「生命保険の契約書」、「パソコンの取扱説明書」、最近では「携帯電話の取扱説明書」など、その内容が分からず困った経験をされた方も多いはずだ。かく言う私も、その一人である。今では「生命保険の契約書」など端から分からないように書いてあるものと思っているし、パソコンも携帯も取扱説明書をほとんど読まずに使っている。読んでも理解できないからで、おかげで器械が持っている機能の半分も使っていない。「もう少し、初心者でも理解できるように懇切丁寧な表現にしてあれば、読む気も起こるし自由に器械を使いこなせるのに」と常々思っていたが、「我が意を得たり」の本に出会った。その名も『「分かりやすい表現」の技術』(藤沢晃治著
講談社BLUE BACKS)である。
日常生活で良く目にする「道路標識」や「駅の案内板」などを例に挙げ、『我々の身の回りの分かりにくい表現は、なぜ分かりにくく、どのように改善したら分かりやすくなるか』がその題名通り「分かりやすく」書かれている。「なぜ分かりにくいか」の原因を犯人、「どのように改善したら分かりやすくなるか」の法則をルールと表現して、16の具体事例を示しながら「なるほど!」と唸らせてくれる。まさに「目から鱗」の一冊である。
分かりやすくするための工夫として藤沢は比喩をうまく使い、
『分かりにくい表現をする人は、ちょうど、自分の口元についたケチャップに気づかない人に似ています。周囲の人に笑われている理由が、自分自身では分からないのです。そこで、自分の口元についたケチャップを見る鏡、つまり………』
と「はじめに」の中で書いているが、このあたりの表現も私は気に入っている。
物事を分かりやすく表現することは、我々建設分野の技術者にとっても重要な課題で、瑕疵防止の面からも是非とも会得しなければならない技術だと思っている。姉妹編として出版されている『「分かりやすい説明」の技術』と合わせて読めば、「顧客満足度」が格段に向上すること請け合いである。勿論、実践すればの話であるが! |