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国会議員も地に落ちたものだ。現職の国会議員が、こともあろうに「強制わいせつ」の疑いで現行犯逮捕されるとは。開いた口が塞がらないとはこのことだ。しかも、国会会期中に夜中の2時過ぎまで飲み歩いているなんて、国会議員として弁明の余地もない。
経歴詐称やセックススキャンダル、ヤミ献金問題、国会で飛び交う低俗なヤジなど国会議員の品位がさほど高くないのは周知の事実だが、彼を選んだ都民にとって、まさか彼の活動の場が国会ばかりでなく夜の六本木にもあろうとは思ってもみなかっただろう。
結局、国会議員を辞めざるを得なくなり辞職したわけだが、彼の選挙区(東京4区)が「一票の格差」をめぐって最高裁で争われている訴訟の対象となっているため、4月24日の衆議院統一補欠選挙が実施できない見通しだという。公職選挙法の規定では、「係争中の選挙区では補欠選挙は実施されない」と定めていて、自分たちの代表を国会に送り込むことができない状態が暫く続いてしまうことになる。選挙区住民にとっては踏んだり蹴ったりである。酒の上の失敗とはいえ、馬鹿なことをしたものである。
確かに酒は「キチガイ水」とも呼ばれ、私を始め多くの酒好きに恥をかかせ、時には今回のように取り返しのつかない失敗をさせてしまう。昔の狂歌にも
『酒のない 国へ行きたい 二日酔い また三日目には 帰りたくなる』
『酒飲みは やっこ豆腐に よく似たり 始め四角で 末がグズグズ』
と詠まれているように、酒を飲むとだらしなくなる御仁が多い。かく言う私もそうだ。
私の場合は、興に乗ると歌を歌ったり踊り出すことが多い。二人の娘と参加した花見の帰りに、歩きながら大きな声で歌っていると、『よその知らないおじさん!』といわんばかりに、遙か後ろで“知らんぷり”されたこともある。アメリカのバーで飲んだときなどは、たまたま眼と眼があったおじさんと狭いホールで生演奏に会わせ踊り始めたところ、店のオーナーに『やめろ!』と注意されてしまった。つい先日も、町会の知り合いと男同士でチークダンスを踊ってしまった。しかも、10人も入れば一杯となる居酒屋で、お互いの奥さんが見ている前でである。
他のお客さんから「やんやの喝采」を浴びることもあるのだが、どこまで飲んだら踊り始めるのか私自身が把握していないこともあって、予測不可能なところが怖い。ましてや記憶がないとなると、次の日の多くの時間は「昨夜の自分探し」に一喜一憂することになり、狂歌が身にしみる二日間を過ごす羽目になる。そして、一人自己嫌悪に陥るのだ。
私のように踊り出すことは別にして、身につまされてウンウンと頷いている仲間もきっと多いことと思う。くだんの先生のように破廉恥なことはしないが、多かれ少なかれ酒好きには失敗が付き物だ。亡くなった
河島英五が「酒と泪と男と女」の中で『……飲み潰れて寝むるまで飲んで、やがて男は静かに寝むるのでしょう』と詠っているが、なかなか静かに眠ることができないのが酒飲みの性なのだ。ただ、薄れていく記憶の中に理性がどれほど残っているかが問題となる。
深酒をするとまるでタマネギの皮をむくように、酔いしれるほどに“恥じらい”や“あると思っている知性”がなくなっていき、“理性”のブレーキも利かなくなってくる。そして、タマネギの中心にあるのが、僅かに残った理性なのか、理性の皮に隠れていた“欲望”なのかが、「笑って話せる失敗」と「犯罪」とを分けてしまう。そう言った意味では、彼の中心には日頃理性の皮に包まれていた欲望が隠れていたのだろう。その結果、議員辞職は当然のこととして、自民党に提出した離党届も受理されず、もっとも重い除名処分とされてしまった。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、我々も今一度、どんなに酩酊しても己の理性を保つ訓練をしておく必要がありそうだ。もっとも、酒を飲まなければ、そんな心配をすることもないのだが……。 |