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『熱い甲子園がやって来た』

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2006年7月19

  ワールドカップが終わった。6月9日に始まった1ヶ月間に及ぶ長く熱い戦いは、4回目となるイタリアの優勝で幕を閉じた。決勝戦で最優秀選手に輝いたフランスのジダン選手が頭突きで相手を倒し一発退場となる波乱もあったが、準々決勝、準決勝、決勝と終盤に進むにつれ白熱した好ゲームが続き、世界のサッカーファンは一流チームの戦いを存分に楽しんだことだろう。
 ところが、芝生の上での熱戦は終わりを告げたものの、ジダン退場の原因を巡って、場外の取材・報道合戦がまだ熱を帯びている。ヨーロッパのメディアでは、「倒されたイタリアのマテラッツィ選手が一体何を言ったのか」とか、「ジダンが何を言ったのか」とか、読唇術まで使って真相究明に躍起になっている。フランスでのインタビューに答えてジダンは、『家族を侮辱する暴言を吐いたからだ』と重い口を開いたが、それ以上のことを明らかにしないため、色々な憶測が飛んでいる。とうとう、FIFAがこの件について調査を開始するという。ことによっては、マテラッツィ選手への懲罰やジダン選手の最優秀選手賞剥奪もありうるというが、穿った見方をすればなにやら熱戦の余韻を楽しんでいるように見えないこともない。

 一方、私の興味はというと、ジダン騒動に興味がないわけではないが、早すぎる日本の敗退でワールドカップはとうに終わり、今はもう夏の甲子園、そう「第88回全国高等学校野球選手権大会」にそろそろ熱が入り始めている。6月中旬から代表校を決める地区大会が始まり、7月16日には全国のトップを切って沖縄県の代表が決まった。石垣島にある日本最南端の高校だという八重山商工だ。夏の大会は初出場だが、春に続いての代表となった 。
 この沖縄県に続いて、これから続々と各地区の代表が決まってゆき、7月末には49代表が出揃い、8月6日に待ちに待った甲子園球場での全国大会開会式を迎えることになる。そして、順調に行けば8月20日に優勝チームが決まる。毎年のことながら、全国一を決めるまでの期間は地区大会を含めると2ヶ月間以上にも及び、ワールドカップを凌ぐ熱く長い戦いが繰り広げられる。
 高校野球はプロ野球ほどの華麗さやスピードはないものの、発展途上の選手達のひたむきさはプロ選手以上で、そこから生まれるハプニングプレイや予想外の展開の面白さも手伝って、今年もまた数多くの感動のドラマを楽しむことが出来そうだ。高校野球ファンにとっては、何とも幸せな季節の到来だ。

 しかし、野球を商売としている人達、もっと端的に言えばファン離れが激しい日本のプロ野球関係者にとっては、ファンを魅了し続けるアメリカ大リーグにもまして、プロスポーツでもないのに国民的行事として定着している「全国高等学校野球選手権大会」は羨望の的なのではないだろうか。私の独断と偏見に満ちた判断によれば、高校野球のファンはプロ野球のファンよりも圧倒的に多いはずだ(多分?)。何故かと言えば、ワールドカップと同じように県や地区を代表するチーム同士の戦いだけに、フランチャイズが関東や関西に集中しているプロ野球よりも「このチームが“オラが地元”の代表だ」との意識が高く、野球をよく知らない人達でも地元の高校を応援する、そんなファンが多いのだ。つまり、郷土愛を掻き立てられるのだ。私もそうだが、地方を出て都会で働いている人でも、春・夏の甲子園大会の時ばかりは出身校や出身県の高校を応援する。それによって琴線を揺さぶられ、自らのアイデンティティーを確認することが出来るからだ。
 今時の日本人は冷めているとよく言われるけれど、以外や以外、世界の他の国々の人達と同じように、あるいはそれ以上に帰属意識が強い。Jリーグにはそんな戦略を取り入れて成功したチームが多い。そして、毎年繰り返されるこの高校野球の熱狂ぶりを見ていると、国会で議論された「愛国心」を条文に謳うまでもなく、日本人は十分愛国心を持っていることが良くわかる。ことさら明文化しなくても、それは当然のこととしてみな持っているものなのだ。

 一方で、そういった郷土愛とは別に、一所懸命プレイをする高校生の姿がたまらなく好きで、「プロ野球にはそんなに興味はないが高校野球は大好きで、毎年熱心に見ている」という高校野球ファンも結構多いと聞く。私もそんな一人だ。
 炎天下でプレイをする球児は勿論のこと、応援団や応援席の高校生が見せる“一途さ”や“初々しさ”、そして何より勝利したときや負けたときの“素直な感情表現”が私は大好きだ。勿論、地元を代表する高校が活躍してくれればそれに越したことはないが、そうでなくても、彼らの羨ましいほどの“若さ”と溢れんばかりの“躍動感”は、見ているものを惹きつけて離さない。別に吸血鬼の血を引いているわけでもないが、見ているだけで失ったモノを取り戻せるようで、なんとも嬉しくなってくる。
 7月も中旬になり、いよいよ地区大会の結果が本格的に新聞のスポーツ欄を埋めるようになってきた。サア! 今年も、錆び付き始めた「喜びや悔しさ、悲しさを感じるセンサー」の錆を削ぎ落とし、感度を元に戻してくれる試合が多いことに期待しよう。

【文責:知取気亭主人】

     


トンビ

 

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