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「遠州森町」知っていますか?

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   2003年10月10日

 散歩コースの畑にある柿の実が色付いてきた。日に日に美味しそうな橙色が濃くなり、目を楽しませてくれている。以前どこかで柿の番付を目にしたことがあるが、次郎柿と富有柿が東西の横綱らしい。どちらが東かは忘れたが、北陸では富有柿が多いことからすると、東西ではなく南北なのかもしれない。何れにして、もうすぐあの大きくて甘い、しかも種のない次郎柿が食べられる。その次郎柿の原木(静岡県指定文化財)があるのが、私の田舎「遠州森町」である。 
  遠州森町と言っても静岡県に住んだことの無い人はご存じないと思うが、「森の石松」の出たところと言えば『おお!知っているぞ!』と相槌を打ってくれる年配の方も多いのではないかと思う。幼い頃ラジオから流れてくるのを聞いた覚えがある広沢虎造(浪曲家、1899〜1964)の浪花節「森の石松三十石船」で、『──遠州森町良い茶の出どこ、娘やりたやお茶摘みに──』と名調子で謡われた所である。若い方でも、日韓ワールドカップで日本チームが記者会見を開いたところと言えば、分かってもらえるだろうか。宿舎となったゴルフ場は、森町との境界近く袋井市にある。
 

 
  手元に『時刻表地図から消えた町』(集英社、福田宏年著、1980年)となんとも寂しい題名の本がある。この本の中に、今住んでいる石川県の西端に位置する大聖寺や初めて訪れた東北で一ヶ月ほど過ごした秋田県の矢島など、地方の小さな町11町と一緒にその森町が紹介されている。本の中では「筋かったか森の町」(子供の頃の記憶では、「曲がりくねったか森の町」と言っていたような気がする)のタイトルで紹介されているが、確かに道はジグザグに曲がっている。 
  森町は、太田川(広島市を流れる太田川ではない)沿いに秋葉街道の宿場町として栄えた町で、本の中にも書かれているが江戸時代から古着市場として全国的に知れ渡っていたようである。今風に言えば「リサイクル市場」であろうか、正に時代を先取りした中心地だったわけである。この時代を先取りした町で、年に一回、時代を遡る一大イベントが行われる。11月1日〜3日に行われる『森の祭り』が、それである。
  

  
  小・中学校の頃、稲刈りの季節になると町中から祭囃子を練習する笛の音や太鼓の響きが聞こえてきた。胸がわくわくする季節の到来である。記憶によれば確か11月1日は半日で休み、2日は休校となり、3日は分化の日で休み、祭囃子が聞こえ始めると何となく勉強が手につかなかったことを良く覚えている。兎に角、子供から老人まで森の町民(特に男)は祭りが大好きである。とうとう、『遠州 森の祭り』(森の祭り祭典本部発行、非売品、1989年)と言う本まで出版してしまった。
  森の祭りは喧嘩祭りと呼ばれ、屋台同士の激しい練りや打ち鳴らされる太鼓は大変迫力があり、一見の価値がある祭りだと思っている。一時中断を挟んではいるが江戸時代から続く祭りは、「筋かったか森の町」が祭り一色になる一大イベントであり、失われていく地方の活力を思い出させてくれる貴重な文化でもある。また、遠州の祭りは森で終わると言われるように、遠州路に冬の到来を告げる祭りでもある。

  田舎を離れて早いもので35年になるが、祭囃子を聞くと一瞬のうちに35年前に戻ることができ胸が騒ぐのは、刷り込みの力なのだろうか? それとも只単に祭りが、騒ぐことが好きと言うことなのだろうか? 本人としては、前者のつもりでいるのだが、家族の見方はどうも違うようだ……。
 35年の罪滅ぼしと言うわけではないが、少しだけ田舎の宣伝をさせて頂くことにする。
  

【特 産 物】 次郎柿、お茶(親父の実家でも作っている)、温室メロン、レタス、森山焼
  最近、柿ワインメロンワインを販売し始め女性に人気だそうである。
【名所旧跡】 アクティ森(陶芸や草木染などが体験できる、http://www.actymori.jp/
  小国神社(「十二段舞楽」が国の無形文化財に指定されている) 
  天宮神社(「十二段舞楽」が国の無形文化財に指定されている)
  山名神社(国の指定文化財で「飯田の祇園祭」と呼ばれる祭りがある)
  大洞院(石松の墓)、友田家(国の重要文化財)


  こうして改めて書き出してみると結構誇れるものがあることに気がついたが、森町のホームページ(http://www.town.morimachi.shizuoka.jp/kankou/f-kankoutop.html)には他の見所も紹介されているので、興味のある方は是非アクセスし、これからの行楽シーズンを森町で楽しんで頂きたい。なお、柿ワインとメロンワイン(ジューシーで甘口)は電話注文(0538−85−0115)ができるので、森町にしかないワインを是非味わって頂きたい。特に男性の方は、奥様にあるいは彼女へのプレゼントにもどうぞ。

【文責:知取気亭主人】

『時刻表地図から消えた町 』 
【著者】福田 宏年

出版社】:集英社(1980/03出版)
【ページ】:202p (
20cm)
【本体価格】:\980(税別)

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