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『雛祭り』

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   2004年 2月27日

 先日、東京のとあるホテルで、さる人と待ち合わせをした。ホテルと言っても時間帯は昼食時、しかも相手は男性であるから、残念ながら胸ときめく秘め事を持ったわけではない。本当、残念だけど……。
 相手を待つまでの間、大都会東京のシティーホテルに出入りする人間ウオッチングを楽しんでいたが、ロビーの一角に雛人形が飾られているのが目に入った。「そうか、もうそんな時期か」と移りゆく時の早さに焦りを感じながら、きれいに飾られた七段飾りに見入っていると、人形メーカー「秀月」の解説書がさりげなく置かれているのに気が付いた。早速手にとって開いてみた。七段飾りの絵と共に、「ひなをたずねて千余年」とどこかで聞いたようなキャッチフレーズに続けて、雛祭りの由来が日本語と英語で書かれている。日本語の出だしは、『千年も遠い昔…平安の初期、……』となっている。一方、英文では『The story goes far way back to one thousand years ago、the early days of “Heian era” ……』と書かれているから、多分同じことを説明しているのだろう。あまり長く英文を読んでいると、学生の頃からの持病「英語アレルギーによる偏頭痛」に襲われるため、早々に切り上げアレルギーのない日本語の説明文を読むことにした。

 初めて知ることばかりだが、説明文によれば、平安時代初期に貴族の婦女子の間で行われた「ひいな遊び」と、三月初めの巳の日(会社にあるカレンダーに依れば、新暦で今年はピッタシ3月3日)に行われていた「上巳じょうしの催し」(上巳の節句)が結びついたものが、雛祭りの起こりらしい。「ひいな遊び」とは、人の雛形を紙でこしらえた小さな人形を使う“おままごと”のような遊び、一方「上巳の催し」は、子どもの無病息災を願って、庭園を流れるせせらぎや池に紙人形をうかべて流しお祓いをする催し、と説明されている。どちらも平安時代の貴族社会で行われていた風習のようだ。その風習も時が経つにつれ少しずつ変化していき、室町時代に「上巳の節句」が3月3日と定められ、江戸時代の中期になると今のような華やかな衣装が着せられ雛壇に布地で作った内裏雛が見られるようになった、とある。また、女児の健やかな成長を願うようになったのも江戸時代の中期ごろで、明治時代になると女の子が産まれるたびにどこの家でも雛人形を飾るようになり、現在に至っているらしい。人形や祝い方が多少変わってきてはいるものの、千年以上もの長きに渡り受け継がれている伝統文化は、世界を見渡してもそうはないだろう。是非とも大事にしていきたいものである。
 ところで、解説書を読んで一つ利口になったことがある。「そんなことも知らなかったのか」と言われそうだが、“何でも知ったかぶりで言いたい性分”を理解してもらい、付き合っていただきたい。

 「物の手本」や「手本となる様式・書式」の意味で使われている『ひな形』を『雛形』と書き、「実物をかたどって小さく作ったもの、模型」(広辞苑による)の意味があることを知った。「雛」は「雛鳥」や「雛菊」のように使われているから、「小さい」とか「小さくてかわいい」の意味があることは何となく知ってはいたが、「『ひな形』=『雛形』」であるとは、この年になるまで知らなかった。解説書を読んだお陰で、知識の皺がまた一つ増えた。尤も、それ以上のペースで物忘れが激しくなって来ているから、大分ノッペリとした脳になってきているようではあるのだが……。そう言えば、この文章を書いている間に、遠い昔に「『ひな形』=『雛形』」を習ったような気もしてきたが、悔しいけれどノッペリ脳の影響なのか霞が掛かっていて定かではない。

 こちらは霞もなく凄くハッキリしているのだが、もう一つどうしても言いたいことがある。新しい知識の披露ではない。「雛祭り」に関してどう考えても合点がいかないことである。なぜ女児の祭りにはアルコールが出て、男児の祭りである「端午の節句」には出ないのだろうか。不公平ではないか。童謡「楽しい雛祭り」の歌詞の中に、
                                              
    『♪♪ 金のびょうぶにうつる火を
        かすかにゆする春の風
        すこし白酒めされたか 
        あかいお顔の右大臣 ♪♪』
        
とあり、右大臣の顔が赤くなるほどの強い酒であるから、白酒(しろざけ)が甘酒でないことは確かだ。広辞苑で調べてみると、濁酒(どぶろく)の別称でもあるらしい。濁酒であればなおさら男児にふさわしい。あ! 失礼、成年男子にふさわしい。
 いずれにしても、「端午の節句」にも白酒を出してやりたいものだ。そう思うのは、何も私が酒好きだからではない。子を思う親の気持ちを察していただきたい。ねえ、皆さん!

【文責:知取気亭主人】


お内裏様とお雛様(写真提供:村下さん) 

 



「桃の花」の代わりの「梅の花」

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