実際の現場では、先ず現地を確認し、エンジニアリングジャッジメントでどの程度の断面サイズの枠が必要か見極め、事後に安定計算・構造計算で、そのイメージで安定度が確保できるかを確認します。

この一連の判断の中で技術者は、断面強度は下記のように150断面が弱く、600断面が強いと思っていますし、経済的には150断面が安く、600断面が高いと思っています。

枠断面 強度 経済性
150×150


200×200
300×300
400×400
500×500
600×600

確かに枠断面的に考えれば上記は正しいのですが、枠にはスパンという”便利”なものがあります。スパンを考慮した場合、上記のうち特に経済性についてはどうなのかを、今回いさぼうで掘り下げて みました。

「新版フリーフレーム工法(フリーフレーム協会編)」では枠断面と標準枠スパンについて以下のように示されています。

標準枠断面(mm) 標準枠スパン(mm)
150×150 1150×1150
200×200 1500×1200
300×300 2000×2000
400×400 2000×2000
400×400 2500×2500
500×500 3000×3000

600×600

3000×3000

また公開されている国土交通省の標準設計図(北陸地整の例:http://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/hyoujyunsekkei/hyoujyunsekkei_2008.11.pdf)では以下のように書かれています。

標準枠断面(mm) 標準枠スパン(mm)
200×200 1200×1200
200×200 1500×1200
300×300 1500×1500
300×300 2000×1500
400×400 2000×2000
400×400 2500×2000
500×500 2500×2500
500×500 3000×2500
500×500 3000×3000

特に大断面になると、いろいろなスパンが取られています。

一方、吹付枠工の積算は、市場単価になっています(単位”m”単価)。このため簡単に工事費が算出できます。今回、いさぼうでは、よくありそうな各断面、各スパンで単位”面積”当たりの工事費を求めてみました。

 

標準枠断面(mm) 標準枠スパン(mm) 工事費(千円/m2
150×150 1150×1150 11.1
200×200 1200×1200 13.0
200×200 1500×1200 11.9
200×200 1500×1500 10.8
300×300 1500×1500 15.5
300×300 2000×2000 14.2
400×400 2000×2000 18.6
400×400 2500×2500 17.3
500×500 2000×2000 24.0
500×500 2500×2500 20.0
500×500 3000×3000 17.2
600×600 2000×2000 31.3
600×600 2500×2500 26.1
600×600 3000×3000 22.5
600×600 4000×4000 17.6

イメージと異なる意外な結果もあります。

150×150×1150×1150よりは、200×200×1500×1500の方が安価です。400×400×2500×2500と500×500×3000×3000、さらには600×600×4000×4000はほぼ等価です。

これを見ると、これまでは植生基礎工の場合は150×150×1150×1150が無条件で採用されていましたが、200×200×1500×1500を採用した方が安定した法面になることもありそうです。

「新版フリーフレーム工法(フリーフレーム協会編)」では、次のように書かれています。

断面150×150、200×200の使い分けは、のり面状況、気象条件などを考慮して、設計者の知識、経験に基づき判断するものとする。

(1)のり面が安定している場合は、降雨などによる浸食の防止や風化の抑制などを目的として、のり面保護を行う。のり面保護工の選定にあたっては、緑化することが望まれるが、フリーフレーム工法は植生基盤の流出を防止する効果が高いので、緑化基礎工として使われることが多い。
植拗の生育に必要な植生基盤の厚さは、のり面の状況、気象条件、導入する植物の種類などによって異なるが、土壌を使用する場合の必要厚さの目安は図2.3のよ.うに示されている。フリーフレーム工法の最小断面はこれを参考として設定しており、150x150を最小断面としている。土壊を使用して、中詰工に客土工や土のう工を行う場合は、150×150の断面を使用する。

(2)寒冷地ののり面は、凍結、凍上による剥落や部分的な滑落などが発生する恐れがあるため、200×200以上の断面とすることが多い。また、南〜南西向きのり面の場合、日射量が多く乾燥が著しいので、客土厚を厚くすることが必要となり、この場合も200×200以上の断面とすることが多い。凹凸が激しいのり面では、150×150では崩落などの抑止効呆が不十分と考えられるので、200×200以上を使用することが望ましい。

上記経済的な結果から言えば、枠内が多少広くなるリスクが問題ないとすれば、200×200×1500×1500の方がより多目的であるといえます。

 

   
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