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『常軌を逸した人々』

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2006年7月12日

 考えられないような言動を「常軌を逸した言動」という。普通の人ではやらないようなことを周りの状況などお構いなしに実行し、関係者に多大な損害や迷惑を掛けるのだが、実行した本人はその言動が世間の一般常識からはかけ離れていて異常であることに気が付いていないから始末に悪い。普通そんな言動は希にしか耳にしないものだが、いやなことに最近そんなニュースが増えてきた。

 7月5日に世界を駆け巡った「北朝鮮が早朝3時30分頃から夕方の17時20分頃にかけて、計7発のミサイルを発射した」というとんでもないニュースは、その最たるものだろう。アメリカの早期警戒衛星によって早くからミサイル発射と思われる準備行動がキャッチされ、近いうちに発射が強行される恐れがあると報道されてはいたが、まさか本当に発射するとは思ってもみなかった。しかも、7発ではなく10発だったという情報もある。
 この仰天ニュースを聞いた日本人の感想は、“いくら尋常でない国でも最後の理性はあるだろう”と思っていた人たちの「嘘だろう! 本当に発射したのか?」と、“指導者が常軌を逸した人だから”と諦めていた人たちの「ヤッパリな。彼だったら発射すると思っていたよ」の二つに分かれたのではあるまいか。私は前者のほうだが、どちらの感想を持ったにせよ、ミサイルを発射したことで韓国や日本など近隣諸国との緊張が一気に高まった。戦争状態でもない近隣諸国に断りもなく、他国の海域に向けてミサイルを発射するとは、狂気の沙汰だ。お分かりのこととは思うが、彼とは北朝鮮最高指導者の金正日総書記のことだ。

 拉致問題を始めとして、北朝鮮の傍若無人ぶりはこれまでも日本人の感情を逆なでにしてきたが、核問題も凍結されないままこんなことをすれば益々世界の中での孤立が深まっていくのは明らかなのに、どんな戦略的な意図があるというのだろうか。「アメリカを二国間協議の場に引きずり出すために、アメリカの独立記念日に合わせた」とか、「注目させるために、スペースシャトルディスカバリーの打ち上げに合わせた」などの憶測が乱れ飛んでいるが、真意は定かでない。何しろ、北朝鮮の数少ない理解国であるロシアへも事前通告なしだったというのだ。しかもミサイル着弾点は関係が悪化している日本より友好国であるロシアに近く、ウラジオストック沖合の排他的経済水域(200カイリ水域、200×1.852km=370.4km)の中、言ってみれば鼻先に打ち込まれたようなものだ。予想されたことだが、テレビで放映された地元漁協へのインタビューによれば、着弾海域では当時10隻を超える漁船が操業していたという。下手をすれば犠牲者が出ていた可能性もあるのだ。
 いくら良き理解者であったとしても、鼻先にミサイルを打ち込まれ、その上まかり間違って自国の漁船に命中して死傷者でも出ていたとしたら、ロシアとしても黙ってはいられまい。その時、北朝鮮はどう言い訳するのだろうか。拉致問題で明らかなように、相手が納得できない“とんでもない理論”でも堂々と臆面も無く展開する様を見ていると、例え相手がロシアでも自己弁護の論を張るのは想像に難くない。やはり「常軌を逸した指導者」というのが、今回のミサイル問題で世界の人々が彼に抱いた偽らざる思いではないだろうか。

 彼のような「常軌を逸した人」はまさか日本にいないのだろうと思っていたが、それがいたのだ。国際関係を左右する立場でもなければ、国際的に関心を集めている人でもない。極々普通の市井の人だ。
 ミサイルが発射された日と同じ7月5日の朝、滋賀県高島市で、全身にアザやヤケドの跡がある2歳の女児が病院に運ばれ死亡した。両親による幼児虐待だ。自宅で殴る蹴るの暴行を加え死亡させたとして、24歳の父親と25歳の母親が、傷害致死容疑で逮捕された。許されるものではないが、ここまでであればこれまでにも度々あった話だ。ところが、テレビニュースで報道された「熱湯を頭に掛けるなどしていた」という惨い虐待の様子と、近所に住む人のインタビューを聞いて、妻と一緒に思わず眉をひそめてしまった。
 年端も行かない2歳の女児が『あちゅい! あちゅい!』と泣き叫んでいたというではないか。その残忍な行為と幼子の泣き叫ぶ様が頭をよぎり、この文章を書いていても思わず耳を塞ぎたくなってしまう。想像しただけでも身の毛がよだつ。熱湯を頭に掛けるなんて、赤の他人にさえ余程の憎しみがなければ到底できるものではない。これはもう拷問だ。それを何も抵抗できない幼く愛しい我が子にするとは、とても親とは思えない。どう考えてみても、常軌を逸している。
 親が子を殺し、子が親を殺す事件は後を絶たないが、それらの事件の多くには、殺人を犯してしまうまでの多少なりとも理解できる背景があるものだ。なおかつ、衝動的に犯してしまう場合が圧倒的に多いのではないだろうか。しかしそれらの事件に比べると、耐えられない苦痛を長時間に亘り与え死に至らしめる彼らのやり方は、極めて陰惨で、どんな言い訳も理解できるものではない。そして、決して許されるものではない。

 常軌を逸したこれらの人達は、国家の指導者と市井の人達、立場もその影響力も大きく異なるが、根本的には受け入れがたい共通点がある。それは「自分のことしか考えていない」、「目的を遂げるためには手段を選ばない」ということだ。彼らに教えてやりたいものだ。他人を思いやることで、心の安寧と幸せが訪れることを。

【文責:知取気亭主人】

     


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