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 シリーズコラム 「よろずIT・ネットワーク情報」 
【第51回】日本の自動車産業の将来を脅かし始めたチャイナEVへの対抗策はあるのか?
 
 前回と前々回では中国製の50〜60万円で買えるEV(電気自動車)や佐川急便がベンチャー企業と次の配送用EVを共同開発し中国メーカーに製造委託する話やインドでは日本メーカーのEVリキシャがシェアNo1で奮闘しているお話をしましたが、今回はこれからの世界のEVの動向とそれに日本の自動車メーカーがしっかりと対応できるのかどうかについて話してみたいと思います。
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【1】世界のEVの潮流について、特に格安EVに関してですが、日本メーカがほとんどやってこなかったローコストバッテリーと電池交換式EVに大きくシフトしています。

 前々回の「50万円で買えるEV」にしても、前回の「EVリキシャ」にしてもいづれも一回の充電で走れる距離は100Km程度と日本の自動車メーカーからすれば殆ど注目に値しないスペックのEVと言えるでしょう。
 ところがその取るに足らない50万円のEVがあの日本メーカーがライバル視している「テスラ」のEVの販売台数を追い越し、今年の3月に全中国で1位になったのです。
 この決して無視できない中国市場での出来事の原因を探ってみると、次のような驚くべき中国側の取り組みが浮かび上がってきました。
(1) 最先端のリチウムイオンは高いので、ソーラー発電用のリン酸鉄イオンリチウムイオン電池を採用。
(2) 航続距離はせいぜい150km程度にする。
(3) バッテリー充電時間も急速充電にこだわらない。
(4) 短い航続距離や急速充電できない欠点を、国策として「バッテリー交換ステーション」を普及させることでカバーする。
(5) 中国の国策として電池交換式EVの国家基準を作成
(6) バッテリーはすべてサブスクリプション方式(バッテリー交換ステーションで交換して使用した電力のみの代金を払う方式)でEVの初期購入時に高価なバッテリー代を含まずに安価でEVを販売することが可能。
(7) バッテリー交換時間も僅か20秒程で交換できるユニットが開発されている。
(8) 既に世界のEV市場の半分以上を中国市場が占めている。

(関連リンク)
 中国、電池交換式EVの国家基準を発表(日経 XTECK HPより)

 もう充電しません!? EVの“要”めぐる潮流(前編)(NHK NEWS WEBより)

 EVのバッテリー交換方式が復活する? 充電を「速く安く便利」にする中国メーカーの挑戦(WIRED HPより)

【2】日本のメーカーが航続距離や急速充電にこだわり「テスラ」等の高額EVをライバル視している間に、中国では全く別のアプローチで「EV革命」が国策で行われてきました。

 中国政府も従来のディーゼルやガソリン車では欧米や日本の自動車に太刀打ちできるとは、多分考えていなかったと思われます。
 しかし構造が単純なEVならば、スタートラインがほとんど同じでかつ中国国内でリチウムイオン電池の量産化や低価格化も既に達成している現在、国策で前述の様な電池交換式EVを普及させれば、技術的に先を行く自動車先進国を少なくとも低価格車普及車カテゴリーでは十分追い抜けると考え、数年前から強力にその政策を押し進めつつあります。
 これに対してわが国の自動車メーカーや国の政府機関では、ハイブリッド車の開発は世界一進んでいますが、純正EVの量販は日産自動車と他社がほんの僅かという状態で、ローコストな電池交換式EVのについては販売も実証実験さえされていない状態です。

【3】実はわが国でもメーカーや石油商社、国の機関でこのような動きはわずかながらあったことが、よく探索してみて見つかりました。
(1) 環境省(一部 経済産業省 連携事業)

 バッテリー交換式EVとバッテリーステーション活用による地域貢献型脱炭素物流等構築事業(環境省 HPより)
(2) メーカーの事例 (少ないですが、2019.03.11の記事にありました。)

 トヨタとホンダが参入へ、電池「交換式」で超小型EVは復活するか(日経 xTECH HPより)
(3) ENEOS、EVのバッテリー交換サービスの実用化めざす(レスポンス HPより)

 (1)の国(環境省)の事業は「電池ステーション」を設けており、一見中国のやり方に似ているが、目的が「脱炭素化」に主眼を置いているので世界のEV市場戦略的な観点から程遠いし、予算規模も中国とは全く比較になりません。

 (2)のトヨタとホンダに関するの2019.03.11の記事ですが、既にこの頃からトヨタやホンダでは電池交換式EVへの取り組みがあったという事はわかったのですが、それから2年後の今、どういう対策や開発を行っているのかは今のところ不明です。

 (3)のENEOSのEV向けバッテリー交換サービス実用化の記事は今年の6月19日の新しい記事で、今後日本のガソリンスタンド全体に影響するかもしれない注目すべき記事だと思います。

【4】電池交換式EVの標準規格を早く作れ!
作れなければ独自方式の電池交換式EVでもいいから、ガソリン供給業者と共同で開発してほしい。

 日本のEV技術は世界一と思っていましたが、このままでは普及車種に関しては中国の後塵を拝するであろうことは容易に想像できる状態になってきました。
 このまま何も対策をとらずに今まで通り航続距離や急速充電にこだわり続けた戦略では、10年先日本の自動車産業がどうなるかさえ不安に感じられます。

 構造が単純な液晶テレビが出てくる前までは、日本のテレビ産業は世界一でした。ブラウン管製造技術は車のエンジンを作るのと同じように高度の技術蓄積が必要だったからです。
 同じように、構造が単純な電池交換式EVも液晶テレビが日本以外の国で安価に量産化されたのと同様な道を歩む可能性が十分あります。

 現在日本で一番安いEVは日産リーフSの40KWタイプで価格が3,326,400円です。
 国からの補助金と自治体の補助金等を利用するとおおよそ140万〜150万程安く購入可能ですから、200万程度で購入可能です。
 実は、この車両価格3,326,400円の内で40KWタイプバッテリーを単体で新品交換するとなんと82万円するそうです。

 日産リーフのバッテリー交換プログラムがスタート(LE VOLANT CARS MEET HPより)

 あくまで私の想定ですが、日産とENEOSと日産と住友商事の合弁会社であるフォーアールエナジー社が提携して日産リーフ用バッテリー交換サービスを行い、日産はバッテリーをすべてサブスクリプション方式(バッテリー交換ステーションで交換して使用した電力のみの代金を払う方式)でバッテリー価格分の40〜60万程度差し引いた価格のEVを発売すれば、おおよそ150万程度で購入できるEVが出現することになります。自分で充電するよりも多少費用はかかりますが、それでもガソリン車よりも燃費が半値程度になるはずですから、バカ売れするはずです。

 この案は私の単なる妄想ですが、マジで中国のバカ安EVに対抗する仕組みを真剣に全メーカー、国、石油供給業者、バッテリーメーカー等で考える必要があると思います。

 ライバルは「テスラ」ではなく「China」なのです。  
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