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『生態系を守れ−2』

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   2005年10月05日

 「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、秋の彼岸(9月20日〜9月26日)を過ぎた当たりから随分と過ごしやすくなってきた。窓を開けたまま寝ていると寒いくらいだ。暫く振りで肌布団とも再開し、忘れていた安眠を取り戻しつつある。やはりジッとしていても汗が出てくる気温は、昼の活動にも夜の睡眠にも良い影響は与えない。私の感覚では、体温より10℃〜20℃低い気温が脳にも体に優しく一番過ごしやすい。勿論、湿気も低 いに越したことはない。
 それに比べると、夏は気温も湿気も高く快適というには程遠い。ましてや、そんな高温多湿の中で襟元をネクタイで締め付け上着を着て歩き回るとなれば、当然「気分は最低、体は不健康」となる。ネクタイ族の殆どは、「出来ればネクタイを外し、上着は着たくない」と思っているはずだ。したがって、政府が音頭を取って導入を働きかけた「クールビズ」は、非常にありがたい服装であった。
 今年始めたばかりだが、しっかりと市民権を得たのではないだろうか。元々の目的は地球温暖化防止対策の一つである二酸化炭素(CO2)の削減であるが、「冷房温度は28℃に」の働きかけも功を奏し、確かな効果を挙げたようだ。9月16日の電力業界の発表によれば、6月〜8月の3ヶ月間の電力10社合計で約8万トンのCO2が削減出来たとのことだ。凄いことだ。もっとも、28℃は私が感じる快適温度よりやや高いため、快適に過ごすには多少の工夫が必要となる。しかし、それも考えようによっては新たな発見に繋がって 面白い。
 いずれにしても今回の運動は、サラリーマンの多くが「気分も良く、体にも良い」と感じ、しかもCO2削減に寄与したことは間違いない。夏好きなのに暑がりな私だが、是非来年以降も続けていきたいと思っている。そして、早くも話題になっている「ウォームビズ」にも大いに期待をし、何とか地球温暖化を食い止めたいものだ。そうしないと我々の地球がエライことになりそうなのだ。

 9月29日の日本経済新聞朝刊に衝撃的なニュースが載った。独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)が欧米など八カ国と共同研究した「大気中のCO2濃度の上昇が今後も続くと、海洋の酸性化が進み生態系に大きな影響が出る可能性がある」、という内容の研究成果だ(http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0509/0929/index.html)。同機構のホームページに載っている発表タイトルは、「二酸化炭素濃度上昇がもたらす海洋酸性化による海洋の生物に迫る危険」とある。センセーショナルなタイトルだ。
 それによれば、今後効果的な地球温暖化対策をせず大気中のCO2濃度が年1%ずつ増えると仮定すると、海洋の酸性化が進み、およそ50年後(私が100歳を過ぎた頃だ)には南極海で炭酸カルシウムが溶け始める海域が現れ始め、続いて北太平洋亜寒帯域で影響が出ると予測している。これが海洋生物に大打撃を与えるという。
 植物プランクトンの円石藻や動物プランクトンの有孔虫や翼足類(オホーツク海の妖精と知られるクリオネもその一種)などは自らが作り出す炭酸カルシウムの殻に守られていて、その殻が溶けるというのだ。まさに種の存亡に関わる危機だ。海洋生物が作り出す炭酸カルシウムには2種類(アラゴナイトとカルサイト)あって、そのうち翼足類の動物性プランクトンやサンゴなどの骨格を成すアラゴナイトが溶けやすいのだそうだ。そして、「今世紀末までには南極海全域と北太平洋の一部の海域でこれらの海洋生物の殻を育てることが出来なくなるくらい 溶けやすくなる」とある。
 2100年に予測される酸性化した条件のもとで実験をしたところ、アラゴナイトで出来ている殻は僅か48時間で明らかな溶解を示したそうだ(機構のホームページには写真も載っている)。これでは種の存続は難しいだろう。

 プランクトンは、食物連鎖の最も下位にいる。プランクトンがいなくなれば、これを餌にしている生物も当然死に絶えていくことになる。つまり、プランクトンの上位にいる生物の種の存続も難しいということだ。この負の連鎖は、当然のことながら最上位にいる人間にも影響を及ぼす。しかも、この変化が生物の進化に比べて極めて短時間に起こるため、連鎖しているどの種といえども存続に向け進化・対応していくことは難しい。今が旬のサンマも22世紀には食べられなくなる可能性がある。イヤ、もっと早く来るかもしれない。
 それを予感させるデータが、9月28日、米国立雪氷データセンターと米航空宇宙局から発表された。「9月の北極海の海氷面積が観測史上最低を記録した」というものだ。「地球温暖化による影響で、この状態が続けば今世紀末にまでに夏季の北極海から氷が完全に消失する可能性があり、ホッキョクグマなどの絶滅が危惧されている」という(9月29日、YOMIURI ONLINE)。ホッキョクグマだけではない。氷上や氷の下、あるいは冷たい海水を生活の場とする生物にとっても、危機が足元まで迫ってきている状況だ。

 このように、地球温暖化によって我々の生活と直接利害関係のないところで、既に生態系崩壊の予兆が現れている。このままでは、22世紀を待つまでもなく人間の生活に深刻な影響を及ぼすことは確実だ。この状況を改善し生態系を守ることが出来るのは、皮肉なことに自ら生態系を壊しつつある人間しかいない。“壊したものを修復する”、あるいは“これ以上の悪化を食い止める”ためには、一人ひとりの「少しの我慢と努力」そして「“勿体ない”の心構え」が必要だ。
 地球温暖化は、生態系にとって「進行性ステルス癌」である。このことを各人が認識し、自らの行動を律していくことこそが、我々に課せられた重要な行動の一つであろう。 

【文責:知取気亭主人】

 椎の実 (幼少の頃のおやつ)

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