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『前線』

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2006年11月1

 四方山話を書くようになって、早いもので丸3年が過ぎた。勝手気ままに書いてはいるものの、1週間に1回の定期便を続けていると、何を書こうか迷うことが良くある。題材が見つからないのだ。自分では結構色んな分野にアンテナを張り巡らしているつもりなのだが、感度が悪いせいか、あるいは加齢によって感度が衰えてきたせいか、度々締切日の直前まで題材が決まらないで生みの苦しみを味わっている。余り大きな声では言えないが、ぎりぎりになって決まり、駆け込みセーフといった状況が正直なところだ。
 ところが、最近は違う。巷を賑わしている話題が多く、どれを選んだらいいのか迷うほどだ。「卒業に必要な科目の履修漏れ高校が相次いでいる問題」や「奈良市で発覚した市職員の長期欠勤問題」、あるいは「愛媛県宇和島で起きた生体移植をめぐる臓器売買事件」、さらには「ある中日ファンから見たプロ野球日本一に日本ハムが輝いた事件?」など、話題に事欠かない。話題には事欠かないが、日本ハムを除けば暗いニュースばかりでげんなりしているのも事実だ。ということで、今挙げた話題はニュースでも良く取り上げられているメジャーなものばかりだから止めにして、別の話題を扱うことにする。やはり生来のへそ曲がりは如何ともし難いものだ。

 この季節になるとテレビの天気予報に必ず登場するコーナーがある。日本の山野を黄色や赤で美しく彩る「紅葉前線」だ。「紅葉前線」は10月の中ごろから始まり、緑一辺倒だった野山を錦絵のように染めながら徐々に日本列島を南下し、列島各地で大勢の人の目を楽しませてくれる。春の「桜の開花前線」とともに日本人には大変馴染みが深く、古くから歌にも詠まれるほど愛されている。これから12月上旬頃まで、見頃の時期は異なるものの、各地の紅葉の名所は今しばらくモミジ狩りで大賑いとなる。
 このように、同じ「前線」という文字を使っていても、度々豪雨災害をもたらすために「来なくてもいい」と思われている梅雨前線や秋雨前線と違い、「紅葉前線」はその訪れを多くの日本人が毎年楽しみにしている。「日本人の愛すべき前線」と言ってもいい。
 ところが、驚いたことにお隣の国、韓国にも「韓国版の愛すべき前線」があるという。先日偶然見ていたテレビでやっていたのだが、丁度今頃(11月)からテレビや新聞に登場するらしい。テレビで見せていたのは、ソウル付近から朝鮮半島を舌の形で南下してくる前線の模様だ。日本で言うところの「紅葉前線」でもないし、梅雨前線のように災害をもたらすものでもない。なんと「キムチ前線」だという。
 気温5℃ぐらいがキムチ作りに適した気候で、それが丁度11月、立冬の頃ソウル周辺から始まり、冬至の頃朝鮮半島南端の釜山周辺に至るという。さすがキムチの国、韓国である。国民に『皆さん、そろそろキムチの漬け頃ですよ』と知らせるわけだ。この季節の頃に仕込むキムチ作りのことを「キムジャン」というそうだが、お国柄とはいえこのキムジャンのために、キムジャンボーナスが支給されたり、キムチ休暇まであったりするというから、「キムチ前線」があっても然程不思議ではない。
 翻って、「日本でも食料に絡む前線の名前があるだろうか」と考えてみたがトンと聞いたことがない。一番ありそうな「ウメボシ前線」もないし、「味噌前線」も聞いたことがない。その外、私が一番興味をそそられる「新酒の仕込み前線」も聞こえてこない。色々理由は有るのだろうが、韓国に「キムチ前線」がまだ残っていることを思うと、日本文化の希薄さを感ぜざるを得ない。桜の開花と紅葉以外で日本に残されているのは、せいぜい「生え際前線」ぐらいなものなのかもしれない。
 そんないい加減なことを考えていたら、環境省がもっと色々な前線について、既にインターネットによる調査をやっていることを知った。環境省が主催する「インターネット自然研究所」 (http://www.sizenken.biodic.go.jp/)が行なっている「四季のいきもの前線調査」と呼ばれるもので、以下に示したテーマについて、インターネットを通じて広く国民から情報提供をしてもらい、全国の四季の動向を調べようというものだ。

 ○ 桜の開花前線
 ○ ウグイス初鳴き前線
 ○ つつじの開花前線
 ○ 田植え前線
 ○ 熱帯魚回遊前線
 ○ 虫の鳴き声前線
 ○ 稲刈り前線
 ○ もみじの紅葉前線
 ○ 初雪前線

 さすが日本の環境省だ。私が「ないのが不思議だ」と思っていた前線は、新酒の仕込みを除いてほとんど網羅されている。しかし、残念なことに余り知られていないのか投稿が極めて少ない。そこで、四方山話の読者にお願いしたい。是非、この「四季のいきもの前線調査」に参加して欲しい。そして「キムチ前線」に負けないよう、日本の文化をしっかりと残していこうではないか。因みに、「熱帯魚の回遊前線」から「初雪前線」までのテーマは、まだ投稿することができる。     

【文責:知取気亭主人】

     

柿とピラカンサ

 

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