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『2100年の気温』

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   2004年 6月 25

 先日の6月7日、気象庁から「2100年頃の夏季における関東地方の気温の変化について」と題する報道発表があった(http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/press/0406/07a/kion.pdf)。現在急激に進行しているとされる地球温暖化の影響を考慮した場合の、今からおおよそ100年後の気温の予測である。発表によれば、「“晴れて風の弱い日”という条件下では、平均気温は現在より最大で1.5℃程度上昇し、日最低気温(午前5時の気温)が25℃以上となる地域が関東平野のほぼ全域に広がるとの結果が得られた」とある。また、日最高気温(午後2時の気温)に関しても、「領域平均の気温上昇は1℃程度で、35℃以上となる地域は関東平野内陸部の広範囲に広がる」と予測している。
 これらの温度上昇を皆さんはどのように捕らえているだろうか。『1.5℃は25℃の約17分の一、それくらい大したことない』と考えるか、『気温よりも湿度が問題さ』と過ごし易さに思いがいくか、はたまた『どの道日本の夏は高温多湿でうんざりするよ』と端から無関心を装うか、『大変なことだな』と思われるか、いずれだろうか。一見すると大した気温上昇でないような気がしてしまうが、ところがよく考えてみるとすごい上昇であることがわかる。汗かきの私としては1℃でも低くあってほしいと願わずにいられないが、服を着たり脱いだり、冷暖房機器に甘えたりすることができるため自然界の中では急激な環境変化への対応が比較的容易で、しかも食物連鎖の頂点にいる人間の体温上昇に例え、影響を考えてみることにする。

 健康な人間の体温は、36.5℃前後が平均的な数値だろう。私のように35.5℃前後と低い体温の人が増えているという話も聞くが、この場では36.5℃を健康時の体温として話を進める。38℃、つまり健康なときより1.5℃体温が上がるとどうなるであろうか。一般的に「熱がある」と呼ばれる状態になるわけであるが、体はだるく食欲はなくなり体を休めたくなるだろう。熱を下げるための薬を飲み、熱の原因を特定し早期の治療を施すことになるが、治療の効果が現れなければ体力のない子供や老人にとっては死に至る場合も出てくるだろうし、この状態が永く続けば壮健な大人でも危険な状態になることは確実である。食物連鎖の頂点にいる人間でさえこれだけの影響を受けるのである。ましてや、下位にいる動植物にとって影響を受けないはずがない。
 つまり、たかが1.5℃と思われる温度上昇だが、自然の中で生かされている生命体にとっては、生死にかかわる重大な出来事なのである。“体温と気温は違う”と思われている向きも多いと思うが、前述したように人間はあらゆる物を使って体温調節を行うことができるが、変温動物も含め動植物は人間ほど体温調節が上手くない。したがって私見ではあるが、動植物にとって「気温の変化≒体温の変化」と考えて良く、気温上昇の影響をまともに受けることになる。特に、自らの意志で自由に移動することができない植物は、種の滅亡という壊滅的な影響を受ける可能性が高い。高山植物などはその典型であろう。既に始まっている珊瑚礁の死滅も、今後益々その範囲を拡大していくことになるだろう。

 自然界に存在するそれぞれの種は、気象現象を巧みに利用し、永い年月をかけてDNAに刻み込まれたプログラムを確実に実行することによって、何千年、何万年もの永きに渡って生存することを可能にしてきた。その気象現象が狂うのである。しかもたった百年で、1.5℃も上昇する。DNAのプログラムを書き換えるにはあまりにも変化が早すぎる。
 例えば、春に私たちの目を楽しませてくれる桜の花について考えてみると、積算温度(日平均気温と基準温度との差をある一定期間合計したもの。一般的には0℃以上の平均気温を合計したものがよく使われる)が一定の値になると開花することはよく知られていることだが、開花センサーのスイッチをオンにする積算温度を僅か100年の間に変えることは不可能だ。したがって、このまま気温が上昇し続ければ、開花時期は早くなり満開の桜の下での入学式ではなく、桜吹雪の下での卒業式が一般的になるだろう。
 一方、気温が高くなると、適応範囲内という条件付きながら活動が活発になる種もある。例えば、我々人間にとっては有り難くない話しだが、害虫の多くは活動が活発になり、わが世の春(夏?)を謳歌することになりそうだ。以前聞いた話だが、例えば農作物に寄生するアブラムシは、気温が高くなると生殖回数が増え、天敵のナナホシテントウ虫の生殖回数よりも多くなるため、大発生する可能性があるらしい。また、刺激すると鼻が曲がるかと思うほどいやな臭いをまき散らすカメムシも、最近では南方系の種類が増え、果樹やイネの被害も拡大するする傾向にあると聞く。気温が上がれば、農作物の収穫が増えるという単純な話しではない。やっと広がりを見せた無農薬栽培も危うい状況になりかねない。
 害虫といえばマラリアや近年アメリカで騒がれている西ナイル熱など、これまで熱帯地方でしか発症していない病気も気温の上昇と共に北上を続け、日本で恒常的に見られるようになるのではないかと危惧している。
 何とか手を打たなければならないが、これといった妙手は浮かばない。やはり、地道だが省エネ、低浪費の生活を心掛けるしかなさそうだ。

【文責:知取気亭主人】


          


  
 

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