5月4日、震災の被災地輪島に行ってきた。被災地応援を兼ねての観光客か、県外ナンバーの車が比較的多い。目抜き通りを歩く観光客の姿も目に付く。ありがたいことだ。観光が主な産業である能登半島にとって、沢山の観光客に来てもらえることが何よりの復興支援だと思っている。被災地以外にお住まいの皆さんにこの場を借りてお願いしたい。是非能登に来て観光という形で復興支援をして頂きたい。『来まし、見まし、食べまっし、能登は頑張っていますよ!』。
輪島までは、金沢から車で2時間ほどの旅程だ。車窓から見える風景は、所々に震災の爪あとが残っているが、家族連れで賑わう能登海浜道路沿いの砂浜や新緑に覆われた野山など、失いかけた日本の美しい自然をたっぷりと満喫できる。そんな風景に合わせるかの様に、行き帰りの車のラジオから懐かしい歌が聞こえてきた。
次の日に迫ったこどもの日に因んだのか、小学生の頃に良く耳にした「童謡や文部省唱歌」の特集をやっていたのだ。NHKの「日本列島・童謡唱歌のある風景」と題した番組、「生中継・歌い継ぎたいあの歌この曲」だ。
童謡も唱歌も今ではほとんど聞かれなくなってしまったが、子供の頃に良く口ずさんだり耳にしたりした世代にとっては、メロディーを聞くだけで何となくホッとすると同時に、今よりも生活のリズムがのんびりとしていた子供時代にタイムスリップさせてくれる「魔法の歌」でもある。特に私が育った田舎では、物も無かった代わりに都会と比べるとゆっくりと時計が進んでいたせいか、親の仕事が忙しいときを除けば元気に遊んでいれば何も言われなかった。そんな頃が走馬灯のように甦ってくるのだ。
健康でさえあれば親も安心していた時代、子どもにとっても古き良き時代だったと言っていいだろう。そんな時代に口ずさんでいた歌を聴いていると、メロディーも歌詞も数十年前の日本の原風景を思い出させるものが多い。そして、意外と記憶に残っている。お陰で、今でもカーラジオから流れてくる曲に合わせて思わず口ずさんでしまう。中には残念ながらよる年波には勝てず歌詞を思い出せない曲もあるが、ラジオから流れてきたメロディーはすべて覚えていた。「門前の小僧習わぬ経を読む」なのか、「雀百まで踊り忘れず」の例えなのか、どちらにしても40年以上の前の曲を覚えているとは我ながら大したものだ。と、ささやかな自己満足をしていると、「そんなことは大したことではない。老化の症状として、古い記憶だけが残り、新しい情報は記憶されにくくなってきただけだ」などという外野の声も聞こえきそうだ。
私の記憶力談義は冗談として、親しみやすい歌詞とメロディーであることが、記憶に残っている理由の一つなのだろう。もう一つ、大きな理由がある。「親も子供も一緒に歌える」という点だ。それが子供の情操教育にも大いに役立っていた筈だ。そんな童謡や唱歌が最近の小学校の本から消えつつあるという。加えて、残念なことにテレビやラジオから滅多に聞かれなくなってしまった。
ところが、そう思っているのは私ばかりではなかったようで、お堅いイメージの文化庁も「歌が持つ力」に着目し、素敵な取り組みを行なっている。河合隼雄文化庁長官の発案で文化庁が公募し、今年の1月14日に発表した「親子で歌いつごう 日本の歌100選」だ。「歌を通じて家族のきずなを確かめるきっかけに」が主旨だそうだが、家族のきずなが希薄になってきた現代社会において、家族が一緒に楽しむ、しかも老いも若きも一緒に歌うことができれば確かにきずなは深まるに違いない。この上は、公募と発表だけに留まらず、色々な機会に歌や演奏が放送されることを期待している。
さて、その「日本の歌100選」だが、心に残る名曲があまりに多かったため、選考委員も100曲に絞りきれず、結局選ばれたのは101曲になってしまったという。その中には、「いい日旅立ち」や「上を向いて歩こう」、「高校三年生」、さらには「世界に一つだけの花」など昭和から平成に掛けてのヒット曲も何曲か選ばれているが、童謡・唱歌が圧倒的に多い。
我が家の子供が小さかった頃よく歌っていた「犬のおまわりさん」、「海」、「おうま」、「かもめの水兵さん」、「背くらべ」などなど、懐かしい思い出が詰まった歌ばかりだ。ただ、その中に私が「心の歌」と決めている曲が入っていないのが少しばかり残念だ。
20年ほど前までの私は現場に出ていることが多く、たまにしか子供と会えないこともあって、一緒に入る風呂が何よりの楽しみだった。その時、必ずと言っていいほど歌った曲がある。「お腹の大きな王子様、白いお洋服が破れそうだヨ〜ッ……」と歌いだす小椋桂の曲だ。今でも時々口ずさむが、「お腹の……」と歌いだすだけで当時のチビたちの顔が甦ってくる。矢張り、私にとっての「心の歌」であり、何時までも記憶に残しておきたい歌だ。誰にでもそんな大切な思い出の歌があるのではないだろうか。
あなたにとっての「心の歌」は何だろう。既に紹介したものを除く残りの「日本の歌100選」を最後に紹介しておく。さて、皆さんの「心の歌」は選ばれているだろうか?
「仰げば尊し」「赤い靴」「赤とんぼ」「朝はどこから」「あの町この町」「あめふり」「雨降りお月さん」「あめふりくまのこ」「いつでも夢を」「うれしいひなまつり」「江戸子守唄」「大きな栗の木の下で」「大きな古時計」「おかあさん」「お正月」「おはなしゆびさん」「朧月夜」「思い出のアルバム」「おもちゃのチャチャチャ」
「かあさんの歌」「風」「肩たたき」「からたちの花」「川の流れのように」「汽車」「汽車ポッポ」「今日の日はさようなら」「靴が鳴る」「こいのぼり」「荒城の月」「秋桜」「この道」「こんにちは赤ちゃん」
「さくら貝の歌」「さくらさくら」「サッちゃん」「里の秋」「幸せなら手をたたこう」「叱られて」「四季の歌」「時代」「しゃぼん玉」「ずいずいずっころばし」「スキー」「ぞうさん」「早春賦」
「たきび」「ちいさい秋みつけた」「茶摘」「チューリップ」「月の砂漠」「翼をください」「手のひらを太陽に」「通りゃんせ」「どこかで春が」「ドレミの歌」「どんぐりころころ」「とんぼのめがね」
「ないしょ話」「涙そうそう」「夏の思い出」「夏は来ぬ」「七つの子」
「花(作曲:喜納昌吉)」「花(作曲:滝廉太郎)」「花の街」「埴生の宿」「浜千鳥」「浜辺の歌」「春が来た」「春の小川」「ふじの山」「冬景色」「冬の星座」「故郷」「蛍の光」
「牧場の朝」「見上げてごらん夜の星を」「みかんの花咲く丘」「虫のこえ」「むすんでひらいて」「村祭」「めだかの学校」「もみじ」
「椰子の実」「夕日」「夕やけこやけ」「雪」「揺籃のうた」「旅愁」「リンゴの唄」「われは海の子」
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