防災・減災、国土強靭化のための性能評価の最適化の実務
−個別最適から
全体最適に展開−
- 常田 賢一 著
- 本体:2,500円(税別)
- 編集・発行:(一社)地域国土強靱化研究所 安原一哉
- 販売開始:2023年3月1日
- 体裁:B5判、カラー印刷、本文 302ページ+技術資料 25ページ
- ●ご注文はこちらから
著者紹介
- 常田 賢一:大阪大学名誉教授・博士(工学)・技術士(建設部門)、(一財)土木研究センター 顧問、(一社)地域国土強靱化研究所 顧問
- 専門分野:土質・地盤工学、基礎・土工構造物工学、防災工学、工学倫理
我が国では、1995 年の阪神淡路大震災を契機として、土木構造物の設計法は性能設計に大きく舵を切り、現在、性能設計は認知されている現状にあります。しかし、構造物によっては、性能設計が汎用化、実務化には至っていない状況にあります。また、近年の土木構造物を始めとする社会インフラに対する国民、利用者などの要望が多様化かつ複雑化し、新たな技術が開発・普及され、さらに、DX など、急激なデジタル情報化が進展している状況にあり、個々の構造物の性能設計に留まらず、事業のあらゆる段階、分野を俯瞰した対応が必要とされています。
そのような状況を鑑みて、本書は、従来の性能設計などのように、個別の事業段階などにおける最適化を「個別最適化」とし、他方、設計・施工・維持管理を含めた全段階、さらには、事業段階に留まらず、事業の対象分野や地域、関係する政策や機関などを俯瞰した最適化を「全体最適化」として、将来の事業の取り組みの方向性あるいは対策の位置付けの明確化、想定外の事象に対する柔軟な対応、社会インフラを享受あるいは利害に関係する国民などからの理解の向上のためには、取組みの姿勢は「個別最適」から「全体最適」への展開が有効であり、それにより、防災・減災、国土強靱化などの政策の効果的な実現に資することができるとするものです。
そのため、本書は、下図に示す 4 つの章で構成しています。
本書が、我が国において宿命的、永続的に危惧される甚大な自然災害に対する「防災・減災・国土強靱化」の重要政策に携わる実務者の皆様にとって、個別の構造物に留まらない、分野、事業、政策、機関、地域などに関わる広義の性能の位置付け、また、それらの性能を「個別最適」に留めず、「全体最適」により最適化を図る姿勢の意義、方法の理解の深化に資することができれば幸いです。
ー 目次構成 ー(本文 302ページ+技術資料 25ページ)
はじめに
1. 性能と性能評価の基本
1.1 性能設計の契機と推移
1.2 性能設計から性能評価への展開
1.2.1 性能設計の現況
1.2.2 性能評価への動き
1.3 性能評価の意義と特徴
1.3.1 仕様設計、性能設計および性能評価
1.3.2 性能および性能評価の対象
1.3.3 官・産・学・民の協働
1.3.4 性能評価の基本
【雑感1】向き合う姿勢を明示する
2. 性能評価における多様な視点
2.1 災害による被害レベルは性能レベル
2.1.1 地震・豪雨による道路構造物の被害
2.1.2 洪水による河川堤防の被害
2.1.3 津波による防潮堤の被害
【雑感2】外的作用をL1レベルとL2レベルで考える
2.2 俯瞰的評価による全体最適
2.2.1 多様な全体最適
2.2.2 全要件最適
2.2.2.1 現在の総合評価:全要件最適
2.2.2.2 今後の総合評価:全要件最適
2.2.3 全段階最適
2.2.3.1 土工構造物の全段階最適
2.2.3.2 橋梁の設計における全段階最適
2.2.3.3 地質・地盤リスクにおける全段階最適
2.2.3.4 地震断層に対する全段階最適
2.2.4 複合構造最適
2.2.4.1 同一分野内の最適化:分野内複合構造最適
2.2.4.2 異分野間の最適化:分野間複合構造最適
2.2.4.3 同一構造物内の最適化:部材間複合構造最適
2.2.5 地域最適
2.2.5.1 土地利用・広域最適
2.2.5.2 多重防御・広域&狭域最適
【雑感3】構造物を望ましい壊れ方に制御する
2.3 粘り強いは性能
2.3.1 粘り強いの発端
2.3.2 粘り強いの位置付け
2.3.3 防潮盛土の粘り強さによる性能
2.3.4 河川堤防の粘り強さによる性能
2.3.5 道路・土工構造物・盛土構造の粘り強さによる性能
2.3.6 粘り強さによる防災・減災の姿勢
【雑感4】洪水の激甚な氾濫は、川津波ではないか
2.4 評価指標と評価基準
2.4.1 評価指標と評価基準の関係
2.4.2 道路土工構造物
2.4.2.1 道路土工構造物技術基準および道路土工−盛土工指針
2.4.2.2 段差高による耐震性能評価
2.4.2.3 すべり破壊特性による耐震性能評価
2.4.2.4 道路の啓開状況による耐震性能評価
2.4.2.5 沈下対策工法:壁式改良工法の性能評価
2.4.3 河川構造物
2.4.3.1 河川砂防技術基準・設計編における性能評価
2.4.3.2 破堤・破堤拡大の性能評価
2.4.3.3 越流に対する性能区分の概念と性能評価の考察
2.4.3.4 河川堤防の強化対策の実施に向けた性能評価
2.4.3.5 滋賀県の流域治水対策の性能評価
2.4.3.6 洪水浸水想定区域図による性能評価
2.4.3.7 水害リスク評価の手引き(試行版)の性能評価
2.4.4 津波に対する防潮堤の性能評価
2.4.5 土砂災害:土石流の性能評価
【雑感5】2次元数値シミュレーションはデジタルツインの先駆け、何を学ぶか
【雑感6】泥流と土石流は区別されることがある
2.5 性能評価の妥当性の根拠・エビデンス
2.5.1 根拠・エビデンスの意義
2.5.2 新技術の評価に関する実例
2.5.2.1 道路橋の技術評価手法:新技術評価のガイドライン(案)
2.5.2.2 河川砂防技術基準など
2.5.2.3 国土交通省新技術活用システムおよびNETIS
2.5.2.4 技術審査証明協議会による技術審査証明事業
2.5.3 根拠・エビデンスの分類
2.5.4 理論的で妥当性を有する方法:数値解析などを実施
2.5.4.1 土木分野におけるV&Vの取組み
2.5.4.2 盛土内の地震動増幅特性を考慮したNewmark法の実証解析
2.5.4.3 落石シミュレーション手法の検証
2.5.5 実験等による検証がなされた方法:実験などを実施
2.5.5.1 落石対策便覧における実験の位置付け
2.5.5.2 原位置の実大実験による妥当性確認:壁式改良工法
2.5.5.3 津波の越流に対する盛土の強化構造の実証実験
2.5.5.4 地震時の道路盛土のすべり破壊制御の実証実験
2.5.5.5 堤防の越流に対する減勢構造の実証実験
2.5.6 これまでの経験・実績から妥当とみなせる方法:経験・実績を保有
2.5.6.1 既往の経験などによる標準勾配:道路土工−盛土工指針
2.5.6.2 既往災害の発生要因による道路盛土の地震危険度マクロ評価法
2.5.7 その他の妥当な方法(1):第三者評価の付与
2.5.8 その他の妥当な方法(2):所要図書の遵守・参考
【雑感7】特定土工構造物の法定点検方法は、改善・充実している
2.6 技術・工法の提案のための根拠・エビデンスの明示事例
2.6.1 新材料等を用いた越水に対する盛土強化工法におけるエビデンス項目
2.6.2 水路ボックスカルバートの木杭の設計法の根拠・エビデンスの検証
2.7 ローカルルールの位置付け
【雑感8】堤防には余裕高と余盛高、さらに舗装厚がある
【雑感9】3次元点群データの活用は、形状評価に留めない
3.性能評価・最適化の実際
3.1 政策・行動計画における性能評価・最適化
3.1.1 道路分野の新技術導入の促進のための性能評価
3.1.1.1 道路分野における新技術導入促進方針
3.1.1.2 新技術導入促進における性能評価
3.1.2 道路の耐災害性の向上
3.1.3 道路のリスクアセスメント
3.1.4 テーマ設定型(技術公募)における性能評価
3.1.5 DXによる人、組織、社会の変革の全体最適
3.1.6 流域治水における流域最適
3.1.7 令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討
3.1.8 水災害リスクを踏まえた防災まちづくりのガイドライン
3.1.9 津波防災地域づくりに関する法律
:津波防災地域づくりに関する中間とりまとめ
3.1.10 防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策
3.1.11 気候変動を踏まえた治水計画のあり方
3.1.12 持続可能な開発目標:SDGs&国土交通省グリーンチャレンジ
3.1.13 事業継続計画・業務継続計画:BCP
3.1.14 国土交通省におけるBIM/CIMの推進
【雑感10】ICT数量土工から、ICT品質土工へ展開
【雑感11】発生機構から見ると、土砂化は幅広い
3.2 分野別の性能評価・最適化の事例
3.2.1 道路分野
3.2.1.1 能登有料道路:盛土の性能設計
3.2.1.2 三陸沿岸道路:盛土の性能設計
3.2.1.3 阪神高速道路・三宝JCT:性能設計による液状化対策
3.2.1.4 新名神高速道路・宝塚北SA:高盛土の性能設計
3.2.1.5 島根県の落石対策:道路ネットワークの全体最適
3.2.1.6 六甲有料道路の落石対策:全段階最適
3.2.1.7 別府市板地橋の地震断層対策:全段階最適
3.2.1.8 新阿蘇大橋の地震断層対策:部材間複合構造最適・全段階最適
3.2.2 河川分野
3.2.2.1 滋賀県の流域治水対策:全段階最適・地域最適
3.2.2.2 3次元地盤探査による堤防の基盤漏水の危険度評価:全段階最適
3.2.2.3 危機管理型ハード対策を上回る越水対策:部材間複合構造最適
3.2.3 砂防分野
3.2.3.1 CIM活用による地すべり対策:全段階最適・広域最適
3.2.4 海岸分野
3.2.4.1 津波に対する防潮堤の最適化:多様な個別最適の深化
3.2.4.2 津波に対する防潮堤の最適化:分野間複合構造最適(1)
3.2.4.3 盛土の活用による津波防災の最適化:分野間複合構造最適(2)
【雑感12】土砂・洪水氾濫のほかに、流木・洪水氾濫が発生している
【雑感13】異種構造の境界は弱部であり、変状が発生し易い
4.まとめと課題
4.1 まとめ
4.2 課題
謝辞
索引
技術資料:21社(全25ページ)
雑感13編
雑感 1:向き合う姿勢を明示する
雑感 2:外的作用をL1レベルとL2レベルで考える
雑感 3:構造物を望ましい壊れ方に制御する
雑感 4:洪水の激甚な氾濫は、川津波ではないか
雑感 5:2次元数値シミュレーションはデジタルツインの先駆け、何を学ぶか
雑感 6:泥流と土石流は区別されることがある
雑感 7:特定土工構造物の法定点検方法は、改善・充実している
雑感 8:堤防には余裕高と余盛高、さらに舗装厚がある
雑感 9:3次元点群データの活用は、形状評価に留めない
雑感10:ICT数量土工から、ICT品質土工へ展開
雑感11:発生機構から見ると、土砂化は幅広い
雑感12:土砂・洪水氾濫のほかに、流木・洪水氾濫が発生している
雑感13:異種構造の境界は弱部であり、変状が発生し易い
【参考リンク】
●『防災・減災、国土強靭化のための性能評価の最適化の実務 −個別最適から
全体最適に展開−』:(一般社団法人 地域国土強靭化研究所/新刊書ご案内)
●『土木技術者のためのプロフェッショナルの姿勢と視点』(便利ツール−お薦め書籍)