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『四人組、奮闘す』

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2006年8月9日

 今年の5月、会社の有志と秘かにある集まりを結成した。“秘かな集まり”といっても、「アルバイトで今流行のホストをやろう」とか、「金沢版ゴスペラーズで音楽界にデビューしよう」という“とんでもない企み”があるわけではない。確かに無骨な男ばかり4人の集まりだが、見た目とは裏腹に、その心根は乙女のように清純で、清く美しい志を持ったグループだ……と思う。……、多分そうだ。オッと、少しばかり少女趣味で面はゆい単語を並べてしまったが、「周りを明るく楽しくしたい」という至極当たり前の思いを持っているだけで、「秘かに…」といっても「他人にばれると大変なことになるから極秘にことを進めなければならない」といった類のものでもなんでもない。
 まあ、まどろっこしい説明はこれくらいにして、どんな集まりか説明をしよう。正式名は付けていないが、四方山話用に敢えて命名するとすれば「ひまわり咲かせ隊」だ。つまり、何のことはない、「会社にひまわりの花を咲かせようぜ!」という趣旨で結成した集まりだ。事の発端は、昨年の夏に母から貰った沢山のひまわりの種にある。

 昨年の夏、母の庭に咲いていたひまわりから収穫した種を、「家の駐車場と会社の庭に是非咲かせよう」と思い貰ってきた。ところが、貰ってきてハタと気が付いた。観賞はしたことはあるのだが育てたことがないのだ。これがそもそもの発端だ。  
 ひまわり畑第1候補の家の駐車場は、雑草が生い茂っている空き地であるから誰が見ている訳でもなく、ただ種を蒔いておいて後は種の生命力に期待する育て方が可能だ。人によってはこれを「育てる」とは言わずに「ズボラ」と言う様だが、貰ってくるときは「ひまわりなどはどこで育てるにしろこの“ズボラ方式”で十分育つもの」と思っていた。ところが、第2候補である会社の庭では、この私の得意な育て方がある事情でできないことが分かったのだ。
 第1に、調べてみて初めて知ったことだが、「ひまわりは水をたっぷりと欲しがる」ということである。第2には、「地面に直接植えるのではなくプランタに植える為、毎日の水遣りが欠かせない」という制約がある。第3に「私が出張すると大切な水遣りができない」ということ。第4に、実はこれが私の中では最も大きくて仲間には秘密にしてあるのだが、ズボラな性格に絶対の自信を持っているだけに、「私一人では、とても花を咲かせ種を収穫するまで育てられない」という確証にも似た不安があったのだ。
 色々と悩んだ末、これらの課題を一挙に解決する妙案を思いついた。仲間を集め、グループで育てる方法だ。幸いなことに会社には、「 1級造園施工管理技士」というプロの資格を持った仲間が2人もいることに気が付いた。早速、彼らに声を掛け、賛同して集まったのが私を含めた4人と言うわけだ。個人情報保護法がうるさいので、ここでは仮に、ひまわり1号、2号、3号、4号と呼ぶことにしよう。因みに人生経験が少ない順番に番号を付けてみた。若い順とも言う。

 さて、隊は結成された。ところが、家の片付けをしているときにどこかにやってしまったのか、肝心の種が見当たらない。どこを探してもないのだ。そうこうしているうちに、種を蒔く時期が迫ってきた。隊の仲間に、『沢山の花を咲かせて、皆の心にも花を咲かそうぜ!』と、見得を切った以上何とかしなければいけない。結局、母の種はあきらめて、売られていた2種類のひまわりの種を買ってきた。
 初めてのことをやるとなんでも新しい発見があるもので、このときひまわりには2種類も あることを知った。そして、ひまわりの名前が付いた住宅会社から送られた種を見て、もっと種類があることを知った。1月ほど経って母から貰った種も見つかるのだが、このときは、都合3種類の種を植えることとなった。プランタは、当然3つである。
 5月8日(月曜日)、ひまわり咲かせ隊隊員総出で、記念すべき種蒔きだ。後で示す写真集の左上の写真に3つ並んだプランタが見えるが、右側のプランタに1号が一番小さな種を、真ん中に経験豊富な3号と4号の共同作業によって大輪と書かれた中位の大きさの種を、そして左のプランタに送られてきた一番大きな種を2号が蒔いた。それから4人の地道な共同作業が始まった。
 1級造園施工管理技士の資格を持つ3号が手先の器用さを発揮して、水遣り当番の三角錐を作ってくれたおかげで、3つとも枯れることもなく無事成長していった。5月が過ぎ、梅雨に入り、やがて1号が手塩にかけて育てたひまわりが最初に可憐な花をつけ、次いで2号の一番大きな種のひまわりが咲いた。ところが、2号の花が咲いた頃になっても、真ん中のひまわりは一向に蕾らしきものが見えてこない。丈だけはグングン伸びるのだが、花が咲かない。隊員仲間では「へそ曲がりが植えたからだ」との噂が立ち、本人たちも半ば『ヤッパリそうかな?』と思い始めた頃……。
 自然は正直だ。そう、へそは曲がっていなかったのだ。梅雨が明け、8月の太陽がギラギラと照りつけ気温が一気に上昇したと同時に、見事な大輪の花を咲かせてくれた。そのときの感激を、1号が種蒔きから欠かさず付けている「ひまわり観察記」から引用してみる。

<8月3日>
 種を植えて、88日目の朝です。
 ついに咲いちゃいました。
 まだまだ3分咲きって感じだけどね。
 梅雨明けしたもようって発表のあとは、すごい暑さだね。
 ちょっと動けばもう汗。
 デブにはたまらん。
 実際、そこまでデブじゃないかもしれんけど……

 ひとつの悲しいことがあったなら、次はひとつの明るいことが必ずあるよ。
 そういう風にできているんだから

 デブかどうかは本人の自己申告に任せるとして、ついに最後のプランタも咲いたのだ。しかも大輪の花だ。これで、来年に向けて3種類全ての種を収穫できる。そして、皆と約束をした「ひまわりの種でバーベキュー」もどうやら守れそうだ。しかし、言ってはみたものの、果たして種だけで腹一杯になるほど収穫できるか……、甚だ不安だ。     

【文責:知取気亭主人】

     


右も左も既に咲いている            
 


右(1号)のひまわり
 

左(2号)のひまわり
 

真ん中(3号+4号)のひまわり

子供を背負ったひまわり
 

日当たりが悪いと色白になる

蛇のうろこではない
 

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