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『とても丸くはなれないな!』

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2007年4月4日

 「歳を取ると丸くなる」と言われている。何歳から丸くなり始めるのか、見た目にも分かりやすい体型は別にして、性格のこととなると首を傾げるばかりだ。「果たして本当に丸くなるのか」と、高齢者の犯罪を耳にすると多少疑問も湧いてくるが、一般的にはそうらしい。また、幕末から明治に掛けて活躍した勝海舟も、自伝「氷川清話」(講談社学術文庫、江藤淳・松浦玲偏)の中で「五十で善人、六十で菩薩」と達観している。
 善人や菩薩の域は到底無理にしても、私もそろそろ腹だけではなく性格も丸くなる年頃になったのではないかと思っているのだが、世の中の出来事に関心を持っていると、丸くなるどころか角張ったまま歳を重ねなければいけない。信じがたい事件や悲惨な事故が頻発していたり、政治家や公務員あるいは報道機関などの倫理観の欠如したニュースが再三再四耳目を刺激したりしていて、腹ばかりが立ち丸くなる暇がないのだ。最近も3月25日に発生した「能登半島地震」に絡み、無性に腹が立つことがあった。地震発生から4日後の3月29日に放送されたニュース番組が原因だ。

 遅めの夕食をとりながら、古館伊知郎がキャスターを努める「報道ステーション」を見ていた。最初に能登半島地震関連のニュースが流されるとばかり思っていたので、『今日の被災地の様子はどうだったろうか』と倒壊した住宅や避難している被災者のことを心配しながら画面を注視していた。ところがどっこい、最初のニュースは千葉県市川市のマンションで英国人女性が遺体で見つかった事件についてだ。しかも最も多くの時間を費やしていたと思われる。
 いくら東京から遠く離れた過疎地域の出来事とはいえ、地震発生からまだ4日しか経っていない広域災害の報道を、イヤそれを百歩譲ったとしても、国民全体に影響のある政治や経済、あるいは国際関連のニュースを差し置いて真っ先に伝えるべきニュースだったのか、甚だ疑問だ。
 確かに「ベランダにおかれた浴槽で死体が見つかった怪奇性、その上美人の外国人女性」という週刊誌が飛びつきそうなニュースであることは間違いない。しかも、容疑者が逃亡中だというから尚更だ。容疑者の顔写真を公開し一日も早く逮捕することがテレビの役割として重要であることは、私も重々承知している。しかしだからと言って、人が殺された事実と容疑者に関する報道以外に、視聴者の興味をそそる情報をこれでもかこれでもかと流す時間があるのなら、もっと流すべきニュースがあるはずだ。これでは到底ニュース番組とは言えない。私の中では失格だ。

 阪神淡路大震災や新潟県中越地震に比べれば、今回の地震は確かに人的被害が少ない。しかしながら、3月31日現在、未だ1,000人を超す人たちが避難所生活を余儀なくされているのだ。千葉県の事件と比べれば、どちらの事件がより多くの人たちに災難をもたらし、影響を与えているかは誰が考えても明白だ。しかも、東海地震や東南海・南海地震、さらには首都圏直下型地震など巨大地震の危険性が高まっているときにだ。

 更に言えば、今回の能登半島地震は、これまで大きな地震が比較的少なく、しかも地震を引き起こす可能性があるとされる活断層の空白地域で発生していて、これまでの能登地域の人たちもそうだったように「我々の土地は地震が少ないから安全だ」と誤解している多くの日本人に、「日本のどこでも地震が起こり被害を受ける可能性がある」という最終警鐘を鳴らした貴重な地震だと私は考えている。
 そう考えると、今は電波を通じ地震に対する備えを啓蒙する絶好のチャンスなのだ。なのに、テレビという報道機関には「視聴者の命や財産を守るために報道は何をすべきか」などという崇高な考え方は全くないらしい。興味本位の番組作りがニュース番組まで浸透してしまっている。全くもって嘆かわしい限りだ。
 国民の生活や安全に密着したニュース、例えば今回のような広域災害を始めとして、政治や経済など重要なニュースは他にも沢山ある。にもかかわらず、新たな話題に乏しくなると、そのニュースを使って何かを伝えようとする努力をしないで、話題性のある次のニュースに飛びついてしまう。こうして興味本位で編集されたニュース番組を我々は見せられることになり、ついには政治や国家に無関心な国民を作り上げることになる。その結果、「一億総白痴化」の国家となってしまうのだ。そして何より、「自分だけは大丈夫」との考えが広く浸透して逼迫する地震に対する備えもされないまま時が過ぎ、ある時悲惨な現実に直面して途方に暮れることになる。

 こんなことを続けてはいけない。せめて、こういった地震災害が発生したら、発生した次の日ぐらいから10分ほどの時間を割いて、個人で出来る地震対策のノウハウを放送すべきだ。そして少なくとも1年間は続け、徹底的に啓蒙すべきだ。それがニュース番組の使命だとは言い過ぎだろうか。

【文責:知取気亭主人】

     

こんな状況であっても遠く離れた人たちからは忘れ去られていく

 

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