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8月23日は二十四節季の一つ、暑さも落ち着くと言われる「処暑」だ。昔の人の感覚ではもう暑さの峠も越えて良いはずなのに、日中はまだ連日うだるような暑さが続いている。とても暑さが落ち着いてきたとは思えない。
とは言っても、川原や土手に伸びてきたススキを見ると、秋の気配が近づきつつあるのも確かだ。家の周りでもそんな気配が感じられるようになってきた。雑草の生い茂った我が家の庭では行く夏を惜しんでか、来る秋を歓迎してか、可愛らしい虫の声が聞こえてくる。あの鳴き声は、キリギリスの仲間かな……。やはり、季節は確実に移り変わっているようだ。
読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋、実りの秋、秋には色々な形容詞がつく。それに比べると夏は可哀相だ。せいぜい「熱中症の夏」とか「猛暑の夏」と“如何に暑いか”が話題になるばかりで、秋ほど歓迎されていない。歓迎するのは長い休みを満喫できる児童や生徒、学生だけだろう。それと夏に売り上げを伸ばす会社ぐらいなもので、多くの日本人はやはり夏よりも秋を好む。
私は血圧が高めのせいかギラギラする夏の暑さが比較的好きだが、それでも32℃位までが「比較的好き」と言える限度で、それ以上になるともういけない。ただただ冷えたビールが恋しくなり、朦朧とした頭で考えることは『一刻も早く“シュッワーッ”と広がるあの喉越しのえも言われぬキレを味わいたい!』、その一心だ。お陰で(?)業務もスムースに進む。もとい、何とか進めている。発揮しなければいけない集中力も“シュッワーッ”の雑念が邪魔をしてしまい長続きしない。何とか雑念を振り払いたいが、「暑いときにはビールが一番」の呪文が頭を離れない。やはり、うだるような暑さから開放されて、過ごしやすい秋になってくれるのが一番の特効薬のようだ。
北陸では越中八尾の風の盆(9月1日〜3日)を迎える頃になるとめっきり秋らしくなり、朝晩が大変凌ぎやすくなってくる。やがてススキの穂が風に揺られるようになると益々秋の気配が深まり、夜空に浮かぶ月は冴え、暑かった頃に比べると綺麗に見えるようになる。9月も半ばを過ぎると、団子の供え物と共にススキを尾花と呼ぶ風流さが似合う雰囲気となってくる。そうなると、左党としてはビールから燗酒へと移り変わり、見事な月を肴に“一献”と洒落てみたくなる季節の到来だ。実に良い季節だ。
そんな季節の夜空に輝くお月様は、夏に比べて空気が澄んでいるせいかコントラストが明瞭で実に美しい。望月(満月)となると尚更だ。10月の下旬から翌年の3月まで天候が不順になる北陸では、俗に言われる中秋の名月(今年は9月18日)が最も美しいと思っていた。ところが先日の土曜日(8月20日)、まだ暑い熱帯夜のその夜に、それまで見たこともないような見事な月を拝むことができたのだ。雲間に広がる澄み切った深紺色を背景に輝くその夜の月は、車から降りて暫く見とれてしまうほど不思議な魅力に溢れていた。詩のひとつも詠むセンスがあれば、きっと素晴らしい恋歌を詠うことが出来ただろうに残念なことをした。
家に帰るなり家族に見せたところ、皆一様に『ワー、綺麗だ!』と感嘆の声を上げた。それほどまでに美しい冴えた月なのだ。「ウサギの餅つき」もはっきりと見える。文末に掲載した写真はその時のものだが、残念ながら「弘法ならぬ凡人は筆を選ぶ」でデジカメの性能が悪い為(?)、「ウサギの餅つき」は見えない。ハレーションも起こしていてお世辞にもうまい写真ではないが、その熱意だけでも伝えたいと思い恥を忍んで掲載した。
ところで、古来より慣れ親しんできたこの「ウサギの餅つき」が、「狸のポン太」に変わる可能性が出てきたことをご存知だろうか。「狸のポン太」は冗談だが、アメリカ航空宇宙局(NASA)の研究者たちは、月にある酸化チタンやアルミニウムなどの鉱物資源を採掘し、月面基地やロケットの部材、さらには燃料として活用することを構想しているというのだ(YOMIURI
ONLINE 2005年8月20日14時34分 読売新聞)。
NASAのこれまでの調査によると、月面には前述の鉱物資源のほかに強力磁石の材料になる希土類などを含有する鉱物が存在し、表面の砂にはエネルギー源として期待されるヘリウム3も含まれているのだそうだ。もし仮にこれらの資源が有用でしかも大量にあるとすれば、ブッシュ大統領が提案した月への有人飛行再開や火星への有人飛行を計画しているNASAにとって、月は恰好の宇宙基地としてばかりでなく露天掘り可能な巨大な採掘場と化す可能性があるのだ。
その場合、NASAの研究者が日本の子どもたちの気持ちを大切にして、「ウサギの餅つき」を残すように採掘してくれれば良いのだが、むやみやたらに採掘すると「狸のポン太」になりかねない。別に狸が嫌いなわけではない。狸と月は「月夜に腹鼓の競演をする」と童謡にも謡われているから多少なりとも縁があるわけで、場合によっては「ウサギより愛嬌があって良い」と言う意見もあるだろう。しかし、月を肴に一献傾けたい私としては、「狸のポン太」よりも月に帰ったまま姿を見せない「かぐや姫」を復活させてくれるのを強く望むのだが……。 |