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災害ミニ知識

 
甚大すぎる自然災害と土木技術者の役割・技術の変化
 

2017年7月13日

  九州北部におきまして、豪雨により甚大な被害が発生しています。
 被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 今なお避難されている皆様、復旧作業に従事されている皆様のご安全と一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

 今回の豪雨災害は線状降水帯が主な原因となっています。 線状降水帯とは、線上に伸びた地域に、積乱雲が次々と発生し、強雨をもたらす気象現象であり、規模は、幅20〜50km、長さ50〜300kmに及びます。 線状降水帯は数時間にわたり猛烈な雨を降らせ続けます。 甚大な被害をもたらした2015年の東日本豪雨、同年の広島土砂災害の原因となったことで一気に知られるようになりました。
 この線状降水帯は台風の外側に発生することもあり、まさに今回はそれにあたり、以下の発生機構となりました。

(1) 5日の未明にかけて日本列島の東海上へ抜けた台風3号の影響で湿った空気が残留。
(2) 大陸側の高気圧に押されて梅雨前線が南下。
(3) 前線に沿う形で東北南部から中国地方にかけての範囲で「狭い雲の流路」の形成。
(4) 太平洋高気圧の縁を回るように温かく湿った風が断続的に流れ込み、大雨を降らせる積乱雲が次々と狭い範囲に集中して発生。

 今回特に被害の大きい朝倉市の気象庁のデータベースを見ると、5日に異常な降水量を記録しています。

降水量 最大降水量(mm)
1時間 10分
1 0.0 0.0 0.0
2 0.0 0.0 0.0 
3 0.0 0.0 0.0
4 24.0 6.5 2.5 
5 516.0 129.5 28.5
6 70.0 17.5 5.5
7 22.5 14.5 5.5
8 0.5 0.5 0.5
9 21.5 10.5 3.5

 この5日の降水量が朝倉市の歴史上、過去に比べてどのくらいだったかというと、

〇日降水量
 1位 516.0mm (2017/7/5)
 2位 195.0mm (2014/7/3)  統計期間1976年から

〇日最大1時間降水量
 1位 129.5mm (2017/7/5)
 2位  64.0mm (2006/7/4)  統計期間1976年から

〇日最大10分間降水量
 1位 28.5mm (2017/7/5)
 2位 21.5mm (2009/7/1)  統計期間2008年から

 いずれも2位を大きく離した1位で、日降水量にすると、これまでの最大値のなんと3倍近くの降水量を経験したのです。

 これだけの降雨を想定して土木構造物は設計されていません。 斜面にとっても経験したことのない降水量です。 一方で今回のような線状降水帯はどの地域にも発生する危険性はあるのです。

 また今回の災害では、流木が水の流れや施設の破壊に関して大きく影響していることがわかります。
 土石流提のように設計条件として流木を考慮するのか、また流木そのものをでないよう供給地の方にターゲットを当てるのかも問題提起されてきます。

 今回の災害の教訓として、最低限何を守るのかといった豪雨に対する性能規定など、ハード設計の基準などの見直しは無論ですが、全国どこでも発生するかもしれない異常気象時に対する、“ソフト対策という技術“も、我々土木技術者が担うべき大きな役割や能力に加えるきっかけにするべきではないでしょうか。

 

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