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『暖冬』

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2007年3月7日

 3月5日、金沢市の隣町白山市(旧松任市)で、今年初の桜の花を見た。まだチラホラだが、膨らんだつぼみに混じってあの薄いピンク色の花が咲いていた。例年だと金沢辺りではまだ雪が残っている時季なのに、もう桜の開花とはビックリだ。平年より一月も早い。前日の3月4日は西日本各地で気温が上昇し、熊本市では最高気温が26.1℃と何と3月上旬で夏日を記録した。金沢でも17.6℃と4月中旬頃の気温となり、5日は更にそれを上回りとうとう22℃を超え5月上旬の暖かさとなった。この陽気に誘われて桜も咲き出したのだろうが、まだ3月になったばかりだ。いくら暖冬とはいえ、ちょっとばかり早すぎる。

 ここ2、3日のポカポカ陽気に代表されるように、今年の冬は異常尽くしだ。そしてこの傾向は世界規模だと報じられている。日本でも同じようなことが報道されていたがロシアで熊の冬眠が遅れたり、1月にニューヨークで桜が開花したりと、暖冬が動植物に大きな影響を与えている(2007年1月12日、日本経済新聞朝刊)。
 一方、日本の暖冬は皆さん経験されたとおりだ。3月1日に発表された気象庁の観測結果は、予想通り記録的なものとなった。昨年12月〜2月の平均気温は、全国的に平年より約1.5℃も高かったという。36.5℃の平熱の人が38℃の高熱を出しているようなものだ。そして、全国153の気象官署のうち、秋田、仙台、東京、名古屋、大阪など63地点でこれまでの平均気温の最高値を更新した。また、北陸地方の降雪量が平年の9%となるなど日本海側は記録的な少雪となり、青森、秋田など20地点で降雪量の、新潟や金沢など19地点で最深積雪の最小値を更新した(http://www.jma.go.jp/jma/press/0703/01c/tenko061202.html)。  
 また、金沢地方気象台によると、金沢市内の2月末までの降雪は11センチで、6日から8日に掛けて降雪が予報されているが、余程のことがない限りこれまで最も少なかった1989年(平成元年)の65センチを大幅に下回ることは確実だ。お年寄りや車を使うものにとっては有り難いことだが、皮肉なことに降雪量の余りの少なさに、雪を売り物にする伝統行事がピンチとなっている。
 金沢には、江戸時代の行事を再現した冬の風物詩がある。「氷室」と呼ばれる小屋に貯蔵された踏み固めた雪を、旧暦の6月1日(新暦の7月1日頃)に切り出して将軍家に献上していた行事を復活させたものだ。1月の最終日曜日に貯蔵し、毎年6月30日に切り出すのだが、今年は雪がない。この行事を復活させて22年経つが初めてのことだという。
 ところが、そんな風物詩やうらめし顔のスキー場を後目に、ゴルフ場やレジャー施設はニンマリのようだ。驚くなかれ青森でさえ既にゴルフ場がオープンしている。しかし、泣く者がいる一方で笑う者がいるように、暖冬は私たちに何をもたらしてくれるのだろうか?

 雪国に住む者として『取り敢えず良かったね』と言えるのは、県や市町村の財政を圧迫する「除雪費」が大幅に軽減できたことだろう。金沢市を例に取ると、大雪だった昨年の除雪費が4億3千万円、今年はこれまでのところ僅か20分の1の2,100万円だという(2007年3月1日、朝日新聞朝刊)。金沢に限らず、台所事情の厳しい地方の自治体にとっては、これまでのところ有り難い暖冬だったに違いない。
 しかし、スキー場は言わずもがなだが、同じように雪や厳しい冬の寒さを恵としている人達にとっても最悪のシーズンになる可能性がある。例えば、山に降った雪を水源としている稲作地帯では早くも水不足を心配する声が聞こえ、金沢などこれまで旱魃の被害に遭っていないところでも夏に向け不安が広がっている。山の積雪量も極端に少ないのだそうだ。また、結氷が売り物の滝や湖も売り物ができないで散々だ。氷上からのワカサギ釣りで賑わう榛名湖は強度不足で穴釣りができなかったというし、「御神渡り(おみわたり)」で有名な諏訪湖は全面結氷にも至らなかったと報道されていた。
 その他、冬の寒さや雪を恵みにしていない人達にも影響が出始めている。暖冬の影響で早くもスギ花粉が飛び始め、敏感な人は既に花粉症に悩み始めているのだ。

 ところが、困惑する人達をよそに、時ならぬ豊漁に沸き立っているところもある。石川県の能登地方ではカタクチイワシ漁が平年を大きく上回り、特に12月は平年の約45倍の漁獲量だったという(2007年3月1日、讀賣新聞 YOMIURI ONLINE)。これだけ聞くと喜ばしいことだが、素直に喜んでよいものやら、この先何が起こるか少々不安になってくる。
 しかも、量が増えているのはカタクチイワシだけではない。イノシシやシカ、あるいはエゾシカなどが増え、害獣として駆除される数が急増しているという。これは今年の暖冬の影響ばかりでなく、地球温暖化で冬が越せる数が増えているためだ。
 このため、これらの野生動物の肉を使う「ジビエ(gibier:仏語、野生鳥獣肉)料理」が注目を集めているそうだ(2007年3月1日、日経産業新聞朝刊)。そういえば、先日東京で入った居酒屋に「エゾシカのタタキ」がメニューに載っていた。
 山の仕事が多かったこともありこれまでにも、クマ、イノシシ、シカ、キジ、カモ、スズメなど結構多くの野生動物を食べてきたが、殆どが狩猟の地元で食べたものだ。まさか、こういった鳥獣肉が東京にまで出回っているとは驚きだ。エゾシカの肉を北海道の名物にしようという動きがあると聞くが、もう既に始まっているのだろう。ジビエ料理が流通するということは、食通にとっても、獣害を受けている地方の人達にとっても朗報に違いない。
 しかし、こういった鳥獣がむやみに増えるのも困ったものだが、かと言って害獣駆除の名の下に乱獲されるのも心配だ。『ジャアどうすればいいのだ』と聞かれても妙案が浮かぶものではないが、ただ一つ言えることは、やはり寒いときにはそれなりに寒くあるべきだ。

【文責:知取気亭主人】

     

散歩コースに咲いていたモモ

 

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