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『日本語の誤用にご用心』

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   2005年07月15

 先日、面白い調査結果がテレビで放映された。間違いやすい日本語を若者と年輩者(残念ながら何歳を区切りとしているかは聞き逃した)に質問したところ、正解率で若者に軍配が上がったというものだ。例えば、「汚名挽回」と「汚名返上」ではどちらが正しいかといった問題だ。
 テレビでは街頭質問の様子が流されていたが、以外といっては失礼だが漢字離れが進んでいると思われた20代らしい若者は正解を選択しているのに対し、50代とおぼしき年輩者はものの見事に間違えている。どうやら数十年も間違えたまま記憶していたようだ。私もあまり人のことは言えないが、「四方山話」執筆に当たり記憶が定かでない言い回しを調べて見ると、『エ!そうだったのか』と誤用に気がつくことも多い。そこで今回は、以外と間違いやすい日本語について話題を提供したい。

 テレビで質問していた「汚名――」は、「汚名返上」が正解だ。どうやら「名誉挽回」と混同していると放映されていた。なぜ混同するのか考えてみると、両者の意味が似通っていることが原因なのかもしれない。そう言えばこの場合と同じように、二つの言葉を混同して誤用していることが結構見受けられる。
 「けんけんがくがくの議論」などはその代表例ではないだろうか。これは、「たくさんの人が口々にやかましく騒ぎ立てるさま」(広辞苑より引用:以下広辞苑とだけ記す)を表した「けんけんごうごう(喧々囂々)」と、「剛直で言を曲げないこと、遠慮することなく論議すること」(広辞苑)を表した「かんかんがくがく(侃々諤々)」が混同されている。意味は似ているのかと言えば、同じように捉えられがちだが説明にあるように両者には明確な違いがあり、「喧々囂々」の用例として「――たる非難」(広辞苑)が示されていることでも分かる。この場合は、音、あるいは語呂が似ていることも原因と考えられる。
 「まとをえた発言」も混同の結果誤用されている言葉だ。「的(まと)を射(い)た発言」と「当(とう)を得(え)た発言」が混ざり合っている。二つとも同じ意味であるから大きな影響を及ぼさなかったことが、(私の知る限り)多くの人が誤用してきた原因なのかもしれない。的を射た説明ではないかもしれないが、何とかご理解いただきたい。

 次によく耳にする読み方の間違いを紹介したい。「歯に衣着せぬ」と「一ヶ月毎」は、それぞれなんと読むのだろうか。「歯に――」は、「相手に遠慮せず、思っていることをつつみかくさず言う」(広辞苑)という意味で、「歯にキヌ着せぬ」と読む。衣を“コロモ”と読んでいる人を良く見かけるが間違いである。
 もう一方は「一ヶ月ゴト」と読む。同じ毎でも「毎分」や「毎日」のように接頭語として使われるときは、“マイ”と読むが、接尾語として使われるときは“ゴト”と読む。日本語は本当に厄介だ。

 読み方ではなく意味の誤用もよく見聞きする。代表選手が「小春日和」だろう。「小春」とは「(暖かで春に似ているからいう)陰暦十月の異称」(広辞苑)のことで冬の季語にもなっているのだが、春先の暖かくなってくる気候の事だと勘違いしている人が意外と多い。意味は分かっているのに、陽気に誘われてうっかりと誤用してしまう場合もあるのかもしれない。
 似たような誤用として、「あの人とは気が置けない間柄」のような使われ方をする「気が置けない」がある。私も数年前に真実を知り“眼から鱗”となった一人だが、「うちとけられない」という意味で捉えている人が意外と多い。しかし、実際にはその逆で「気づかいの“気”を相手との間に置かなくてすむほどうちとけられる、つまり気を遣わなくて済む」という意味である。したがってちょっとややこしいが、「気が置ける」が「うちとけられない」の本来の言い方になる。

 最後に今回の四方山を終えるにふさわしい誤用を紹介する。以前バラエティー番組で聞き、「それもありかな」と妙に納得をしてしまった傑作があった。本来は仏教用語で「迷っている衆生を導いて仏道に入らせること」(広辞苑)として使われていたものが転じて、「最終宣告を言い渡す」という意味で使われるようになった「印籠(いんろう)を渡す」である。これは勿論間違いで、正解は「引導(いんどう)」である。しかし、正解よりも誤用の方が馴染み深く、「印籠」と言われて水戸黄門のあのシーンがすぐ思い浮かんだ。水戸黄門のハイライトはなんと言っても『この紋所が眼に入らぬか!』と見得を切って印籠を見せるところだが、正に悪人に最終宣告を言い渡すところだ。なるほど、「印籠を渡す」でも意味は通じるのかと納得した次第である。

 

【文責:知取気亭主人】

     

 ハスの花(蓮華)

 

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