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『勧善懲悪はどこに行ってしまったか?』

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   2005年12月14

 耳を疑いたくなるような痛ましい事件が立て続けに起きている。先月22日広島市で下校途中の7歳の少女が殺される事件が発生したばかりだというのに、まだ二週間も経たない今月2日、やはり下校途中に行方不明になっていた栃木県今市市の7歳の少女が、隣の茨城県で殺されているのが発見された。そして四方山話を書こうとしていた12月10日には、6年生の女生徒が塾のアルバイト講師に刺殺された。あってはならないことだが、まるで流行り病のようだ。

 約40年前の1963年、当時4歳の村越吉展ちゃんが誘拐され、「戦後最大の誘拐」と言われた「吉展ちゃん事件」が発生した。吉展ちゃんは結局誘拐された日の晩に殺されていたが、事件は小原保による身代金目当ての犯行であった。この事件に代表されるように、以前の誘拐はそのほとんどが身代金を奪い取るための手段であった。ところが最近は金品を要求することなく最初から殺すことを目的として誘拐している犯行が多く、猟奇殺人の様相を呈している。まるでゲームのように、いとも簡単に殺人を犯すようになってきた。

 子どもが犠牲になる殺人事件が多発しているために、地域住民による“登下校時のパトロール強化”を中心にして、「どのように子どもの命を守ったらよいか」の議論が活発になってきた。スクールバスを走らせるようにしたところもあるし、大阪府のように「子どもにICタグを持たせ、通学路の自動販売機に設置したセンサーで無事を確認するシステムの実験をする」と発表した自治体もある。また、小坂文部科学相は、通学路の危険箇所などに防犯ビデオカメラを設置する緊急対策を表明した(2005年12月7日、朝日新聞朝刊)。一方で、防犯ブザーなどの防犯グッズを購入する親も急増しているとのことだ(2005年12月5日、朝日新聞朝刊)。
 このように様々な取り組みが実践され始めてはいるが、今のところこれといった決め手はなく、小さな子どもを持つ親は気が気ではない。しかし、防犯対策もさることながら、いたいけなこどもが 犠牲になる痛ましい事件が何故こんなにも増えてきたのだろうか。しかも犯人の低年齢化傾向もある。そんなことを考えると、報道されているように防犯システムの構築も確かに必要なことだが、果たしてそれだけで問題は解決するのか甚だ疑問だ。私には、もう一つ重要なことが隠れているように思えてならない。

 インターネットの目覚しい普及によって、誰でもほしい情報を簡単に手に入れることが出来るようになってきた。そして、「表現の自由」というもっともらしい権利を盾に歯止めのない表現が横行して、見るに絶えないような情報も飛び交っている。入手しようとすれば、たとえ子どもであってもどんな情報も簡単に手に入れることが出来てしまう。中には猟奇趣味を満足させるようなグロテスクな情報もあり、“イラクでの人質処刑の残虐シーン”もインターネットで簡単に見ることが出来るという。
 一方、『こんなものが普通に流通してもいいのだろうか』と思えるような悪趣味なビデオも簡単に手に入れることが出来るようになってしまった。そんなビデオを繰り返し観ることで異常な 性癖が成育されることになり、結果、快楽殺人犯の予備軍が大量生産される危険性が高まってくる。人格が形成される前にこれらの“見せたくない情報”に長時間にわたり触れると、歪んだ快楽を求めるようになってしまう恐れがあるのだ。
 今年の2月から3月にかけて自殺願望の若者3人を次々と手にかけた犯人は、悶え苦しむ顔に異常な関心を持っていたというが、まさに氾濫する破廉恥な情報によって異常な性癖が形成されてしまった典型的な事例と言っていいだろう。
 また、テレビゲームの影響も大きく、殺人ゲームのようなものばかりをやっていると、現実とゲームの境界が自分では判断できなくなってしまう。特に、子どもへの影響は大きい。
 そう考えると、「場合によっては人格形成に悪影響を及ぼす情報がある」、あるいは「殺人犯を育成するような情報もある」ということを認め、金科玉条のように「表現の自由」を振りかざすことはやめ、表現にも一定の歯止めをかけることが必要だ。特に、インターネットで発信される情報の影響は計り知れないことを考えれば、道徳観のない眼に余る情報には破廉恥罪などの適用も視野に入れるべきではないだろうか。「戦時中の言論統制に繋がる」というのが表現の自由を論ずるときの争点だが、表現の自由を守ることで歪んだ性癖の犯罪者が増えるとすれば、それもおかしな話である。

 私が子供の頃に見た映画やテレビドラマには勧善懲悪の単純なストーリーが多く、「悪いことをすると最後には懲らしめられる。だから悪いことはしていけないのだ」の道徳観を知らず知らずのうちに教えられていたような気がする。ひるがえって今のテレビはどうだろうか。バラエティー番組全盛の今の時代には、「子どもに道徳心を植え付けたい」というような意思は残念ながら伝わってこない。ひょっとすると、メディアの低レベル化が異常な犯罪を増やしている元凶なのかもしれない。
 

【文責:知取気亭主人】

     

 



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