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サムライ

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   20040220

 今、「サムライ」がブームらしい。本屋に行っても特設コーナーが設けられており、新撰組に関する本や武士道に関する書籍が数多く置いてある。NHKで放映中の大河ドラマ「新撰組」や、話題となっている映画「ラストサムライ」、更には日本アカデミー賞に輝いた「たそがれ清兵衛」の影響が大きいらしい。特に若い人に人気が出ているようだ。 「サムライ」、漢字では「侍」とも「士」とも書くが使っている意味合いから言えば「武士」、言い方を変えれば「もののふ」(漢字ではやはり武士と書く)のことを言っているのだろう。いずれにしても、何故ブームになっているのだろうか。尚武(しょうぶ)は勿論のこと、信義や忠誠、礼儀などに代表される武士道に憧れているのだろうか、それとも只単に強い者に憧れているだけなのだろうか。右傾化でなければ良いのだが……。

 「武士道というは、死ぬ事と見付けたり」とは約290年前に佐賀藩士山本常朝が口述した「葉隠」に有名だが、武士道の精神を世界に紹介した本と言えば、5千円札の肖像でお馴染みの新渡戸稲造(1862〜1933)が書き表したその名も「武士道」(岩波文庫、矢内原忠雄訳)が一番に挙げられる。著者の新渡戸稲造は、5千円札の肖像に採用されるまで然程知られていなかったが、国際連盟の事務局次長を歴任したりするほどの国際派で、「武士道」は英語で執筆された後、ドイツ語、フランス語、ポーランド語、ノルウェー語、ハンガリー語、ロシア語、中国語にも翻訳され日本よりむしろ海外で知られているようだ。
 「武士道」は増版を重ね今回紹介する本は第67刷であるが、本著の中には初版の序に当たる第一版序も掲載されており、そこには本書を書く切っ掛けとなった出来事が記されている。それはベルギーの法学大家が新渡戸に発した「宗教教育が無くして、日本では道徳教育をどうして授けるのか」の質問であった。新渡戸はその答えを武士道に見出し、同じ序の中で、

 『しかして封建制度および武士道を解することなくんば、現代日本の道徳観念は結局封印せられし巻物であることを知った』

と、日本の道徳観念を知るためには武士道の教えを知らなければならないことを説いている。つまり、『武士道  日本の魂  ――日本思想の解明――』と内表紙に記しているように、本書は武士道の精神を通して日本人の思想(道徳観念)を説明しようとした海外向け解説書の意味合いが濃い。したがって、西洋、主にキリスト教の考え方との違いも随所に示されている。例えば、一青年が戯れに言った言葉をいくらかの真理があるとして、次の文章を引用している。

 『アメリカ人はその妻を他人の前で接吻し、私室にて打つ。日本人は他人の前ではこれを打ち、私室にありては接吻する』

 これは「克己」の章に書かれているが、その他にも目次に目をやれば、「義」、「勇・敢為堅忍の精神」、「仁・惻隠の心」、「令」、「誠」、「忠義」、等等の章が有り、国会議員の先生方には是非読んでもらいたい言葉が並んでいる。特に、義、仁、誠、忠義などは、100回でも200回でも読んでもらいたい。「武士道の感化」の章で、

 『武士は全民族の善き理想となった。「花は桜木、人は武士」と、俚謡に歌われる』

と記しているが、歌われなくても良いから国会議員には国民の理想となってほしいものである(※【俚謡(りよう)】:民間のはやり歌、俗謡、民謡)。国会議員のことばかり言ってきたが、道徳教育を授けるべき教師こそ読んでもらわなければならないことを忘れていた。一般民衆全てが武士道に立脚した道徳観念を持っていたとも思われないし、内容全てを肯定するつもりもないが、国際平和を主張した筆者が言わんとしたことは教師の襟を正すにも大いに役立つのではないかと思う。破廉恥な事件を起こす教師が後を絶たない昨今、失いかけている信頼を回復し是非生徒の理想になってほしい、と切に願うばかりである。

 「武士道」は当然ながら男中心の世界を扱っている。女性の道徳観念を扱っている章もあるにはあるが、量的にも内容的にも劣るのは否めない。そこで、趣旨も内容も異なるが、女性の生き様を通じて武士の妻の理想像を描いた本を紹介する。山本周五郎(1903〜1967)の「小説 日本婦道記」(新潮文庫)である。ご子息が結婚する知り合いから頂いた年賀状に、「日本婦道記のような女性と結婚します」と書かれていたのを見て、どんな本かと読んでみた。男から見て正に理想の妻がそこにはいた。世の女性全てに読んでほしいと願うのは、老後が足早に迫ってきている私だけではないだろう。これを読めば、幼児虐待は勿論のこと、亭主虐待も劇的に減るものと確信している。世の男性を代表し、「女性の皆さん、是非読んで下さい」とお願いして筆を置くこととする。

【文責:知取気亭主人】

『武士道』 岩波文庫 
【著】新渡戸稲造
【訳】矢内原忠雄

出版社】:岩波書店
【ISBN】:
1984/05出版
【ページ】:159p (
15cm)
【本体価格】:\400(税別)

『小説日本婦道記』 新潮文庫
【著】山本周五郎

出版社】:新潮社
1985/08
(出版)
【ページ】:241p (
16cm)
【本体価格】:\438(税別)

『葉隠』 全三冊(上・中・下)岩波文庫
『校訂』
山本 常朝,和辻 哲郎,古川 哲史

出版社】:岩波書店
【出版】:上:1940/4 中:1941/4 下:1941/9
【本体価格】:各\560(税別)

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