地震で被害を受けた建物が安全かどうかを判断するためには「被災建築物応急危険度判定(以下、応急危険度判定)」を行います。
応急危険度判定の目的は、地震により被災した建物が余震により倒壊する危険性、窓ガラスや看板など建物の一部が落下、あるいは転倒する危険性などをできるだけ速やかに判定することです。これは恒久的な復旧を行うまでの間に被災建築物を使用するに当たっての危険性についての情報提供を行うことにより、人命に係る二次的な災害を防止する目的です。
阪神・淡路大震災では、ボランティアの活躍が注目されましたが、応急危険度判定を行う「応急危険度判定士」も、建築技術者を対象に都道府県知事が実施する講習会などを受講し、認定登録されたボランティアです。応急危険度判定士は、地元市区町村長または都道府県知事の要請により判定活動に従事しますが、敷地内や建物内に入る場合があるため、常に身分を証明する登録証を携行することになっています。
判定のための調査は、主に建築物の外観の目視により行われ、簡単な計器を使用する場合もあります。外観調査によって「危険」と判定される条件が整えば、それ以上の調査は省略されます。また外観調査からは無被害とみられる場合は、内部を調査することがあります。
この調査の項目は、
@一見して危険と判断されるか否か
A隣接構造物・周辺地盤等および構造駆体に関する危険度
B落下危険物・転倒危険物に関する危険度
の3つに分けられます。
AとBについては、さらに詳細な6〜7の項について被災度ランクA、B、Cを判定し、各ランクに該当する数によって最終的に「危険」、「要注意」、「調査済」の3段階に判定します。「調査済」は危険または要注意に該当しない場合です。
判定の結果は、建築物の出入口などの見やすい場所に、赤(危険)、黄(要注意)、緑(調査済)の判定ステッカーを貼付して建築物の所有者や使用者などに周知されます。一種のトリアージですね。
平成16年3月末現在、応急危険度判定士として全国で96189名が登録されています。阪神・淡路大震災では約6500名の建築技術者が応急危険度判定を行ったのをはじめ、宮城県北部地震(1996年8月)、鹿児島県薩摩地方を震源とする地震(1997年3月、5月)などでも応急危険度判定が行われました。
なお被災建築物応急危険度判定は、地震直後の人命の安全を確保するためのものであり、建築物の資産価値的な面を調査するための被害調査とは視点が異なり、判定結果も異なる場合があります。
■参考資料
1.被災建築物応急危険度判定要綱
被災建築物の応急危険度判定の基本となる要綱。 |
2.被災建築物応急危険度判定業務マニュアル |
(1) 震前対策編 |
震前マニュアル。主に都道府県が判定実施時に円滑に進められるよう,平時においてその準備を進めるため,マニュアル化したもの。 |
(2) 震後対策編 |
○ 実施本部業務マニュアル
災害対策本部が被災建築物応急危険度判定の実施を決定する時点から,実施本部の円滑な業務遂行に必要な事項についてマニュアル化したもの
。
○ 支援本部業務マニュアル
実施本部を開設した公共団体が,当該公共団体だけでは判定業務を行うことが困難だと判断した場合,支援本部開設を決定する時点からの円滑な業務遂行に必要な事項についてマニュアル化したもの
。
○ 判定士業務マニュアル
判定業務に携わる判定士が円滑に業務を遂行するための事項についてマニュアル化したもの。
○ 判定コーディネーター業務マニュアル
判定の実施のために判定士の指導・支援を行う判定コーディネーターの業務についてマニュアル化したもの。
○ チーム編成業務マニュアル
判定コーディネーターの業務の一部の判定士のチーム編成に係る部分についてマニュアル化したもの。 |
(3) 広域支援本部業務マニュアル
被災建築物応急危険度判定の広域支援に備え、周辺都道府県により構成される広域被災建築物応急危険度判定協議会が予め震前に準備すべき基本的事項及び全国支援のための広域支援本部の業務についてマニュアル化したもの
。 |