<分かり易い表現を心掛ける(第三者に読んでもらう)>
前回までのシリーズで、報告書を書く段取りがほぼできました。今回は、実際の報告書を書くにあたって、顧客に伝えたいことを素直に伝えるために心掛けなければならない「分かり易い表現」をどの様に身につけるかです。
皆さんは、生命保険の契約書(約款)を分かり易い書類だと思いますか。ご存じの通り、読んでほしくないと言わんばかりに、小さな文字でびっしりと書いてあります。また、法律用語に代表される専門用語が多く、私は読む気さえしません。多分皆さんも同じでしょう。では、情報機器の取扱説明書などはどうでしょうか。生命保険の約款に比べ文字は大きいのですが、やはり専門用語、それもカタカナばかりで内容の半分も理解できれば上等です。
どちらも、顧客の立場になって書かれた書類だとは、お世辞にも言えません。技術者の独りよがりなのか、端から読んでもらおうと思って書いていないのか分かりませんが、分かりにくい書類の極め付きでしょう。
では、どの様な報告書が分かり易いと言われるのでしょうか。一言で言えば、「顧客の立場になって書かれた報告書」ということになるのですが、具体的にはどのような表現の報告書なのでしょうか。いさぼうが考える要点を幾つか考えてみました。
(1)適切な文字の大きさ、文字間隔、行間隔
(2)流れに沿った章立て
(3)章、節、項、号などの一貫性を持たせた区分け
(4)専門用語に代表される用語・表現の統一(一貫性を持たせる)
(5)専門用語の一般的な言葉での表現(特にカタカナ用語)
(6)色、太文字、下線などの強調文字を使った重要語句の強調
(7)簡潔な(冗長でない)文章
(8)言葉での細かな説明より、図や表などを用いて視覚に訴える
(9)報告書の中で伝えたいことが概観できる(例えば)序を設ける
まだ他に有るかもしれませんが、以上の要点を満足させることができれば、分かり易い報告書になることは間違いないでしょう。しかしながら、技術者は自己満足に陥り易いという欠点を持ち合わせているため、要点を満足しているかどうかの自己チェックを苦手としています。したがって、この苦手を克服して分かり易い報告書が書けるようにならなければいけませんが、それにはちょっとした工夫が必要になってきます。
それが、第三者に読んでもらいチェックしてもらうことです。勿論、上司や技術管理者によるチェックも絶対に必要ですが、私の経験上、あまりに修正個所が多いと自分の文章が分からなくなるくらいに真っ赤に直され、悔しいと同時に一時的に意欲も減退してしまいます。そこで、上司や技術管理者に読んでもらう前に、第三者、できれば社内の事務系の同僚やいなければ家族などに読んでもらうことが「顧客満足度を上げる対策の第一歩」と考えています。
私は、子供達が大きいこともあり、良く家族に読んでもらいます。そして、次の質問をします。
(a)言いたいことが分かるか?
(b)分からないところはどこか?
(c)分かりにくい表現はどれか?
(d)言いたかったことは何か?
(e)概要を説明して!
すると、自分で当然と思って書いていた表現も、その多くが家族にとって理解するのには難しいことに気付かせてくれます。大変有り難い事前検査員として利用しています。また、同僚や家族で有れば遠慮もなく、単刀直入に意見を言ってくれますので、事前検査員として付き合ってもらうには、打ってつけではないかと思います。
情報公開法が施行され、一般の納税者が、我々建設関連事業者の提出する報告書を閲覧する機会が増えてきました。閲覧したときに、納税者(最終顧客)が理解できるような表現にするように心掛けるのは、我々建設技術者の責務です。今まで業界の常識と思われてきた諸々の表現も、今一度見直す絶好の機会かもしれません。そのためにも、先入観のない人にまず読んでもらいましょう。それが、分かり易い表現を実現できる特効薬です。
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