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 性能設計への流れと国内の動向
FEM理論をはじめる前に

国土交通省「土木・建築にかかる設計の基本」からわかること

設計方法が変わる!

今、私達は技術標準として『仕様規定』を用いた設計を行っていますが、国際的な流れを受けて『性能規定』へ移行しつつあります。

四角四面な考え方

部材や材料について様々な規定を設けている。

柔軟な考え方

詳細な制約はなく、最終的に求める性能のみが規定されている。

Q. 何故、性能規定に移行するのか?
A. 欧米諸国では性能規定が主流になっています。日本でも「国際的に通用する性能規定を取入れる必要がある。」と考えられています。
Q. 性能規定のメリットは?
A. 仕様規定の基準に適合しなかった材料や技術,工法を導入する事が可能となり、設計の幅が広がります。さらに、新技術等によりコストの縮減も期待できます。

『性能規定』への移行で何が変わる?

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性能規定では必要な機能を確保するための性能を明記するものである。

要求性能を満たす手段の選択は構造物の目的に応じて選択するものである。(ただし、要求性能を満足することを検証しなければなならない。)

具体的な検証方法として、要求性能を満足する設計報告書を作成し、審査機関の審査を受けるケースや、規定された仕様(部分係数法など)を満足させるケースなどが考えられます。

○設計・施行の幅が広がることによって新技術等への対応が可能となる。
○コスト縮減や工期短縮の実現。
○国際基準との整合が図れる。
○設計の手段を問わないため、要求性能を満たしていることを証明しなければならない。
○技術者の責任が増大する。

性能の検討手段の代表的なものとしてFEM解析法があります。


FEM(Finite Element Method)解析とは?

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FEM解析(有限要素法)は、地盤や構造物を有限の要素に分割して応力の分布や変形等を近似し解析する方法です。
FEM解析の有効性

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物理現象を予測するためにはその現象をあらわす微分方程式(弾塑性体の構成・応力のつりあい式等)を解くことが必要です。

FEMとは差分法と同様に、これらの方程式を満たす近似解を求める手段の1つです。

これらの解を求めるには膨大な計算量が必要ですが、近年のコンピュータの高速化や低価格、汎用プログラムの開発等によって身近なものとなってきています。

FEM解析を用いれば、設計した構造物の性能を検討することが出来ます。
FEM解析は理論解析・実験に次ぐ計算科学工学的手法(数値シミュレーション)の1つの強力な武器となっています 。
性能規定の導入状況
・コンクリート標準示方書
・道路橋示方書
・舗装の構造に関する技術基準
・防護柵の設置基準
などが改定されています。
国土交通省「土木・建築にかかる設計の基本」からわかること
 平成14年10月21日、国土交通省は「土木・建築にかかる設計の基本」を公表しました。これにより今後の国土交通省関連の設計にかかわる技術標準は、この「土木・建築にかかる設計の基本」の考えに沿って整備・改訂されることになります。
 ではこの「土木・建築にかかる設計の基本」の考えに沿った設計とは一体、どういうものなのでしょうか?どのような構造物を目指すことになるのでしょうか?

 そこで、「土木・建築にかかる設計の基本」に関して、要点・キーワードを紹介します。
 ただし、詳細内容については、一度「土木・建築にかかる設計の基本」を熟読し、十分ご理解ください。

▽国土交通省「土木・建築にかかる設計の基本について」
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/13/131021_.html
目次
はじめに

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 日本においては、種々の構造物の設計にかかわる技術標準が土木・建築という分野別に、あるいは鋼構造物・コンクリート構造物ごとに発達してきました。 この分野別、各構造物ごとの技術標準の存在は、最適設計を行うという面では効果的でしたが、近年において公共事業の説明性の向上といった面から阻害要因ともなっています。

 さらに、現今の国際状況下では、WTO(国際貿易機構)協定の政府間調達規定により政府機関においては国際規格の尊守が求められ、ISOまたは、CEN(欧州標準化委員会)規格が注目されています。 このように国際的に策定が進められているこれらの規格においては、土木・建築といった分野の違い、鋼・コンクリートといった構造種別に関係なく共通する事項は共通に扱い分野及び構造種別に依存する部分はそれぞれの中で規定していくといった基本的方向性が見られます。

 「土木・建築にかかる基本」の記載内容は、技術の国際的な標準化への対応を意識したのもので、分野の枠組みを超えた議論が今後も継続的になされ、国際性を有した技術標準をつくりあげることが望まれています。

1 総則

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1.1 適用
 
 「土木・建築にかかる設計の基本」は、構造物全般を対象とし、構造設計に係わる技術標準の策定・改訂の基本方針を示すものである。
 構造物の安全性等の基本要求性能と構造物の性能に影響を及ぼす要因を明示的に扱うことを基本とする。
 要求事項を満たすことの検証方法として信頼性設計の考え方を基礎とする。

(1) 「土木・建築にかかわる設計の基本」は、土木・建築両分野において設計される構造物全般を対象とする。構造物の定義は「目的とする機能を持ち、作用に対して抵抗することを意図として人為的に構築されるもの」である。
(2) 「土木・建築にかかわる設計の基本」は、「Code for Code-Writers」(包括的設計コード)という位置付けで、選択に係わる方針は個別の構造物の設計技術標準の策定・改訂における議論にまかせている。
(3) 構造物の設計では、安全性、使用性、修復性を考慮した「構造設計」のみに限定し、構造設計における景観、自然環境、経済性等は言及しないとしている。
(4) 透明性、説明性を確保するために、基本要求性能及び性能に及ぼす要因を明示することを基本とする。
(5) 「信頼性設計の考え方を基礎とする」ということの意味と効果、そのためになすべきことについて説明している。
1.2 設計の基本
 
 供用期間を決めること、構造物の基本的要求性能を「安全性」「使用性」「修復性」を確保することが設計の基本となる。

(1) 設計供用期間の設定
(2) 基本的要求性能(「安全性」、「使用性」、「修復性」)。
(3) 安全性の概念は「人の安全」を基本とする。
(4) 特に地震後の施設・建築物の機能回復を考慮して「修復性」を基本的要求性能に入れている。
(5) 構造ロバスト性の確保(局部的な破壊が構造システム全体に致命的な影響を与えない)も考慮すべきである。
2 限界状態

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2.1 一般
 
  検証の対象とする限界状態としては、終局限界状態(安全性)、使用限界状態(使用性)、および修復限界状態(修復性)があり、設計対象構造物の目的等に応じて限界状態を選択する。

(1) 土木の技術標準では、疲労限界状態を終局限界状態、使用限界状態と並列的に扱っているものもあるが、「限界状態が発生する作用の違い」として、疲労については終局限界状態および使用限界状態の中で扱う。
(2) 設計に際し、「終局限界状態(安全性)」「使用限界状態(使用性)」「修復限界状態(修復性)」の全てを考慮する必要はなく、各構造物の特性に応じて限界状態を選択する。
(3) 各構造物ごとに検証する限界状態を変えることができる。
2.2 終局限界状態
 
 終局限界状態とは想定される作用により生ずることが予想される破壊や大変形等に対し、構造物の安定性等が損なわれず、その内外の人命に対する安全性等を確保しうる限界の状態のことをいう。特定作用限界状態(疲労限界状態、耐久限界状態、耐火限界状態)を含む。 

(1) 特定作用限界状態(疲労限界状態、耐久限界状態、耐火限界状態)は、終局限界状態を構成するものである。
(2) 特定作用限界状態として疲労限界状態等を明示的に扱うのは、構造物によって「疲労破壊」等が支配的な条件になることがあるためである。
(3) 安全性の概念は「人の安全性」を基本とし、終局限界状態として「構造物内外の人命の安全性等を確保しうる限界の状態」としている。
2.3 使用限界状態
 
 使用限界状態とは、想定される作用により生ずることが予測される応答に対して、構造物の設置目的を達成するための機能が確保される限界をいう。なお、以下の特定作用限界状態を含む。

疲労限界状態(変動作用が繰り返すことに伴う疲労損傷)
耐久限界状態(環境作用に伴う損傷)
耐火限界状態(火災に伴う損傷)
2.4 修復限界状態
 
 修復限界状態とは、想定される作用により生ずることが予測される損傷に対して、適用可能な技術でかつ妥当な経費および期間の範囲で修復を行えば、構造物継続使用を可能とすることができる限界状態をいう。

(1) 修復限界状態は、使用限界状態と終局限界状態の間に位置付けられる。
(2) 修復限界状態は、土木構造物において着目している機能回復に対応する状態と、建築物において着目している財産性の保全という状態を規定する。
短時間に機能を回復させ、一時的な施設利用を行うが、最終的に建設し直す状態は、修復限界状態に含めない。
(3) 「適用可能な技術でかつ妥当な経費」としたのは、一定範囲内の費用という点を考慮に入れているということである。
(4) 修復性に関しては、当面は地震後の構造物の復旧あるいは修復を考える必要のある構造物の設計における検証が中心となる。
(5) 現時点で、土木・建築両分野にわたって、修復限界状態として明示的な扱いの必要性があるのは地震作用に対するものに限定される。「特定作用限界」の枠組みは、修復限界状態に対しては適用されていないが、今後、修復限界状態に対しても適用される。
3 作用

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3.1 定義
 
  作用には、直接作用(構造物に集中あるいは分布して作用する力学的な力の総称)、間接作用(構造物に課せられる変形や構造物内の拘束の原因となるもの)、環境作用(構造物の材料を劣化させる原因となるもの)がある。
  また、荷重とは、構造物に働く作用を必要に応じて、構造物の応答特性を評価するモデルを介して、断面力や応力、変位等の算定という設計を意図した静的計算の入力に用いられるために構造物に直接載荷される力学的力の集合体に変換したものをいう。

(1) 「作用」「荷重」の明確化。共通的な議論には作用という概念を基盤とすることにしている。
(2) 国際標準の「作用」と日本で用いられている「荷重」の間の区別する一線を引くことは難しく、統一的な指針を与えることは目的とせず作用として定義する範囲をごく狭いものに留める。
(3) この定義では、作用は、荷重に変換してから構造物の応答特性を評価するモデルへ入力するものもあれば、直接入力するものもある。変位を作用として直接考慮する場合には、「荷重」の設定は行わないことになる。
(4) 間接作用としては、温度変化に伴う膨張・収縮、プレストレス、沈下等が挙げられる。
(5) 環境作用については、ISO2394 は作用ではなく環境の影響として扱われているが、ここでは使用性、安全性を検証する上で考慮するものとして作用の中に含める。
3.2 作用の分類
 
 作用は「永続作用」、「変動作用」、「偶発作用」に区分する。
 
(1)永続作用
 構造物の設計供用期間を通して絶えず作用するであろう作用でその時間的変動が平均値に比較して小さいもの。または、その大きさの変動が、一定の限界値に達するまでは、設計供用期間中に一定傾向で単調に増加もしくは減少する傾向にある作用。
(2)変動作用
 その大きさの設計供用期間内の変動が平均値に比べて無視できず、かつ一方向的な変化をしない作用
(3)偶発作用
 確率統計的手法による予測は困難であるが、社会的に無視できない作用。

(1) 永続作用と変動作用の違い、偶発作用についての説明。
 永続作用:構造物の自重、プレストレス等、
 変動作用:風、雪、地震動等、
 偶発作用:落石、衝突、最大級地震動,断層変位等
(2) 多くの構造物とは異なり、土石流対応施設等は、「発生頻度が小さな作用に対して安全であるかを検証する」という設計ではなく、「社会的に備えなければならないと考えられている例外的な作用(偶発作用)に対して機能する」設計がなされ、偶発作用は社会的に対応するリスクといった概念で考える。
(3) 地震動の扱いを作用は変動作用として位置づけることを基本と考える。
(4) 日本や米国で取り入れられている最大級の地震動のように、確率論的な扱いが困難な場合には、偶発作用として扱う場合もある。
3.3 各作用の扱い
 
  社会的に対応の必要があると判断される作用および構造物の所有者が必要と判断した作用を対象に設計を行う。
  変動作用について、統計的な評価が可能なものは、基準期間を定め再現期間で表す再現期待値として示すか、あるいは非超過確率を明示するよう努める。偶発作用については統計的な評価が行えないが、作用として理解が容易な方法で明示するよう努める。

(1) 設計の対象となる各作用は、社会的な対応の必要性と構造物の所有者の判断に基づく。
(2) 変動作用の特性値については、基準期間を定め再現期間で表わす期待値として示すか、あるいは非超過確率を示すように努める。
(3) 作用に対する基準期間という概念は、データから得られる確率モデルを利用するための一つの便法である。基準期間は終局限界、使用限界で異なったり、また、検討法に部分係数法を採用するかどうかによって異なる場合があり、合理的な設計をおこなうためには設計供用期間との適切な関連づけが必要である。
(4) 設定地震動レベルに対して、その信頼性水準に関して明示するように努める。
3.4 荷重の組み合わせ
 
 荷重の組み合わせの基本的原則は、永続荷重(変動荷重あるいは偶発荷重)に加えて支配的な荷重が極大設計値(フラクタイル値、社会的目標値等)をとるものとしてものとして設定する。その他の荷重(変動荷重あるいは偶発荷重)は支配的な荷重に組合せるのに適切な、より発生しそうな値とする。

(1) ある荷重が作用することにより、別の荷重の影響が喪失するような場合には、荷重の組合せを考えなくて良い。
通常、設計実務上では「荷重の組合せ」として扱う場合が多いが、劣化環境下での直接作用の影響等、「作用の組合せ」として扱うことが必要な場合もあり、適切な方法で検討すべきである。
(2) ここに規定した荷重の組合せは基本原則で全ての構造物に適用する必要ななく、ダム(洪水調整)、高潮堤防、ロックシェッド、土石流対応施設等のように例外もある。
(3) 荷重の組合せを考えなくてよい場合の例としては、温度荷重によりコンクリート構造物に生じた応力が地震時に生ずるひび割れや降伏により解放されるような場合などがある。
4 耐震設計

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4.1 耐震性能
 

 耐震設計では設定した耐震性能を明示し、それに対する地震動レベルを設定する。
 設定する耐震性能は、設計対象とする構造物の目的に応じて終局限界状態、使用限界状態、修復限界状態の内から適切なものをひとつあるいは複数選択する。
 地震動のレベルは、重要度を含む構造特性を考慮して決定し、(表1の)標準的な耐震性能マトリクスのいずれかに該当するものであることが基本である。
 地震動のレベルは、対象構造物が設計供用期間中に経験する目安の頻度として評価した結果で示すことを基本とする(変動作用としての扱い)が、対象構造物が設計供用期間中に経験する目安の頻度として示すことが不適切な場合はこの限りではない(偶発作用としての扱い)。

表1 標準的な耐震性能マトリクス


(1) 耐震設計は日本の構造物設計では重要な事項であること、その技術を国際的に普及するという観点から独立した章として扱う。
(2) 表1の標準的な耐震マトリクスは地震動レベルと耐震性能の基本的な枠組みを与えるものであり、設計対象とする構造物の特性に応じて耐震性能マトリクスを選択する。
(3) (表1の)地震動レベルは変動作用として設計対象構造物が供用期間中に経験する頻度により表示することを基本としている。最大級の地震動という概念(変動作用ではなく偶発作用としての扱い)によって明示する場合もある。
(4) 地震動を偶発作用として扱う場合は、構造物の使用目的、設計許容期間、他の作用などの設計条件を含めて信頼性水準に関して説明性を有することが望ましい。
(5) 「対象構造物がその設計供用期間中に経験するのはごくまれであると評価される地震動」と「対象構造物が経験するものとして最大級と評価される地震動」はいずれも極大地震動レベルとしての意味合いがあるが、多くの場合、構造物の目的、重要度、設置場所等に応じて択一的に選択してよい。偶発作用として想定する「最大級地震動」は、確率的統計扱いが困難であるだけでなく、「まれ」ともいえず、生起頻度の面で変動作用のいずれかのレベルと対応付けるのは困難である。このような場合、一般に要求するものではないが、両方のレベルに対する検証を行うこともある。
(6) 「対象構造物がその設計供用期間中に経験する頻度」と想定していることは。必ずしも、設計供用期間中に経験する頻度により設計対象とする地震動レベルを設定することを意味していない。「設計供用期間での経験がごくまれ」と評価できる場合もある。
(7) 「対象構造物がその設計供用期間中に経験するのは「まれ」(ごくまれ)あると評価される」で地震動の具体的な規模は、設計対象構造物の設計供用期間や重要度等により変化させることが可能である。「まれ」(ごくまれ)の考え方は、個別の構造物で説明する必要がある。
(8) 「設計期間供用中に数度は経験すると評価される地震動」に対して、「機能が確保されている」とすることが標準的であると考えられるが、地域によっては「修復限界」「終局限界」となる場合があり、このような場合でも地震動レベルと耐震性能を表示することが有用である。
(9) 地震時の耐震性能については、使用限界、修復限界、終局限界があるが、対象構造物によってはさらに細分化した耐震性能を規定してもよい。
4.2 地震動レベルの明示方法
 
 設計上想定する再現期間あるいは非超過確率により明示することを基本とする。(変動作用としての扱い)
 地震動を偶発作用として扱う場合には、最終的に設計で採用した地震動の特性値について、その信頼性水準に関して説明性を有するものとする。

(1) 地震動の明示方法は再現期間等を用いた確率的な表現方法をすることを原則としている。
(2) 地震動の設定方法は必ずしも確率に基づくものでなくてもよく、設計上考慮すべき地震動レベルを直接的に設定する方法もある。
(3) 地震動を偶発作用として扱う場合、再現期間、非超過確率でも評価することはできないが、その信頼性水準に関しても説明できることが望ましい。
5 性能設計の検証法

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 性能の検証の手法については様々な手法が提案されてはいるが、特定の手法を定めるものではない。将来的に設計に関する技術標準に部分係数法のような信頼性を考慮した検証方法を適切に取り入れることを推奨する。

(1) 国際的には、信頼性設計に基づく方向に向かっている。公共構造物については、構造設計においても透明性、説明性が求めらており、部分係数法を有力な手法として推奨する。この部分係数法は信頼性設計法のレベルに相当する。しかし、レベルでもよい。
(2) 部分係数法の導入により、変動作用、永続作用に対する要求水準が異なる場合でも対応できる。
(3) ISO2394での部分係数の設定例が与えられている。

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