松坂大輔選手の周りが賑やかだ。彼が所属する西武球団がポスティングシステムによる「大リーグ移籍」を認めたからだ。自分達の懐に入ってくるわけではないのに、『落札金額と契約金額を合わせると7500万ドル(約87億7500万円)に達する可能性がある』とか『年俸は1000万ドル前後になるのではないか』とか、彼に関係するニュースでストーブリーグは大いに盛り上がっている。
松坂ファンや西武ファンならずとも大いに気になるところで、今後出揃う大リーグ各球団の提示額に野球ファンの多くの目が注がれている。何しろ予想されているのは、我々庶民が見たこともなければ触ったこともない途方もない金額だ。
因みにサラリーマンの生涯所得と比べてみると、その桁の違いが分かろうというものだ。例えば、20歳から60歳まで、40年間働き続けたとしよう。40年間の平均年収が500万円と仮定すると、定年までに稼ぐ給料は2億円だ。平均年収が倍の1000万円だとしても、4億円にしかならない。ワーキングプアと呼ばれる「仕事をしても貧困から抜け出せない人達」にいたっては、平均年収を250万円だと仮定すると、40年間でたった1億円だ。実際には、月の給料が15万円に満たない人達が沢山いるというから、生涯賃金が1億円未満の人も多いだろうし、このまま格差が広がれば益々増えてくるだろう。
一方、松坂選手に予想されている年俸の1000万ドルは、円に直すとおよそ11億7千万円だ。たった一年で、一般庶民が40年間もかけて稼いだ金額の2〜10人分以上を手にすることになる。やはり、一芸に秀でた人は違うものだ。
「松坂と同じように」とまでは言わないまでも、なんとか生きている間に億という単位の金を拝んで見たいものだ。しかも、既に体力の峠を越え、下り坂も終盤に差し掛かった身での高望みだ。宝くじの運試し以外には、ここは子供に頑張ってもらうしかない。子供が大きくなってしまった我が家の場合はもう遅いが、今小さなお子さんを持ちの方はまだ可能性がある。今のうちから牛乳を沢山飲ませて体を丈夫に、足腰を鍛え、プロ野球選手にすることが、老後の幸せに繋がるというものだ。手遅れになる前に始めたほうがよい。手本は「巨人の星」だ。さすれば「住宅ローン返済に気を病むことがない夢のような老後」が待っているかもしれない。
ところで、あなたの子供をプロ野球選手にすると確かに老後の幸せを手にする可能性が高くなるが、運動能力に秀でていることが必要条件だ。しかし、『じゃうちの子はダメだ!』と諦める必要はない。運動が苦手な子供でも「選手ではない別の職業」で億を超す高収入を得られる方法があるのだ。プロ野球選手の代理人になることだ。代理人について調べてみると、結構高額の手数料を手に入れることが出来る。選手でなくても、ひょっとしたらあなたの幸せを約束してくれるかもしれないのだ。
「日本プロ野球選手会・選手代理人報酬ガイドライン」(2000年11月5日)によれば、「アメリカ・メジャーリーグの選手代理人の報酬は年俸の5%までとされている」とある。仮に限度の5%で決着出来たとすると、松坂がもらうと予想される1000万ドルであれば、50万ドル、およそ5850万円を手にすることが出来る。日本の一流企業でもこれだけ高額の報酬をもらっている社長は少ないだろう。羨ましい限りだ。しかも、腕利きの代理人になると、今回松坂選手の代理人をしているスコット・ボラス氏のように何人もの有名高額選手を抱えていて、100万ドル以上の報酬を得る代理人も少なくないという。因みにボラス氏は、ヤンキースのA・ロドリゲスの代理人も務めていて彼の推定年俸は大リーグ球界最高で2570万ドル(約30億円)、その5%だとすると、なっ、なんと128.5万ドル(約1億5000万円)にもなる。松坂選手の分と合わせるとすごい額だ。しかも、まだ他に数人の代理人をしているというから、ため息が出てしまう。
このように、代理人も腕利きとなると結構いい稼ぎをしているのだ。ただし、日本ではまだ代理人制度そのものがまだ始まったばかりであるため、活躍の場はやはり大リーグということになる。そのためには英語が何不自由なく話せることは勿論、契約内容を的確に把握し選手に正確に伝えるだけの専門知識が必要だ(弁護士資格は必要ないそうだ)。そういった意味では、プロ野球選手になるのと違って体ではなく頭のトレーニングが必要となる。
でもよく考えてみると、プロ野球選手にさせるにしろ、代理人になるにしろ、一流と呼ばれるためには人一倍の努力が必要だ。その努力がないと、本人ばかりでなく親が夢見る「老後の左団扇の生活」は夢のまた夢に終わってしまう。やはり、ここは子供にがんばってもらうしかない。子供が成人してしまった家庭では、孫に夢を託すことになりそうだ。孫がダメだったら……。そうなったら……、潔く諦めるのも人生だ!
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