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本題に入る前に、四方山話を読んで頂いている皆さんに事後承諾を得なければいけない。もう既に気付かれた方もおいでるだろうが、四方山話発行の曜日を変更させて頂いた。毎週花の金曜日に発行していたが、諸般の事情により前回の114話から水曜日になった。これまでどおりの拙文ではあるが、変わらぬご愛読を賜りたい。
さて本題に入ろう。皆さんがこれを読まれるころは、私は札幌か東京にいるはずだ。出張である。金沢から札幌、さらに札幌から東京への移動は、利便性を考えると車や電車など地上の交通機関を使うわけにもいかず、あまり好きではない飛行機を利用せざるを得ない。『どだい空気よりも重い塊が空を飛ぶこと自体が間違っている』と常々思っている高所恐怖症男としては、意を決しての飛行機の利用だ。YS-11の時代から比較的よく利用してきたほうだが、何回乗っても「飛行機大好き」にはなれない。
昔、モーターボートに引っ張られたパラシュートで空中遊泳(パラセーリング)をしたことがあった。高所恐怖症の私が不思議なことにそのときは特段恐怖も感じず、短い時間ではあったが上空からのパノラマを楽しむことが出来た。地に足が着いていなくても恐怖を感じることがなかったのは、多分、パラセーリングの空中に浮かぶ機構そのものが簡単で私でもおおよその原理が理解でき、「パラシュートそのものが開いている間は急激に落下することはない」という安心感を得たからなのだろう。
ところが、飛行機となるともういけない。想像もできないくらいの複雑な機構や機器類は、私の思考回路の許容値をはるかに超えている。したがって、「飛行機=安全」の等式がいつまで経っても成り立たないのだ。多分、幾重にも施された安全対策がより複雑にしているのだろうが、そうしなければ安全が保たれないということだ。随分前に「飛行の原理」(谷一郎著、岩波新書)を読んだことはあるが、やはり『どだい空気よりも重い塊が空を飛ぶこと自体が間違っている』の考えは払拭できないでいる。
その飛行機に関するトラブルが今年に入り頻発している。管制官や機長のうっかりミスを始め、整備不良や安全運行システムの異常など、下手をすると大惨事に繋がりかねない重大なトラブルが後を絶たないのだ。中でも、8月12日に福岡発ホノルル行きのJAL便が福岡空港離陸直後にエンジン部品を市街地に落とした事故は、突然エンジンから火を吹く衝撃的な映像により、航空事故の恐ろしさを日本人に再認識させることとなった。折しも今年は、520人もの犠牲者を出した日航ジャンボ機墜落事故(1985年8月12日)から丁度20年目の節目の年に当たる。
圧力隔壁やダッチロール、あるいは御巣鷹山など、あの事故さえなければ知る由もなかった特殊な単語や地名を全国民に知らしめることとなった大惨事だ。その後の調べで、事故機が大阪空港(伊丹)でしりもち事故を起こした因縁付きの飛行機であることが分かり、その時の修理ミスが原因ではないかと言われていたが、結局修理を担当したボーイング社の責任は問われないまま20年が過ぎた。
その間日本では、1994年の中華航空機墜落事故を最後に旅客機の墜落事故がなく過ぎたせいか、航空システムに対する安全神話が一人歩きしてしまった感がある。いわゆる気の緩みが生じたのだろう。そして、万全と思っていた安全システムが知らず知らずのうちにほころび始め、「今ではそのほころびがかなり大きくなってしまっている」と感じさせる最近のトラブル多発なのだ。
いやな予感がしてならない。再び20年前と同じような大惨事が起こるのではないかという予感だ。日本におけるここ数年の航空トラブルは、ハインリッヒの法則が説く「1件の大事故の影には29件の小さな事故があり……」の29件を既に上回っているような気がする。しかも世界に眼を向けると、今年だけでも6件もの墜落事故を起こしているのだ
(参照「世界の航空事故総覧」
http://www004.upp.so-net.ne.jp/civil_aviation/cadb/wadr/wadr.htm)。
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2005年02月03日 アフガニスタン・ヘラート発同カブール行きボーイング737が、カブール近郊の山中に墜落し、乗員乗客104名全員が死亡。 |
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2005年03月16日 ロシア北西部に位置するロシア連邦コミ共和国でアントノフAn−24RVが墜落し、乗員乗客52名のうち28名が死亡。 |
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2005年08月06日 イタリア・バーリー発チュニジア・ジェルバ島行きのATR−72−202が地中海上に墜落し、乗員乗客39名のうち14名が死亡、1名が行方不明。 |
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2005年08月14日 キプロス・ラルナカ発ギリシャ・アテネ行きのボーイング737が巡航中に墜落し、乗員乗客121名全員が死亡。 |
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2005年08月16日 パナマ発フランス領マルティニク行きのMD−82が墜落し、乗客152名が搭乗していたが安否は不明。 |
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2005年08月23日 ペルーでボーイング737がジャングルの湿地帯に墜落し、乗員乗客100名のうち少なくとも43名が死亡。 |
ノンフィクション作家の柳田邦男は、20年前の日航機事故の後「死角 巨大事故の現場」(新潮文庫)を書いた。その中で、「航空機事故に限らず一般に連続事故には、ある周期性が認められる」という説を紹介している。柳田自身が言っているわけではない。しかし、「事故は連続して起こりやすい」とか「周期性がある」など私の推測と一致するこの説のおかげで、残念ながら“いやな予感”が一歩も二歩も“確信”に近づいてしまった。
柳田によれば、「ボーイング747はアポロ計画のために開発された信頼性理論(部品の故障発生率から飛行機一機の事故発生率まですべて百万分の一以下に抑える)を全面的に導入して設計された」とある。しかし、事故は発生した。どのように安全を考慮したシステムであってもそれを維持、管理、修理、そして使うのは人間である。なおかつ、あらゆる場面を想定して安全システムを構築するわけだが、場面の想定をするのも結局人間である。想定外の場面をゼロにすることは所詮不可能だ。
地道ではあるが、事故を教訓にゼロに近づける改善をやり続けるしかない。やはりその根底には、『どだい空気よりも重い塊が空を飛ぶこと自体が間違っている』の考え方が必要だ。また、自国の犠牲者を少しでも少なくしようとすれば、フランスが行った「危険な航空会社の公表」と「領空への飛行禁止措置」もまた必要なことなのかもしれない。
何ということだろう。最後の校正をしている間に、また墜落事故が発生した。折角筆を置こうとした矢先の事故だ。9月5日、インドネシアのスマトラ島で109人を載せた旅客機が離陸直後に付近の住宅地に墜落し、少なくとも60人が死亡したというのだ(YOMIURI
ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050905i306.htm)。詳しい被災状況はまだ不明だが、被害の拡大が懸念されている。
それにしても、8月以降、僅か1ヶ月の間に5件の墜落事故だ。異常に多い。やはり事故は連続する傾向にあるとみて間違いない。そしてその連鎖は、まだまだ続く可能性を秘めているのだ。 |