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『心の揺らぎ』

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2007年3月21日

 前々週(第193話)に「今冬は異常な程の暖冬だ」と書いた途端、その内容が神様の神経を逆なでしたのか、掲載した当日から真冬に逆戻りしてしまった。その後金沢では雪こそ大して降らないものの、真冬並みの冷え込みとなっている。この寒さは全国的なもので3月16日の朝には、「東京都心でこれまでで最も遅い“初雪”を観測した」と、今冬を象徴するようなニュースが報じられていた。車を運転しながら、『今頃初雪?』と思わず自問自答してしまった。今日(3月18日)も冷え込み、金沢では時折雪が舞い、冷たい風が吹いた。やはり自然現象を正確に予測するのは難しい。
 ついこの間まではこのまま暖かい春が来ると誰もが信じていた。ところが春が来るどころか、プログラムの不具合があったにせよ、楽しみにしていた開花予想を二転三転させてしまうのだから自然の力は凄い。といっても人間にとっては大きく辛いこんな寒の戻りも、自然にとってはホンの小さな揺らぎ現象に過ぎないのだろう。

 そんな神秘的な自然現象に比べれば取るに足らないことで気恥ずかしいが、あることで私の小さな心も揺らいでいる。自分自身で『こうだ』と決めればケリがついてしまうことではあるけれど、どうしたものかと悩んでいるのだ。他愛もないことなのでこっそり言うと、「テレビを買い替えるかどうか」が悩みの種となっている。
 我が家のテレビは、12年前に買ったものだ。数年前から調子が悪くなり、ビデオデッキを介して映像信号を受信しないとクッキリと映らなくなっている。一度修理に出したのだが、戻ってきて直に同じ症状が出るようになった。
 電化製品の寿命は10年程度だと聞いたこともあるけれど、時を測ったように調子が悪くなった。そんなこともあって、『そろそろ替え時かな』と思っている。しかも2011年7月には、知っての通り現行方式の放送が終了となり、全てが地上デジタル放送(地デジ)になってしまう。我が家のテレビは地デジ未対応であるから、2011年までには対応機種に買い替えるか、チューナーを買い足して現行テレビを使うか、どちらかの対応が必要となる。『で、どっちだ?』と問われれば、矢張り買い替えに気持ちは動く。

 そうなると俄然買い替え候補に躍り出るのが、毎日のように新聞に挟まれてくるチラシ広告で他を押しのけて主役となっている感のある薄型テレビだ。家電量販店を覗くと、大画面の液晶テレビやプラズマテレビが、迫力ある綺麗な画像を映し出しており、思わず見入ってしまう。その鮮明さは我が家の“ぽってりとした厚型テレビ”とは大違いだ。
 そんな最新の商品をジッと見ていると、『買い替えたいな』と思い始めるのだが、すぐに『イヤイヤダメだ』と両手で×(バツ)をするもう一人の私が現れる。今の薄型テレビの価格が、『これ位だったらテレビに払ってもいいな』と思っている金額を遥かに上回っているのだ。要するに高すぎるのだ。
 私がテレビを見る時間は、平均すると1日で1時間程度だろう。すると、たったそれだけの時間を満足させるのに30万も40万も払えない。しかも買うのであれば、より大画面が欲しいと思うのは人情だ。展示されているテレビを見ながら「24(トゥエンティーフォー)」のDVDを見ている自分を想像すると、山廃仕込の純米酒をチビリチビリやりながら50インチの大画面を楽しんでいる姿が鮮明に浮かんでしまう。
 ところが、鮮明に浮かぶことは浮かぶのだが、現実のものにするには極めて難しい。そんな大きなものを設置できるスペースがないのだ。大画面からある程度離れて楽しめるだけの広い部屋もない。となると、もう少し小さなテレビということになるのだが、すると今度は『まだ高すぎる』という思いが足枷(あしかせ)になってしまう。
 『来年の北京オリンピックが過ぎたら安くなるだろう』と淡い期待を持っているし、『2011年になったら今の半分位になるだろう』と取らぬ狸の皮算用をしているのだ。皮算用が当たってくれることを願うばかりだが、どうなることやら……。

 もう一つ買い替えに二の足を踏ませているのが、まだ使えるのにゴミとして廃棄されてしまうことに対する「勿体ない」の気持ちだ。テレビメーカなどで組織する「電子情報技術産業協会」(JEITA)の発表によれば(3月6日)、「地デジへの移行に伴って廃棄されるテレビが最大で6400万台を超える」という。凄い。こんな凄い量でも、家電リサイクル法に従って処理されれば、然程深刻な問題は生じない。ところが、人間は欲深いもので、「出すものは1円でも惜しむ」といった人が結構いて、そんな人達が法を破ってしまう。
 家電リサイクル法では、メーカーが廃棄テレビ再利用の義務を負い、その費用は消費者が負担することになっている。ところが嘆かわしいことに、購入価格に比べればほんの僅かな金額にも拘らず、その僅かな負担がイヤで不法投棄をする人が跡を絶たない。最近も、「高速道路のサービスエリアやパーキングに、家庭のゴミに混じって電化製品も不法投棄されている」とニュースで報じられていた。こんなことでは「美しい国」の実現は程遠い。先立つものの問題もあるが、私ならそこまでして買い替えたいとは思わない。
 そう考えると、使える間は買い替えを差し控えるのが、矢張り順当のようだ。ここは×(バツ)を出したもう一人の自分の感性を尊重して、しばらくは“太目の厚型テレビ”で我慢することにしよう。            

【文責:知取気亭主人】

     

卯辰山からの眺望 (金沢)

 

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