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シリーズコラム 「よろずIT・ネットワーク情報」 |
【第46回】重量は半分、寿命は15年、コストはリチウムイオンの半分のバイポーラ型鉛蓄電池登場! |
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先日会社のUPSのバッテリーが警告音を連日発するようになって、バッテリー交換を行った際、交換したバッテリーの重さがあまりに重すぎた為交換に苦労したことから、少し古い情報で恐縮ですが、あらためて古河電工が開発に成功した画期的な、「バイポーラ型鉛蓄電池」を今回はご紹介させていただくことにしました。
【1】 | 今までの鉛蓄電池とバイポーラ型鉛蓄電池の構造はどう違うの? |
鉛蓄電池といえば19世紀半ば過ぎに発明されてから今日まで最も一般的に使用されてきた蓄電池の代表ともいえる存在で、多くの車やソーラー発電の備蓄、水中を走る際の潜水艦の動力までありとあらゆる用途につかわれてきました。その構造は下記の(図1)のように希硫酸の溶液の中に、プラス極板とマイナス極板と呼ばれる鉛(なまり)でできた板が、セパレータと呼ばれる隙間のある板を挟んで積層されている構造となっています。つまりプラス極もマイナス極もどちらも鉛の板でできており、それが2枚とも希硫酸の中に浸された構造となっています。
(図1)鉛蓄電池の構造
(電池工業会HPより)
今回古河電工が実用化に成功したバイポーラ型鉛蓄電池は一枚の薄い鉛箔の片側面に樹脂プレートを接合した構造の電極の表(樹脂プレート側:プラス)と裏(鉛箔側:マイナス)を有する構造となっています。
(図2)バイポーラ型鉛蓄電池の構造
(古河電池株式会社HPより)
この樹脂プレートと鉛を薄くした鉛箔を接合するという超難解な作業を、古河電池株式会社で長年金属と樹脂素材を組み合わせる電線やケーブルなどの製品開発で蓄積してきた技術力と、独自のメタル・ポリマー素材力を活用した結果として樹脂プレートに薄い鉛箔を接合した電極基板の構造を実現することに成功したそうです。
(図3)バイポーラ型鉛蓄電池の構造-2
(古河電池株式会社HPより)
【2】 | 従来の鉛蓄電池とバイポーラ型鉛蓄電池の性能はどれくらい違うの? |
古河電池株式会社の公表値では
(1)寿命:4500サイクル(1日1サイクルで約15年)
(注)サイクルとは1回の充放電のことを言います。
(2)体積エネルギー密度:従来の鉛蓄電池の1.5倍
(注)エネルギー密度が1.5倍なら同一性能の電池の大きさは約67%の大きさになります。
(3)重量エネルギー密度:従来の鉛蓄電池の2倍
(注)エネルギー密度が2倍なら同一性能の電池の重さは1/2%の重さになります。
通常のリチウムイオン電池と比較しますと、
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バイポーラ型鉛蓄電池 |
リチウムイオン電池 |
(1)寿命 |
4500サイクル |
600サイクル |
(2)体積エネルギー密度 |
123Wh/L |
520Wh/L |
(3)重量エネルギー密度 |
80Wh/Kg |
200Wh/Kg |
(4)コスト比 同一電力容量換算 (電力貯蔵用) |
1/2 |
1 |
となるそうです。
リチウムイオン電池は確かに体積や重量比ではバイポーラ型鉛蓄電池の2倍以上の優位性があります。しかし残された資源量の点やリサイクル技術の点ではバイポーラ型鉛蓄電池のようには今まで長い間使用してきた鉛蓄電池のリサイクル資源やリサイクルシステムをそのまま活用できるということと比較すると不安要素が少なからずあります。
また、据え置き型の蓄電用途では体積比や重量比よりもコスト比のほうが重視される傾向がありますから、例えば家庭用ソーラー発電の据え置き型蓄電ユニットとか大規模ソーラー発電の電力平滑化用途などでは、リチウムイオン電池に比較してコスト面で有利となる可能性は十分あります。
古河電池株式会社の発表によると、来年2021年にサンプル出荷を開始し、再来年の2022年から量産体制の予定だそうです。
現在、ソーラー発電の備蓄用ディープサイクルバッテリーの鉛蓄電池(100AH)が約\17,000程度で、同じ容量の3000サイクルのリチウムイオンタイプが\135,000ほどしています。あと1年と少し待てば、6万円台で同容量の4000サイクルタイプが鉛バッテリーの約半分程度の重さで手に入るとすれば、かなり需要があると思われます。