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『戸籍』

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2007年3月14日

 今年に入り「戸籍」に関する話題が新聞紙面を飾ることが多くなった。特に、戸籍がない子供のニュースが目を引く。「戸籍がない」などと聞くと、「多くの子供たちが戸籍を抹消された中国残留孤児問題」がスグ脳裏に浮かぶ。それ以外では、終戦後外地からの音信が途絶え長いこと連絡が取れなかった出征兵士などが「死亡」とされ、「除籍」扱いになっていた人たちの話題を大分前に聞いたぐらいだが、それでも除籍にはしっかりと名前が載っている。しかし最近は離婚や不法滞在など法律に絡み、出生届を出したくても出せないで、結果戸籍がない状態になっている子供が増えてきている。今回はそんな戸籍を俎板(まないた)に載せてみたい。

 先月、「捕まえてみたら、犯人には戸籍がなかった」という仰天ニュースが報じられていた。埼玉県鳩ヶ谷市で20歳の男性を窃盗容疑で逮捕したところ、江戸時代でもあるまいに、何とこの男性の戸籍がないまま小中学校にも通っていなかったことが分かった。出生届が出されていなかったためで、鳩ヶ谷市は慌てて戸籍を取らせ、教育の機会を与えようと動き始めているという(2007年2月5日、朝日新聞朝刊)。一家に借金があったことから、「債権者に所在が分かるのを恐れて出生届を出さなかった」というが、親の都合で義務教育の機会や選挙権などの公民権を奪ってしまっていたとは、あまりにも身勝手過ぎる。そんな理不尽なことを親がするとは前代未聞の話だ。ただ、「男性の希望を聞き、教員OBから授業を受けることも検討する」という市の対応は、このニュースをほのぼのとしたものにしてくれていて、好感が持てる。

 また、仰天ニュースといえば、本当は男性なのに女性として誤って戸籍に記載されていたことが判明した“ワイドショウが飛びつくようなビックリ”もあった。男性の姉がパスポート申請用に戸籍謄本を取り寄せて、初めて自分の弟が「長女」と記載されていたことに気が付いたという。こちらも男性の年齢は20歳だ(2007年2月15日、読売新聞 YOMIURI ONLINE)。父親が提出した出生届と照合したところ、受理した山形市のミスだと判明したというが、本当にうっかりミスだ。
 東京都在住というから、都に提出した住民票と山形の戸籍に齟齬(そご)があったということになる。しかし、良く20年間も気が付かなかったものだ。入学手続きで必要な学校もあるようだが、20年間男性の戸籍抄本や謄本は必要なかったとみえる。ところで、姉は何と記載されていたのだろうか。興味のあるところだ。

 上記二つのケースは、親の意図的な無届けや行政側のうっかりミスによって「無戸籍」の状態になったものだが、次のケースは法律の壁に阻まれてそうせざるを得なくなり、苦渋の選択で戸籍がない状態を受け入れている人たちの話だ。ニュースに度々登場しているので詳しい説明は要らないだろう。「離婚から300日以内に生まれた子供の父親は前夫と見なす」という民法772条が、障害となっている。何せこの772条は明治時代(明治23年)に制定されたもので、可成り早産の子供でも助かる確率が高くなった医学の進歩も、婚姻・離婚に対する考え方の変化も考慮されていない。
 その根底には、民法733条「再婚禁止期間」の第1項に見られるように、明治時代の男尊女卑の思想が司法界には未だに残っているのではないかと思われる。その条文は、「女は、前婚の解消又は取消の日から6箇月を経過したのちでなければ、再婚をすることが出来ない」となっている。いかにも前時代的な表現と内容だ。山の神が怖くて肩を持つわけではないが、「男は……」の条文がないところを見ると、「明治の男たちが自分たちに都合良くつくった」と結論づけられても仕方がない内容だ。
 とまれ、国民を守ってくれるはずの法律が障害となって、戸籍のない子供が増えているのは事実だ。中でも、夫から家庭内暴力を受けて別れた女性が離婚後300日内に出産した場合など、誰が考えても前の夫の子供にしたくはないのは道理で、殆ど出生届を出さない。勿論、産まれてきた子供に責任はないが、公民としての権利を行使できなきうなってしまう。しかし、今の法律のままでは、出生届を出さないカップルが増えてくることはあっても、減ることはないだろう。
 「300日を何日にしたらよいか」という難しい課題もあるだろうが、産まれてきた子供全てが安心して本当の親の戸籍に入籍出来るよう、一日も早く民法が改定されることを望んで止まない。

 最後に「中国残留孤児の戸籍」について少しだけ触れておく。終戦から14年後の1959年(昭和34年)、日本政府は外地からの未帰還者の家族に対する補償を目的とする「戦時死亡宣告」制度を設け、消息が不明なものを「死亡」として取り扱った。このため、中国残留孤児は死亡扱いとなり「除籍」となってしまったのだ。問題は、死亡宣告を出したときに残留孤児たちの調査を十分に行ってきたかということだ。孤児たちは、「日本政府は中国に沢山の残留孤児がいたことを承知していた」と主張している。私自身は真相を知らない。しかし、戦争という荒波に翻弄された子供たちが老人となった今、「幸せか」と問いかければ、「ハイ」と答える人はごく僅かだと思う。
 戸籍がない子供たちの話題に60年前の子供たちの姿を重ねてみると、その過酷な運命に胸が痛くなる。           

【文責:知取気亭主人】

     

トビに戸籍は無いだろうな

 

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