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『公傷制度とチョッとした工夫』

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   2003年11月21日

 大相撲九州場所が始まり、中日を迎えている。一年納めの場所と言われているが、横綱武蔵丸にとっては正に納めの場所となってしまった。左手首の故障が原因のようだが、武蔵丸に限らずここ数年怪我のために休場する力士があまりにも多い。力士の大型化に拠るところが一番の原因と言われているが、公傷制度の安易な利用も取り沙汰され、来場所からこの制度は廃止されるらしい。廃止することによって目論見どおり怪我による休場力士が減ればいいが、私には力士生命を短くするだけのように思えてならない。
 ところで、大相撲では消え去る運命の公傷制度だが、我が家では初の公傷制度を適用した家人がいる。妻である。別に我が家に公傷制度に関する規則がある訳ではなく私が勝手にそう呼んでいるだけではあるが、妻とは意味が通じる言葉となっている。

 今月の初め、妻と二人で娘のアパートに泊まりに行った。狭い部屋に3人で寝たわけであるが、食費を浮かそう、と言うことでこれまた狭い台所で妻が料理を作り始めた。台所と言っても、土地の有効利用を追い求めた結果開発された日本が誇る “玄関”兼“通路”兼“台所”の究極のマルチ機能空間である。狭い。玄関のドアから部屋に入る通路にシンクと流行の電磁調理器が付いているだけの極めてシンプルな作りで、広さは畳半畳程しかない。この狭いところで自宅と同じような料理をすること自体に無理があったのだが、落ちそうになった調理直後のフライパンを素手で握り、左手の人差し指と中指に火傷を負ってしまった。本当は、狭さだけでなく本人の不注意もチョットあったのだが……。まあ、これはあまり大きな声では言わないでおこう。
 水で冷やした後、「えんざんこう」(山梨県身延町で作られている軟膏)をたっぷりと塗り包帯をまいて応急処置をした。包帯を巻いたお陰で台所用のゴム手袋がはめられなくなった。料理を作ることは、不自由ではあるができる。しかし、食べた後の洗い物ができなくなった。そこで、我が家初の公傷制度適用と成った訳である。
 公傷と認め1週間の食器洗いを免除し私がやる、と宣言した。言ってはみたものの、気が向いた時にやるとは違い、夜の9時、10時を回る時刻に帰ってからでも食事を摂った後食器洗いをしなければならないのは気が重く、特に仕事が上手くいっていない時はストレスの重箱にもなる。そこで、チョットした工夫をすることにした。

 工夫と言っても大したことではないが、食器を洗うことは自分の気分転換の為にやる、と己に言い聞かせ食器洗いの動機付けをした訳である。お陰で、嫌々ながらやる、と言うことは全くなかった。もう1つは、これは前から後片付けを手伝う時にやっていたことだが、どういう手順で洗いどこに何を載せれば全てがきれいに片付くか、を考えながら洗うことである。そして、思い通り上手くいったら自分を褒めてやる、を実行した。こうするとストレスもたまらず気分転換もできる。要するに、他愛の無いことでも目的を持ってやれば達成感が味わえる、を実践したわけである。
 古代ギリシャの哲学者ターレスが、

 『この世で一番難しいことは、自分自身を知ること
      一番易しいことは、他人に忠告すること
      一番楽しいことは、目的を遂げること』

と言っているが、どんな小さな目的でも達成できれば嬉しいものである。それを実感できた1週間だった。今では、「これらの工夫は、どこでも、何時でも、誰でも、実践でき、しかも多方面に応用が利くこと請け合いで、ストレスがたまり易い方にはお勧めの方法だ」、と自画自賛している(これも、実は自分を褒めているのだが)。聞かされる社員や家族は良い迷惑かもしれないが、『世の中自分の思い通りにならないことばかりだが、チョットした工夫、心の持ちようで意外とストレスをためなくて済む生活ができるものだ』、と事ある毎に蘊蓄をたれている。

 なお、たった1週間ではあったが実践した二つの工夫のお陰で、皿が飛び茶碗が割れるような嵐が来ることも無く、いつもの平穏な暮らしであったことを報告しておく。もっとも、嵐が来るような大層なことではないから当然と言えば当然なのではあるが……。
 報告と言えば、我が家初の公傷制度適用第1号となった妻の火傷は、看護婦をしている隣家の医療アドバイザー(本人は知らないが、我が家で勝手にそう決めている)から「適切な応急措置と良好な経過です」と言われ気分を良くしているうちに、測ったように1週間後皮が剥けたもののきれいに直ったことも付け加えておく。
 火傷に効く、とは効能書きに書いてない(きずぐすりと書いてある)のに効いた「えんざんこう」の写真を掲載し、「えんざんこう」と贈ってくれた義弟に感謝の意を表すことにする。
  


文章とは関係ないが庭に咲いたツワブキ

 

【文責:知取気亭主人】

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