9月26日早朝、北海道で地震があった(03年十勝沖地震)。襟裳岬の東南東約80km、深さ約42kmを震源とするマグニチュード8の巨大地震だ。震源地が陸地から離れていたお陰で、行方不明2名、負傷者500名強程度の被害で済んだが、7月末に東北地方を襲った地震の記憶が覚めやらぬうちの地震だけに、近頃大きな地震が頻発しているような気がしてならない。そうかと思えば、27日の朝日新聞に「富士山で噴気が上がった」との記事があった。直接噴火に繋がるような兆候はないそうだが、なにやら天変地異の幕開けのような気がするのは私だけだろうか? 取り越し苦労に終わってくれるのを祈るだけだが、その天変地異を予見したかのような小説がある。発表されたのは30年ほど前だが、当時は大変評判になり映画化もされたので見られた方もいるのではないかと思う。
「3月12日午後1時11分宝永火口の真下、海抜2500メート付近の山腹からはじまった富士山の大噴火は、まず宝永山を吹き飛ばし、つづいて、御殿場方面へかけて山腹にそって次々に大小20数口の火口が開き──」
「──四国南部と紀伊半島南部は、1時間1メートル半ないし2メートルという驚くべきスピードで太平洋に向かって動き始めたのだ。──地震発生後、数時間にして、尾鷲、熊野、新宮、潮岬はほとんど海面下に没し、海面は那智の滝の直下にまで上昇してきた」
私がまだ若かりし頃、こんな文章で強烈な衝撃を与えてくれたのは、小松左京の「日本沈没」(カッパ・ノベルス)である。タイトルも衝撃的なものであったが、毎年日本のどこかで発生している地震やその原因である地殻変動という日本人にとっては比較的身近な自然現象を扱い、しかも日本列島がバラバラになりついには沈没してしまう内容は、まるで現実に起こった惨事のニュース報道を読んでいるような錯角さえ覚えた。
この本が発行されたのが1973年(昭和48年)、それから22年後の1995年1月17日にあの阪神淡路大震災が発生した。小松左京のこの小説はしばらく絶版となっていたが、震災後にわかに脚光を浴び、震災直後の4月に文庫本(光文社)として再版された。この震災後、一般市民には馴染みの薄かった活断層や直下型地震などと言った言葉がニュースに頻繁に登場し、国民の多くが地震に注目するようになった。
その後鳥取県西部地震(2000年)や芸予地震(2001年)が続けて起こり、2002年になると東海地震震源域の見直しや東南海地震、南海地震との連動、さらにはこれらの被害想定や発生確率なども話題に上ることが多くなってきた。そして、今回の地震、富士山の噴気活動である。きな臭い臭いが徐々に濃くなってきている様な気がするが、この本を読むには今がまさに旬ではないだろうか。既に読んだ人は今一度、まだ読んでない方は是非一度この機会に読んでおくことをお薦めする。 |