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『♪蛙の歌が聞こえてこない…♪』

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2007年6月20日

 既に梅雨入りしていた沖縄・九州・四国に加え、14日、中国〜関東地方に梅雨入り宣言が出された。例年に比べると6〜8日遅いそうだ。「ラニーニャ現象」の傾向が強まって空梅雨の予想が出されているが、水不足の度に話題に上る四国の水がめ「早明浦ダム」の貯水率が早くも取り沙汰されていて、他県のことながら気になるところだ。香川県観音寺市にある豊稔池の勇壮な樋門開き「ゆる抜き」も、下流にある別のため池や水田の水不足で、例年より1ヶ月以上も早くなったという(2006年6月14日、朝日新聞朝刊)。このまま少雨が続けば、水不足の懸念は四国に限った事ではなくなる。本格的な水不足にならないためにも、是非梅雨らしい梅雨になってもらいたいと願っている。
 ところが自然とはつれないもので、こちらの期待どおりの天候にはなかなかなってくれない。丁度梅雨入り宣言が出された14日から16日に掛けて大阪と東京に出張したが、初日の14日に大阪で小降りの雨にあっただけで、15、16日の東京はまるで梅雨明けかと勘違いするような夏空だ。気温はぐいぐいと上がり、日向を歩けば日差しが暑い。気温だけで言えばもう夏だ。16日朝の週間天気予報を聞いていても、とても梅雨入りとは思えないような天候が続きそうだ。気象庁には申し訳ないが、「梅雨入り宣言撤回」が出てきそうな予感がしてならない。

 水不足や稲作などの事を考えなければ空梅雨でもかまわないのだが、日本の自然や風土あるいは食文化には梅雨がどうしても必要だ。湿気が“ベトッ”と肌にまとわり付くような梅雨の天候は、私も好きではないが、我々の主食である米にとっても、鮎を始めとする川魚にとっても、雨が似合いの蛙にとっても、その生態系を維持する為には必要欠くべからざる季節となっている。したがって、この季節にこれだけ雨が少ないと、そんな生態系も心配の種となる。早く蛙の合唱を聞きたいと思っているが、登場はまだまだ先になりそうだ。
 しかも、東京や大阪などのコンクリートジャングルでは、蛙の声を楽しむ空間も時間的な余裕さえもなさそうだ。それに比べると、故郷納税制度大歓迎の田んぼが広がる田舎では、本格的な梅雨が来ればイヤというほど聞く事が出来る。擬音語として正確に表現できているかは甚だ不安だが、木の上で“ケロケロ”と可愛らしい声で鳴くアマガエルや、水田や溜池などで「ここは俺の場所だ」と言わんばかりに“ボウボウ”と腹に響く野太い声で叫んでいるウシガエル、“ゲロゲロ”と田んぼ一面で大合唱を繰り返すトノサマガエルなど、梅雨時のスターは個性派揃いだ。山の清流で聞いたコオロギに似たカジカ蛙の美しい鳴き声も懐かしい。
 その蛙も、水路のコンクリート化や農薬、酸性雨などの影響で、我々団塊の世代の子供時代に比べると数は激減した。私が育った田舎は周りが自然ばかりだったこともあって、色々な種類の蛙が至る所にいて、格好の遊び道具にもなっていた。解剖の検体としては勿論、足を裂いてザリガニ釣りの餌にしたり、穴を掘って蛙を閉じ込め、この穴に2B弾と呼んでいた爆竹に似た火薬を爆発させたりと、都会のお母さん達が聞いたら眉をひそめるようなことをして遊んでいた。惨い遊びのように聞こえるが、昭和30年代初頭の田舎では、極極一般的なものだった。

 今の子供達、特に都会の子供達からすると『テレビゲームもなくて可哀想に』と思うかもしれないが、今ではやろうとしても出来ないそんな遊びが出来た事は、今の子供たちよりもずっと幸せだったに違いない。しかも、人間の都合など考えてくれない自然相手の遊びは、人間が作り出したおもちゃよりもずっと想像力を育んでくれる。何しろ毎日同じ遊びをしていても、全く同じ状況などありえないのだから。ましてや動物や植物相手だと尚更だ。
 ところが、そんな想像力を育んでくれる自然相手の遊び、蛙相手の遊びが将来出来なくなるかもしれない緊急事態が発生している。第186話「カエルの危機」で紹介したツボカビが野生の蛙から見つかったのだ。食用蛙とも呼ばれるウシガエル4匹に見つかった。幸いにして発症していない様だが、致死率が高いだけに、専門家の間では蛙を始めとする両生類の絶滅を危惧する声が上がっている。
 カビ自身は人体の体温程度に暖めてやると死んでしまうそうだが、蛙も同時に弱ってしまう。何しろ蛙を始めとする両生類は変温動物で、高温にはからっきし弱いのだ。その上、皮膚呼吸している為、皮膚の病変や損傷は即命取りになる。そのため、蛙に限らずサンショウウオや赤腹と呼ばれるイモリなどの日本固有種が、いなくなってしまう危険性があるのだ。
 元々日本にはなかったツボカビは、ペットとして輸入された蛙についてきたと考えられている。そして、発症して死んだり弱ったりした蛙が捨てられ、そこから野生種に感染したのだろう。野生の蛙にとったら迷惑な話だ。
 蛙から話は逸れるが、これに似た話が今増えていて、ペットとして輸入された動物の世話ができなくなったからといって簡単に捨ててしまい、人騒がせな騒動を惹き起こす身勝手なペット愛好家が多い。捨てるなどもっての外で、ペットを飼っている人達は最後まで責任を取るべきだ。取れないのなら飼うべきではない。「自分たちの趣味は守られるべきだ」と主張して外来種のブラックバスなどを放流する連中も含め、何人といえども生態系を崩す権利はない。ツボカビの被害も同じだ。
 子供の頃に「♪蛙の歌が聞こえてくるよ〜♪」と歌った童謡の歌詞を、「♪蛙の歌が聞こえてこない……♪」としてはいけない。その為にも、ペット愛好者の節度ある行動を願うばかりだ。

【文責:知取気亭主人】


ヤマブキ

 

 

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