いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
 
 

『神様の悪戯?』

戻る

2006年8月23日

  8月6日から始まった「第88回全国高校野球選手権大会」が16日間に亘る熱い戦いを終え、全国4,112校の頂点がついに決まった。一回戦から連日白熱した好ゲームを見せ、参加49チーム全てが大会を大いに盛り上げてくれていたが、集大成となる決勝戦がまた素晴らしい試合だった。しかも、引き分け再試合となったため、21日の月曜日に休みの取れた人は羨ましいことに2試合も見ごたえのある決勝戦を堪能できたことになる。
  私は、残念なことに両試合ともテレビ観戦ができなかった。そのため夜のダイジェストで結果を知ったのだが、両校エースの投げ合いで2試合とも緊迫した球史に残る見事な戦いとなった。そして、日本中を熱くさせた20日、21日の二日間に亘る激闘を制したのは、3度目の決勝進出で「三度目の正直」の格言を見事為し遂げた早稲田実業だ。

 決勝に駒を進めたのは、ニュースのキャッチフレーズ風に言えば、“史上2校目となる夏の大会3連覇を目指した駒大苫小牧高校”と“今大会出場チームの中で27回の最多出場回数を誇り、初優勝を狙う早稲田実業高校”だ。第一戦目となった20日の試合は、1点を争う好ゲームとなり、延長15回まで互いに譲らず1−1のまま引き分け再試合となった。決勝戦の引き分け再試合は、“太田幸司投手を擁し、始めて深紅の大優勝旗が白河の関を越えるのではないかと期待された青森の三沢高校”と“愛媛県代表の松山商業高校”とが戦った第51回大会(1969年)以来、37年ぶりのことだ。
 「37年も前だったか」と驚いているが、この決勝戦は良く覚えている。大学1年の夏休みに高校時代の友人たちと伊豆にキャンプに行き、帰りの船の中でラジオにかじりついて熱戦に聞き入っていたのを思い出す。三沢高校の太田と松山商業井上の投げ合いは、2試合分となる延長18回でも決着が付かず、0−0で引き分けとなった。今でも記憶に残る名勝負の一つだ。そして今大会の決勝戦もそれに勝るとも劣らぬ緊迫した素晴らしい試合であった。高校野球史上に新たな1ページを加えたと言っても過言ではないだろう。優勝した早稲田実業には勿論、惜しくも3連覇を逃した駒大苫小牧高校にも大きな拍手を送りたい。そして、感動を有難う!

 ところで、今年の大会を総じて言うと、酷暑の影響なのか投手受難の大会であった。完封試合が少なく、点の取り合いが印象に残っている。そして、とにかくホームランの数が多い。これまでの記録47本(第66回大会、1984年、優勝は取手二高)を大幅に上回る60本が飛び出している。ニュース映像で見る飛距離もプロ野球選手並みだ。どうやらピッチングマシンの導入や筋力トレーニングによる筋力アップなど、打者のトレーニング方法が進化・充実してきているのが大きいようだ。それに比べると投手のトレーニング方法が以前から然程進化していないのが、打高投低となっている原因と見られている。その一方で、この夏の暑さで体力作りの基本となる走りこみが不足しているとみる専門家もいる。確かに、これだけ暑ければいくら若くて体力のある選手でも、走り込みは控えたほうがよさそうだ。
 ただ点の取り合いが目立つということは、やっている監督や選手にすれば有難くもない傾向だが、観客としたらたまらなく面白い。今大会の決勝戦のように息詰まる投手戦も見応えはあるが、点の取り合いも試合が二転三転して観ているものを退屈させない。今大会にはそんな試合が目に付いた。
 特に、私の一押しは、帝京高校と智弁和歌山の準々決勝だ。この試合は大会最多記録となる7本塁打が飛び出す乱戦となったが、特に9回の攻防は、悪戯好きの神様がいるのではないかと思うような信じられない展開を見せてくれた。知ってのとおり8回を終わって4−8と帝京高校が負けていた。そして、9回の表もツーアウト、あとアウトカウント1つとなったところで、誰もが 智弁和歌山の勝利を確信したはずだ。ところが神様は、諦めずに一生懸命プレイする選手を見捨てなかった。連打に次ぐ連打で、なんと一挙に8点を入れ12−8と逆に4点のリードを奪ってしまった。
 「こうなると流れは完全に帝京だ」と誰しもが思ったはずだが、このとき銀屋根の上で悪戯好きの神様が再び“ニヤッ”と微笑んだに違いない。傾きかけていた帝京高校への流れを完全に止め、逆に智弁和歌山に向けて傾かせ、劇的なドラマを作ってくれた。両校の選手諸君には申し訳ないが、本当にそんな感じがするほど劇的であった。
 9回の裏の攻撃、智弁和歌山はスリーランホームランなどで一挙に4点を入れ、信じられないことに12−12の同点に追いついてしまった。なおも一死満塁。そして幕切れは、乱打戦から一転して押し出しだ。
  こんなドラマを、幕切れを、誰が予想しただろうか。9回の攻防だけで、両チーム合わせて13点も入ったのだ。どなたかの言葉を借りれば、こんなメイクドラマは、やはり悪戯好きの神様にしかできない。だから高校野球は 堪えられないのだ。     

【文責:知取気亭主人】

     

ソバの花

 

戻る

 

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.