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『麒麟、鳳凰、鴛鴦』

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   2005年01月28日

 先日、ひょんなことから新しい知識を仕入れた。幾つになっても新しい知識を吸収するということは、新鮮で得したような気分になりチョッピリ幸せを感じさせてくれる。仕入れた知識が楽しい話題であれば尚更である。その幸せのおすそ分けというわけで、最近世界中に蔓延している感のある重苦しい話題の口直しにホンワカとする話を紹介したい。
 皆さんは、「麒麟」、「鳳凰」、「鴛鴦」を何と読むかご存知だろうか。最初の漢字は私の大好きな麦ジュースのラベルにでてくる。左党の皆さんの中には毎晩お近づきになっている人も多いことだろう。残念ながら最近の私は、故あってお目に掛かる機会がめっきり少なくなっており、あの喉越しの快感を忘れてしまうのではないかと心配でたまらない。広辞苑によれば、当然のことながら麦ジュースに関する記述はなく、「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」のほかに「最も傑出した人物のたとえ」の意味もあると書かれている。そう言えば、大分前になるがこの名を使っていたお相撲さんもいた。
 二番目の漢字を直接目にすることは滅多にないが、昨年の11月から華々しくデビューした“あるものの裏”にその姿が印刷されている。財布が閉まらないくらい沢山、そして永く財布に留まっていてほしいのだが、図案のように翼があるのがいけないらしく、入ってもすぐに飛んでいってしまう。憎らしい限りだ。そう、くだんの姿は私の愛する新一万円札の裏に印刷されている。なお広辞苑によれば、「古来中国で、麟(りん)・亀・竜と共に四瑞として尊ばれた想像上の瑞鳥」(めでたい鳥)とある。
 三番目の漢字は一番馴染みが薄いのではないだろうか。最近ではひらがなやカタカナ表記がほとんどで、このような漢字表記にお目に掛かることは滅多にない。池や河口に行くと比較的よく見ることができる動物の名前で、丁度今の季節、雄が着飾っていて綺麗だ。詳しく観察するとそうでもないらしいが、夫婦仲がいいたとえとして昔からよく使われている。歌にも使われていて、誰が歌っていたか定かではないが、遙か昔の歌謡曲に「鴛鴦道中」という歌があり「堅気育ちも重なる旅に、いつか外れて無宿者……」と、諸先輩方が酒に酔うと手拍子よろしく声を張り上げていたのを思い出す。さて、何と読むのだろうか?
 もうすでに皆さんご存じのとおり、順番に「キリン」、「ホウオウ」、「オシドリ」と読む。最後のオシドリは「エンオウ」とも読むそうだ。では、共通点をご存じだろうか?
『想像上の動物?』
 いやいや、オシドリは実在する鳥だ。多分正解を聞けば『ヘー!』という声を発すると思うが、「楽しみは後で」ということで解答は後回しに、この話題になったいきさつをまずもって説明しよう。

 先日の日曜日、家内の友達から招待状が届いた和服内覧会へ行って来た。友達が内覧会のアルバイトをする事になり、『知っている友人に配っているのだけれど、買わなくてもいいから来て!』と、頼まれたとのこと。『それじゃ、久しぶりにお茶しようか!』ということになり、家内と連れだって冷やかしに行くことになった。
 華やかな帯や着物が飾られている会場をウロウロしていると、営業の切り込み隊長と思しき若者が、『先生のお話をお聞きになりませんか?』と言う。家内はさすが大蔵省で、「これは買う気を起こさせる敵の作戦だな」と、とっさに気付いたらしく言下に、しかし低調にお断りした。私はというと、彼が言い添えた『“和紙”を使ったものや“べっこう”、“螺鈿(らでん)”を使った帯もあり、先生はその作家です』の言葉に引き寄せられて、後先も考えず思わず先生の前に座ってしまった。先生が作ったという帯を手に取りながら話してくれる内容は我々の既成概念を覆すものばかりで、買わされるのではという警戒感もどこへやら二人とも興味津々と聞き入ってしまった。
 紙といっても原糸は絹糸を使いその回りに和紙が張り付けてあることや複雑な作業工程など、製法を詳しく説明してくれたのだが、メモリーが減少している頭では記憶が定かでない。したがって、悔しいけれど本紙上での説明はできない。しかし“和紙”や“べっこう”などを和服に使う発想や、そのような材料を使っても100年は持つだろうという製法技術の開発など感心するものばかりで、激減している和服需要を必死になって掘り起こそうとする情熱がひしひしと感じられれた。「我々建設関連業界も負けてはおれないな」と、妙なところで勇気づけられてしまった。

 さて、いよいよ核心に迫っていくが、その話の流れの中で「和服を着ると特に女性は足運びが美しくなる」ことや、「呉服は五つの福を意味している大変めでたい着物である」こと、そして「それもあって、呉服に描かれている絵柄はめでたいものが多く、花はもちろん麒麟や鳳凰、鴛鴦なども好んで描かれている」など、和服の良さを得々と説明してくれた。
 なぜ麒麟や鳳凰、鴛鴦が好まれるかというと、三つの動物とも左の漢字が雄を、右の漢字が雌を意味していて、仲睦まじいことを表しているからだと言う。初めて聞く話である。「ほんとかな?」と思い家に帰り早速広辞苑で調べてみた。仲睦まじいことを表すとは書いてないが、確かに雄と雌を表すとある。これが、世の中知らないことばかりだということを再認識させられた目から鱗の解答である。
 この拙文を書きながら、「そうか、めでたい動物だからこそ麦ジュースの商標やお札の絵柄に使われているのも頷けるな」と納得し掛かったが、どちらも一匹しか描かれていないことに気がついた。缶の麦ジュースには二匹描かれているが、ビンは確か一匹だ。二匹いるからめでたいのに、道理でどちらとも私との相性が良くない。「描かれているのを雌だと思い可愛がるしかないか」と薄い財布を見ながら思わずため息がでてしまった。仕方がない、今夜はビンに描かれている麒麟の数を確認する作業と二匹描かれている缶におつきあいをして、無理矢理にでもめでたさを呼び込むしかなさそうだ。

【文責:知取気亭主人】

     

  

   
麦ジュース(缶)の麒麟

   

  
多分日本で一番永く続く鴛鴦夫婦

 

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