<目次を早めに書く(どこが重要か把握する)>
このシリーズもいよいよ折り返し点です。今回は、業務を効率よく遂行していくために欠かせない「どこが重要か把握する」の副題を付けた「
目次を早めに書く」です。
目次が大変重要であることは、勿論理解されているとは思います。では、報告書に於ける目次は、どの様な役目があるのでしょうか。いさぼうでは、
報告書を読む人に報告書の概要を分かり易く伝える役目ばかりでなく、業務を遂行する前に書くことによって効率よく業務を遂行する役目も持っていると考えています。そして、この後者の役目が実は大変重要なのです。
そこで今回は、「なぜ業務遂行前に目次を書くことが、効率よく業務を遂行することに繋がるのか」を理解していただくことを目的として、お話しを進めます。
分かり易いように、映画に例えて考えてみましょう。建設業界を映画の世界に例えてみれば最終顧客が観客、
発注者が映画製作会社、報告書を書く受注企業が監督以下のスタッフにあたります。そして報告書にあたるものは、調査・設計業務であればシナリオ(脚本)でしょうし、工事業務であれば映画そのものと考えて差し支えないでしょう。ここでは、シナリオに焦点を当て考えてみます。
シナリオを書く手順は詳しく知りませんが、基本的には、観客が感動してくれる作品に仕上げるために、
・ テーマは何か
・ 何を訴えたいか
・ どの辺りで盛り上がりを持ってくるか
・ 最後のシーンはどの様にするか
などを考慮して、粗筋を考え枠組みを決めていくことになるでしょう。この粗筋や枠組みの出来不出来が、映画の評価を左右するといっても過言ではないと思います。最終的には何度も書き直されることもあるのでしょうが、基本となる粗筋や枠組みに肉付けを行い完成形に近づけていくことになるのです。正に、報告書の作成と同じような手順を取っていくことに気付かれたでしょう。
そうです。報告書に於ける目次は、シナリオに於ける粗筋や枠組みにあたるのです。当然のことながら、粗筋や枠組みはシナリオを書く前の構想時に練られ作られるものです。そうしなければ、
がぼやけてしまい、感動がない平凡な映画になってしまう危険性が高くなります。したがって、我々観客が感動する映画は、これらを充分考えた
粗筋や枠組みを練りに練って作られているのです。
我々が書く報告書も、業務遂行条件や遂行過程、さらには結果や考察を顧客に確実に伝えることができなければ、報告書としての意味がありません。「顧客に確実に伝える」こと、それは映画に例えれば観客を感動させることに他なりません。そのためには、構想段階で粗筋や枠組みを十分に練ること、つまり業務遂行前に目次をよく考え書き上げることが大変重要なことなのです。また、事前に目次を書く(業務遂行前に報告書の粗筋や枠組みを作る)ことによって、次のようなメリットもあります。
(1)業務全体を俯瞰(全体像を掌握)できる
(2)一貫した流れにするためにやらなければならないことが明確になる
(3)どこが重要か明確になる
(4)業務遂行計画が立て易い(工程を守りやすい)
(5)伝えたいことを伝えるためのキーワードが明確になる
特に、「どこが重要か明確になる」ことは、重大な過失を確実に避けるために極めて有用です。それによって、どこに人・物・金などの経営資源を集中させなければいけないか、明らかにすることができるからです。
ところで、どこかで見たような言葉が並んでいませんか。気が付いた方もおられるでしょうが、第1回目のテーマ「段取り八部」の中で、いさぼうが考える報告書を書くにあたっての段取りとして紹介した次の5つの内の3つが共通していることが分かります。
(a)受注した業務の全体像を把握する
(b)業務の目的を明確にする
(c)業務の流れを明確にする
(d)キーワードを明確にする
(e)目次を書く
それだけ本格的な業務遂行前に目次を書くことが重要であり、目次を書くことそのものが報告書を書く段取りの基本であることが分かっていただけたものと思っています。