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ビックリするような、そして何ともやりきれないニュースが飛び込んできた。「フィリピンのミンダナオ島で元日本兵と見られる二人の老人が生きている」というものだ。敗戦から既に60年が経ち、1972年にグアム島で発見された横井さんや、その2年後にフィリピンのルバング島から小野田さんが帰国してはや30年以上が過ぎている。二人の発見・帰国は奇跡と言われ、小野田さんは当時「最後の日本兵」と言われていた。まさかその小野田さんから更に30余年もの月日を経て、今もって未投降兵士存在のニュースが流れてこようとは本当に驚きだ。特に、私のように戦後に生まれ、戦闘の壮絶さ・悲惨さを体験していない者にとっては驚愕すべきことだ。
もしこのニュースが本当であれば、二人とも80歳を越す高齢で、人生のほぼ4分の3を戦地で過ごしたことになる。しかも、いつも死の恐怖と戦いながらである。一日も早く兄弟や親戚の待つ日本に帰国できることを願いその後の動向に注目していたが、火が消えたように二人に関するニュースが流れなくなってきた。ニュースの信憑性やニュースソースそのものの信頼性など、未だ不明な点が多いようだ。「身代金目当てだ」というまことしやかな噂も聞こえてくる。我々としては今暫く朗報を待っていなければならないようだ。二人の親族の喜びが、ぬか喜びにならないよう願ってやまない。
戦争は本当に悲惨だ。多くの命を奪い、人生を狂わしてしまう。太平洋戦争末期の日本に見られるように、空襲による非戦闘員への攻撃や原爆による無差別殺戮など、幼い子どもも年老いた老人も女性も個人の意志に関係なく犠牲になってしまう。悲しむべきことだ。無論戦闘員としての兵隊の犠牲も数知れない。特に日本から遠く離れた太平洋の島々に送られた多くの兵隊は、僅かな武器と乏しい食料の中で投降も許されず、敵と戦うことなく亡くなっていったと聞く。「上官の命令がなければ山を下りることができない」と言った小野田さんの言葉が、胸に迫ってくる。
平和になり世界第2位の経済大国になっても、あの大戦が終わっていない人達がたくさんいるような気がしてならない。折しも今回のニュースが流された頃、二人の日本兵が見つかったとされる同じフィリピン(島は違う)で陸軍専任嘱託として戦争に参加し捕虜となった小松真一氏の「慮人日記」(ちくま学芸文庫)を丁度読んでいたところであったため、その思いがよけいに強いのかもしれない。奥田碩会長が「ぜひ読むように」とトヨタ幹部に薦めた本と帯に書かれていた山本七平「日本はなぜ敗れたか −敗因21カ条」(角川oneテーマ21)の題材となった本である。
慮人日記は、小松真一氏が日本を出発し、フィリピンに着き、密林を彷徨し、捕虜となって日本に帰国するまでの日記である。体験記ではない。驚くべきことにあの激戦の中で書かれた日記なのである。山本は、本書の巻末に収録されている「『慮人日記』のもつ意味とは」のなかで次のように述べている。少し長くなるが引用する。
「太平洋戦争については、すでに多くが語られた。公式の戦史もあれば、連隊史もある。体験記もあれば文学作品もある。しかし、ある一個人が、その戦闘の渦中にあって、見たまま、聞いたまま、体験したままを、その時点、その場所で、そのまま記した作品、いわば最も厳密な意味におけるルポルタージュは、私は今まで読んだことがない。」
まさに同感である。加えるに、冷静な目で淡々と書かれているため、暗いテーマを扱いながら陰湿な印象を与えないところも私は好きだ。
詳しい内容はあえて紹介しない。とにかくぜひ読んでいただきたい。まだ多くの日本人の中で、そして戦地となった東南アジアの島々の人々にとって、今も引きずっている終わらない戦いがあることを感じ取っていただければと思う。
【文責:知取気亭主人】 |