現在、国土交通省の水管理・国土保全局が2年前から実施している(革新的河川管理プロジェクト)の本年度版の「簡易型河川監視カメラ」プロジェクトに弊社も参加し実証実験中です。
その中で、
「夜間の照明のほとんどない河川をどうやって写すか?」
という非常に難しい技術的壁があります。
国土交通省がクリアする指標として掲げている基準に、
「月明かり(満月:約5ルクス)程度の明かりで、河川又は周囲の人物、物体等を認識できること」
というのがあるからです。
既に3年程前から監視カメラ開発は行ってきましたが、夜間は補助照明で対処してきました。
その為、上記仕様を見た時は少々びっくりしました。
「そんな高感度のセンサの付いたカメラを入手できるのだろうか?」
と必死で高感度タイプの工業用カメラを探しまくるうちに、次第に以下の様な状況が解ってきました。
(1)イメージセンサのシェアについて
現在主流のCMOSタイプイメージセンサの売り上げシェアは現在ソニーが断然トップで、
1位 |
ソニーセミコンダクタ |
約40% |
2位 |
(米)オムニビジョンテクノロジー |
約16% |
3位 |
(韓国)サムスン電子 |
約16% |
4位 |
(米)オン・セミコンダクター |
約4% |
5位 |
(中国)ギャラクシーコア |
約4% |
(注)2016年段階
となっています。
奇妙なことに、販売シェアではソニーがダントツなのですが、出荷ユニットシェアになると、5位の(中国)ギャラクシーコアが1位で、だいたい15%から20%前半で1位から4位までが横並びとなっているそうです。(Business Journal HPより)
(2)高品質なソニー製イメージセンサ
センサシェアの売り上げでは圧倒的なソニーが、出荷ユニット数では競合他社とそれほど変わらないという奇妙な現象を見れば、ソニー製イメージセンサが高くても売れているという状況が推測できると思います。
実際最近のドライブレコーダーや監視カメラの高品質な製品には
「ソニー製 IMX322 搭載」とか
「ソニー製 IMX291チップ 搭載」
というような宣伝文句をよく見かけるようになりました。
IMX322やIMX291というのは、ソニー製の夜間超高感度タイプのイメージセンサで、いまのところ他社の追随を許さぬダントツ性能のイメージセンサです。
youtubeでキワードを「IMX322」「IMX323」「IMX291」等で試しに検索してみて下さい。
数多くのイメージセンサ性能の比較動画が出てくるはずです。
(3)スマートフォンとドライブレコーダーの需要が小型イメージセンサを飛躍的に進化させた
イメージセンサと言ってもその種類は数多くあります。
一番大きなものは中型デジタルカメラに使われている(43.8x32.8mm)、次に大きなフルサイズデジタル1眼レフに使用されている(36×24mm)、APS-Cサイズの(23.6×15.8mm)と準に小さくなってコンパクトデジカメでは(1/2.3インチ 6.2×4.7mm)、スマートフォンやドライブレコーダではおおよそ(1/3インチ 4.8×3.6mm)が大量に生産されています。
前述のIMX322やIMX291もそれぞれ 1/2.8インチ、1/2.9インチとおおよそ1/3インチのカテゴリーに属します。
これらのスマートフォンやドライブレコーダーや監視カメラ向けに大量に生産される(1/3インチ)タイプの小型センサは世界的な需要の伸びとそれに伴うメーカー間の技術競争で著しく性能向上を遂げました。
特にドライブレコーダーや監視カメラは暗視性能が重視されますので、その要求に対応できるセンサ開発も急ピッチで加速しました。
というわけで、この(1/3インチ)タイプのイメージセンサは現在最も進化を遂げたイメージセンサ言えるでしょう。
(4)河川監視カメラ用のカメラモジュールとイメージセンサ
弊社でも当初は比較的安価な(米)オムニビジョン製のセンサを搭載したUSBカメラモジュールを入手しテストをしていましたが、昼間は比較的良好な画像が取得できるのですが。
夜間の暗視性能が不十分でした。そこで現在では上記ソニー製センサを搭載したものでテストを行っています。
あと、日本製の市販USBカメラモジュールの安価なものは、イメージセンサ名まで明記していません。
そこで工業用の製品を探してみましたが、価格が軽く7万〜10万程度するものが多く、同等性能比でもっと安価なモジュールがないかをずっと探し続けてきました。
(5)侮れない性能のELP社製USBカメラモジュール
弊社では中国製の安価なUSBカメラモジュールということで、ELP社製USBカメラモジュールをテスト購入し性能テストを2年前から行ってきましたが、今ではその特徴さえ把握して使用すれば実用上全く問題ないということが解ってきました。
その特徴をいくつかあげると
「長所」
・性能に比べて安価である。
・イメージセンサの型番が明記してある。
・組み込み用に必要なLinux用ドライバが標準で装備されている。
・レンズの種類が豊富で超広角から準望遠まで選択することができる。
・最新のイメージセンサへの対応が早い。
・組み込み用基板タイプと簡易ハウジングタイプが選択できる。
「短所」
・オートフォーカス機能がない製品が多い。
・オートズーム機能がない。
・最新機種の入手は国外の販売サイトから購入する必要がある。
▽ELP社のホームページ
http://www.elpcctv.com/
(6)ELP社製 USBカメラモジュールをいくつか紹介します。
「ELP-USBFHD06H-BFV」(80$)
・USB 2.0
・イメージセンサ:IMX322
・2.24Mピクセル
・2.8mm - 12mm 手動ズームレンズ付き
・最小感度:0.01 lux
・ハウジングタイプ
「ELP-USBFHD06H-FV」($64.99)
・USB 2.0
・イメージセンサ:IMX322
・2.24Mピクセル
・2.8mm - 12mm 手動ズームレンズ付き
・最小感度:0.01 lux
・ハウジング無しタイプ
「ELP-USBFHD01M-L180」(45$)
・2Mピクセル 1920 x 1080P
・180度魚眼レンズ付き
・ハウジング無しタイプ
▽ELP社USBカメラモジュール紹介ページ
http://www.webcamerausb.com/