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とうとう、満一歳になった。昔のことわざに「光陰矢のごとし」とあるが、振り返ってみると月日の経つのは本当に早い。生まれたての頃はどうなることかと思っていたが、物事何とかなるもので、右往左往しながらもあっという間に満一歳の誕生日を迎えることができた。ここまでこられたのも、温かく見守ってくれる周りの人達のお陰だ。ただ、見守ってくれている人達が「少しは成長しているのだろうか?」と大いに心配してくれていることも承知している。その意味では、まだまだ言いたいことも満足に表現できないし、どう贔屓目(ひいきめ)に見ても頼りなさそうなヨチヨチ歩きは心許ない。「這えば立て、立てば歩めの親心」ではないが、早く独り立ちさせなければと内心焦っている。
『エ! “お孫さんの話ですか”って?』
『違うんです。四方山話のことなんです』
そう! お陰様で、四方山話が今回の話しで丁度一年になる。軽い気持ちで始めたのは良かったが、元々文才の無いところに持ってきて、話題が少ない、記憶容量が少ない、ブラインドタッチができない、語彙が少ない、黒髪が少ないの「ないない尽くし」であることに、不覚にも書き始めてから気が付いてしまった。後の祭りである。しかも、遅筆も甚だしいのに時間がたつにつれ変な自信がついてきたおかげで、締め切りが迫ってこないと書かなくなってしまった。中学、高校生の頃の試験前とまったく同じになってしまっていることに、ハッと気がつき、成長していない自分にうんざりするのだ。ところがB型人間の特技といわれる“気分転換の妙技”を披露して、次の週もまったく同じ忸怩たる思いを繰り返すことになる。
書き始めが締め切り直前で遅筆とくれば、通常であれば間に合わないのが普通だが、不思議と遅れたことはない。いくつか理由があるのだが、そのひとつが先ほど書いた「変な自信」を持ってしまったことだ。自信というよりも“思い込み”というべきなのかもしれない。つまり、「どう頑張っても、渡辺淳一のような文章は書けない。俺が書く文章は、俺の文章以上でもないし以下でもない。だからこのままでいいんだ」というとんでもない思い上がりの“思い込み”(人によってはアキラメともいう)が、締め切り間近になると全身をくるんでくれる。読む人にとっては迷惑な話だろうが、私にとってはありがたい話である。
もうひとつ、“困ったときにはある特殊なツールを使う”という技能を身に付けていることが締め切りに間に合う最大の理由なのかもしれない。この技能は、私がまだ二十代の頃先輩が教えてくれたもので、すごい効果があるのだがもう会社ではなかなか披露できない。実を言えば、この文章を書いている7月1日23時45分の今もそのツールを使っている。夜に似合うツールなのだ。しかもそのツールを使うことに、何の苦痛も感じないし、むしろ楽しみさえ感ずるのだ。そんなツールがあるはずがないと思われるかもしれないが、「真実は小説よりも奇なり」といわれるとおり、不思議なことに便利なツールがあるのだ。しかし、誰でも使えるが誰にでも効果があるとは限らない。その人がどれだけ愛情を持ってツールを使うかによって、効果は違ってくるような気がする。いずれにしても、私にとってはいつも使いたくなる大変ありがたいツールで、しかも文章を書くスピードが4倍ぐらいにアップする魔法の力を持っている。本当は秘密にしておくつもりだったが、四方山話の満一歳の誕生日を記念して、皆さんにもお教えしよう。
私にとって魔法の力を持ったツールとは、「お酒」である。日本酒でも焼酎でもビールでも何でもよい。お酒の力を借りて、鋭敏になった神経を麻痺させ、神経過敏思考の停止と恥じらいの喪失、最後に決断力の復活を実現すれば、悩んだ文章が不思議とすらすらと出てくる。正に、私にとっての魔法のツールである。ただ、使いすぎると睡魔に襲われるので注意が必要だ。ちなみに今日のツールは、泡盛のシークヮーサー割だ。もうそろそろツールもなくなってきた。この辺で筆を置くことにしよう。 |