もっとも、彼らにしても花を見てもらわないとその存在に気がついてもらえない、と言う点では次の達人たちが一歩上をいっているのかもしれない。春の沈丁花、初夏の梔子(クチナシ)、夏のユリ、初秋の金木犀、などはいずれも芳しい臭いで嗅角に訴え、“私がいるのはここよ”と観衆の足を運ばせるほど強烈なアピールをしている。女性が好む香水に花の臭いのするものが多いのも頷ける。
一方、晩秋に見事な彩りを見せる銀杏も自己主張の強い木であるが、雌木の熟した実が放つ異臭は食材としての魅力はあるものの残念ながら引き寄せる魅力には欠ける。勿論、観衆を遠ざける力はあるのだが……。当然ながら、香水には使われていない。
晩秋の季節の個性派は、楓とドウダンツツジが双璧だろう。土塀に絡まった蔦も捨てたものではないが、他を圧倒する鮮やかさでは前者にやや分がありそうだ。特にドウダンツツジは、春の愛らしい慎ましやかな花からは想像できないほど、秋の自己アピールは強烈だ。 |