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『……っ放し』

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   2005年04月08

 小さなランドセル姿が目に付く季節になってきた。桜の便りと共に毎年巡ってくるほほえましい光景だ。見るからに初々しい登校姿を見ると細い目が一段と細くなってしまう。真っ直ぐに育ってほしいと願うばかりであるが、そのためには育てる我々大人がしっかりとした「しつけ」をしておくことが重要だ。しつけ(躾)は「身が美しい」と書き、立ち居振る舞いの基本を成すもので、大人になったときに差が現れるものだ。誰が見ても気持ちの良い立ち居振る舞いをし、我が身の失敗を繰り返させないためにも子どもにはしっかりと躾をしておきたいものだ。それもなるべく小さな時に始めるのがよい。

 子どもの時に教えておかなければならない基本的な躾が三つある。一つは、おはよう』という朝の挨拶である。この一言をお互いが交わすことによって一日が始まる。子どもの元気な声は、いつ聞いてもすがすがしいもので、その日一日を気持ちよく元気にスタートさせてくれる重要なコミュニケーションだ。私は今でも町内で会う子どもたちに声をかけているが、元気な声で『おはようございます』と帰ってくると、とても爽やかな気分で出勤することが出来る。短いけれど、魔法の言葉だ。親から声をかけるのは当然の事として、「どちらが早く声をかけるか」の競争をすれば、子どもは喜んでやるはずだ。遊びながら躾が身に付く方法を是非実践してみていただきたい。

 二つ目は、何かを頼まれたときにハイ!』とハッキリと返事をすることだ。コクリと頷くだけでは、コミュニケーションというキャッチボールをしたことにはならない。やはり、投げかけた言葉に対する意思表示は、言葉で返すべきだ。『ウン』という返事もあるが、承知したのか不承知なのかがいまいち曖昧で、私は好きではない。また、例え親と言えども年上の大人に対する返事としては、やはり『ハイ』の方がふさわしい。元気な声で返事が返ってくれば、頼んだ方も気持ちが良い。気持ちが良ければ、頼まれ事をやり終わったときには当然『ありがとう』や『よく頑張ったね』のねぎらいの言葉も沢山かけることになる。頼み方、言い換えれば親の表情や言葉も大切である。媚びする必要は全くないが、気持ちの良い返事が出来るような頼み方を心がけるのは勿論である。また、子どもから声をかけられたとき、正面を向いて返事をすることでお手本を示すことも忘れてはならない。

 三つ目は、「後片付け」をさせることだ。私も含めこれがなかなか苦手な大人が多いところを見ると、三つの躾の中でもっとも難しいようだ。基本的には「後工程はお客様」の考え方に通じていて、自分が使った物や場所を次に使う人が使いやすいようにしておくことが「後片付け」の重要なポイントで、ただ単に整理整頓と言っても簡単に身に付くものではない。胸に手を当て我が身を振り返ってみれば、身につまされる御仁が多いだろう。後片付けは整理整頓に限ったことではなく、自分が手がけた事を手がける前の状態に戻すことも含まれていて、「オモチャの出しっ放し」、「本の借りっ放し」、「電気のつけっ放し」といった「……っ放し」をなくすことだ。ところが、これが身に付いていない大人が意外と多いのだ。
 小さな頃、戸や障子を開けっ放しにしておくと「セッチン」と言われて、戒められた事がよくあった。昔のトイレ(セッチン=雪隠)は屋外にあって戸もなく開けっ放し状態であったことから、開けっ放しにしておくことをそう呼んだのではないかと思っているが、本当のところはよく分からない。しかしながら、今も昔も、「子どもの躾」言い換えれば大人のマナーの基本をどのように身に付けさせるか、親は頭を悩ませていることが分かる。
 三つの躾のうち、朝の挨拶や返事は大方の大人に身に付いているが、後片付けについては親が先走ってやってしまうためか、我が社でも「……っ放し症候群」に感染している社員が結構いる。中には相当な重症患者もいる。重症患者の場合は業務遂行にも支障を来す場合があり、どうしても身に付けてもらいたいが、年齢が行くにしたがって難しくなっていく。しかも、本人の意識が変わらない限り、子どもの頃身に付かなかった後片付けのマナーが大人になって付くケースはほとんどない。そう言った意味では、やはり小さな頃から躾ておきたいものだ。そのためには、「親が手本を示すこと」と「注意をすること」、さらには本人が片付け始めるまで忍耐強く待っている心の余裕が親には必要だ。しかも、待つことが出来るのは子どもが小さな時だけである。相手が成長すればするほど期待も大きくなり待つことは難しくなる。やはり躾は子どもの頃に限る。

【文責:知取気亭主人】

     

 

   センダン(「センダンは双葉より芳し」と言われている)

 
 

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