ボク: |
実はね、きのう嬉しいことがあったんだ!
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君: |
ヘーッ、一体何があったんだい? |
ボク: |
きのうは6月13日だろ、丁度3年前のきのう、僕が生まれたんだって! |
君: |
それって誕生日じゃん! |
ボク: |
そう、それでやっと三つになったんだ。 |
君: |
そうなんだ、おめでとう! |
ボク: |
僕はさあ、生まれたときのことを知らないんだけど、お父さんは“茶毒蛾(チャドクガ)”にやられて体中が痒かった時だとかで、あの時のことは忘れられないんだって。 |
君: |
生まれるきっかけになったときことも、生まれた時のことも親以外知らなくて当然さ。 でも、チャドクガ? |
ボク: |
毛虫の仲間で、それにかぶれたんだって。体中に赤い斑点が出て、凄く痒かったらしいよ。 |
君: |
なんか聞いているだけで痒くなってきたよ! |
ボク: |
だけど、どうやら僕のことより自分のことだけを覚えているみたいなんだ。ちょっと寂しいな! |
君: |
現実を知れよ! 大人ってそんなもんだよ! |
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ボク: |
でも気を取り直して、生まれてから3年もたったからさ、きのう『僕って結構順調に育っただろ?』、とお父さんにそれとなく聞いてみたんだ。 |
君: |
ヘーッ、たった三歳なのに君って結構言うね! |
ボク: |
何て答えたと思う? |
君: |
分かんない! |
ボク: |
お父さんが言うには、僕を育てるのって結構面倒くさくて途中であきらめかけたこともあったらしいんだけど、時々手を抜くことを覚えたおかげで育てられたんだってさ。 |
君: |
“面倒くさい!”、“手を抜く!”なんて、それって問題発言だぜ! |
ボク: |
そうなんだ。親って結構いい加減だよね! 君もよく覚えておいたほうがいいよ! |
ボク: |
でも本当のことを言うとさ、ボクも誕生日って何でめでたいのか良く知らないんだ。 |
君: |
エーッ、ウソだろう? 誕生日ってさ、1つ歳が大きくなるからめでたいんだよ。きっと! |
君: |
だけど不思議なんだよな? 小さなときは皆喜ぶくせに、歳取るとあんまり嬉しくないみたいだよ。特に「オバサン」と呼ばれる人はそれが強いみたいだよね! |
ボク: |
エーッ、そうなんだ。でも「オバサン」のことは良く知らないけど、お父さんが嬉しそうに『きのうがお前の誕生日だ』と教えてくれたから、きっとめでたいんだよね? |
君: |
そうさ! この日は何となく他の日と違って、いつも口うるさいお母さんが少し優しくしてくれるし、細い目がいっそう細くなって「おめでとう」って言ってくれるから子供は皆大好きさ! 俺も大好きだよ! |
ボク: |
でもさ、お父さんはずるいんだ! |
君: |
なんで? |
ボク: |
僕には何もしてくれないくせに、自分だけは大好きなジュースをいつもよりたくさん飲んでいるんだから! 自分だけだぜ、ずるいや! |
君: |
ジュースだって? |
ボク: |
そうなんだ。でもいいや、大目に見てあげる。 |
ボク: |
僕をここまで育ててくれたし、第一お父さんの好きなジュースの臭い余り好きじゃないし、残ったやつを飲んでみたけどまずかったからいいんだ。 |
君: |
それってジュースじゃなくて多分お酒だよ! |
ボク: |
お酒? お酒って魔法の薬なの? だって、たくさん飲むと踊りだしたりして、お父さんがおかしくなっちゃうから、本当は体に好くないんじゃないかな? |
親父: |
そんなことないよ! 酒は昔から「百薬の長」といってお薬になるんだよ。 |
君: |
変なおっさんが出てきたけど、君のお父さん? |
ボク: |
ウン。 |
君: |
君のお父さんてアル中かい? |
親父: |
アル中なんて失礼な! 少しそのけはあるけど……。 |
ボク: |
何のことか良くわかんないけど、お父さん、おかしくなるまで飲んじゃダメだよ! |
ボク: |
最近忘れっぽくなったってこぼしているけど、ジュース飲むと、飲む前には覚えていたことも忘れちゃうし、大事なことも色んなこと忘れちゃうようだから、せめてどうやって帰ってきたか覚えているくらいで止めておいたほうがいいよ! |
親父: |
ハイ……。 |
君: |
ヘーッ、結構素直なんだ! |
親父: |
ウルサイ! |
ボク: |
それに最近、人の名前が出てこなかったりするのって激しくなっていない? この間は、“熊手”が出なくて、おじさんと苦労していたよね? |
親父: |
なんでそんなことまで知ってるんだい? |
ボク: |
“思い出せない仲間が出来た”なんて喜んでいないで、“ジュース”じゃないや、“お酒”の量と回数を控えて、頭を活性化する訓練をしたほうがいいよ! あの時のおじさんにも言ってあげたら? お父さんより若そうだけど心配だよ! |
君: |
大きな声じゃ言えないけど、君のお父さんて、記憶やばそうだね! |
ボク: |
そうなんだ、こんな子供でも心配になっちゃうよ! |
親父: |
生意気なことを言ってないで、今日からはもう数えで4歳になるんだから、「四方山話」の名前に負けないようにちゃんと精進しなさい! それから、どこの馬の骨か分からない“君”、まさか一人二役じゃないだろうが人生の先輩として忠告しておく。“ほどほどのアル中”も捨てたもんじゃないぞ! |
ボク: |
お父さん! 冗談やめてよ! 4歳の誕生日を迎えることが出来るかどうかは、お父さんの“子供を思う気持ち”と“アル中度合い”に懸かっているんだからね! ヨロシク!! |